少子高齢化による人手不足、AIやロボットなどの技術革新という時代の大きな節目の中で、労働組合の総本山、連合の真価が問われている。10月の定期大会で、連合の舵取り役に就任した相原康伸・新事務局長に、極意を、ズバリ聞いた(11月30日連合会館、編集部)。


-抱負から伺いたい。


相原氏  重責を頂戴した。組織は大きく、働いている人の働き場も多岐にわたる。(自分は)働いている人の姿の一部しか見ていないと自覚するところから始めたい。公務部門では、もっと光があたってよい働き方があるだろう。民間でも、私が知らない苦労がたくさんあると自覚し、そこから丁寧な合意形成がはかれるようにし、ひとりひとりを大事にする運動を心がけていきたい。対話を重視していきたい。


-2020年に1000万人の組織を目指すというが、それに向けてどんなことをしていくか。


相原氏  30年前に労働戦線を統一した連合は、今、改めて、どういう連合を目指すか造詣を深めていかなければならない時期。また、2年後に30周年という大きな節目を迎える。(山に例えれば)駆け上がり方、歩みの速さを揃えながら、一体感をもって上がっていく。


 プロセスを大事にして、できるかぎり多くの人たちとの会話量を増やしたい。その上で、より多くの仲間との対話を進め、経営者の理解も深め、連合への理解が広がれば、一番良いことだ。よいプロセスがあれば、よい結果がついてくる。秘策はない。決意を固めて、みんなで最大限の努力をしていく。


      

-この間の連合の運動をどう評価するか。


相原氏  連合の存在意義が世の中から薄まるということは、働く人の存在感が世の中で薄まっている証左と受け止めるべきとすると、その理由を産業構造上の問題と整理しないほうがよい。構造上の問題を見据えて、私たちがどういう運動をしてきたのかに振り向ける方が今後にとっては糧になる。往々にして、(人を増やすという)組織拡大に力点がかかるが、(他方で)組合がある企業労使と、組合がない企業との違いをわかってもらうことが必要だ。組合がある意味を知ってもらい、そういう企業労使の姿を目指してもらえるようにしたい。そんな理解者を増やしていかない限り、組織の拡大につながっていかない。代表選手としての連合の発言や発信や行動が世の中の人から共感が得られるようにしていく努力をもっとしていかないといけない。


-政策実現に力点を置く視点からみれば、政党との関係はどう対応していくか。


相原氏  数多の人にとって、連合のいっていることは理がある、与党からでも野党からでも、理があると持っていけるかどうか。その実力をずっと試されている。選挙が終わったならば、政権政党がどこになろうと、行政機関になるのだから、私たちの思いを正確に届けていくのが大事だ。政権を構成した以降は、政府は与野党関係なく聞き入れる態度が必要ではないか。議会制民主主義の基本中の基本だ。21世紀の日本の合意形成の在り方を、もっと、研ぎ澄ます上でも、与野党超えて、合意形成の在り方をもう一、二段高めていかなければいけない。それが政府に対する信頼になる。


―政治介入とも思われることが相次いでいるが、どう考えるか。


相原氏  労使自治が原則だ。交渉協議を通じて、賃上げが不十分で消費にインパクトを与えることができず、労使が困ることになっても、賃上げしすぎて企業が左前になって、労使が困ったとしても、交渉協議のプロセスと結果の全てに対して、労使が責任を持つということだ。それが職場を強め、働く人の先行きも確かなものにする。その労使の交渉協議の結果が広がっていくのが望ましい。政府が音頭をとるのは賃上げの数字ではなく、賃金引き上げの結果がより活きる経済や社会環境を、政府が整えるべきだ。だから、継続が大事だ。競争力強化のために賃金を抑制することが短期的に経済活動にプラスになったとしても、中長期の日本をよい方に導くとは思えないという人たちの合意がここ数年ある。政府が旗を振った効果は小さくないかもしれないが、中小企業労組が大手企業労組の要求基準を上回ってもよいという社会的合意が根づいてきたことが最大の成果であり、中小企業、非正規労働者の賃上げにつながっていっている。要求の入り口でも出口でも意識が変わってきているのは、大変な構造転換だ。絶対に止めてはいけない。


-官邸との関係はどうか。


   

相原氏  政労会見などもあるが、政府は社会対話の窓口になってほしい。社会対話が根づく社会はものすごく大事だ。企業労使を超えて、労組のないところで働いている人も社会対話はできる。ILOの100周年が、連合30周年と同じ、2019年にやってくる。労働の総結集と社会対話の成果ここにありを見せていく。2019年に向けて、ビジョンをつくろうとしている。働くことを軸とする安心社会の実現をそこに込めたい。そういう大事な時にきた。


<取材を終えて>


 事務局長の信条は、とことん対話―ということか。学生時代は大学のヨット部で、2人乗りの「ディンギー」を操った。これは、海と風との対話だったが、これからは、連合だけにとどまらず、働く者6000万人の超巨大船の舵をとり、社会という荒海の中で、セーリングから航海に深化させなければならない。そのお手並みに大いに注目したい(植木 隆司)。