2018年総会

財政の維持が最重要課題

 日本労働ペンクラブの2018年度定時総会が1月9日、束京内幸町の日本記者クラブで開かれた。物故会員3氏への黙とうで冥福を祈った後、 稲葉康生代表があいさつ。「2017年度は私の印象ではかなり活発に活動した年だったと思う。2018年度もよい企 画を立て、みんなで勉強していきたい」と述べ、併せて昨年度の具体的な活動について順次、報告を行った。

 次いで、冨田修事務局次長より決算報告があり、中川隆生会計監事が監査報告を行った。収入・支出ともに適正に運営処理されているとして拍手で承認されたが、中川氏はとくに補足して、「但し労ペン賞費や国際活動費が使われなかったという偶々の要素によって赤字を免れたに過ぎず、他方で会費未納者14名による収入減という状況がある。健全財政を維持するためにも、未納者への督促とともに、新規加入者の獲得に皆さんの協力をお願いしたい」と訴えた。森田定和関西支部代表からは関西支部(12月末で29名)の活動状況の報告を受けた。

 続いて18年度の活動計画が麻生英明事務局長から、予算案が冨田次長からそれぞれ提案があり、いずれも拍手で承認された。

 説明の中で麻生氏は「中身の濃い活動を維持、継続させていきたい。そのためにも会員皆さんの積極的な提案を歓迎する。類似の団体との交流も検討したい」と抱負を述べた。また会員からは、もっと事務所の有効活用を図るべきだとの意見も出された。

 最後に、日本労働ペンクラブ賞の審査状況について久谷與四郎選考委員長より、著作2点、雑誌論文、非公刊の報告書の計4点の応募があったが、選考基準に照らし慎重な審査をおこなった結果、今回は該当作なしとしたとの報告があった。2年続いて該当作なしとなったことから「会員の奮起を期待する」との指摘もあった。(編集部)

新春懇談会

盛大に開催された新年会
来賓スピーチに注目集まる


 予定通りの午後零時半から、始まった懇親会には、 厚労省の宮野厚労審議官、連合の神津会長、全労連の小田川議長、全労協の金沢議長らの来賓はじめ約150人が参加した。最初に、稲葉代表が『縮む日本』をキーワードにして、「先んじて少子高齢化社会を迎えた日本は各国から注目されている。モデルとしての姿をどこまでつくれるかがポイントだ」と指摘。さらに、昨年の技能五輪で日本の成績がついに9位にまで落ちたことを紹介し、「経済が縮み、ものづくりもうまくいかない」日本は、さらに、AI化などによる激変期を迎える。この厳しく難しい時代をどう切り抜けていくか――と、暗雲漂う、縮んでいく日本の現状への間題を提起した。

 宮野厚労審議官は、この提起に応じた形で、「長時間労働の是正、同一労働同一賃金の実現は、人口減少社会で縮んでいかないよう、経済の活力を維持していくもの」と働き方改革の目的を説明し、通常国会で成立させること、生産性革命、人づくり革命に関しても施策を詰める作業中とした。

 続いて立った神津・連合会長は連合の知名度を上げること、「底上げ春闘」をさらに他の労働者に広めていく決意を示し、「働き方改革法案には要らない部分がある。 野党と力を合わせ、修正しながら、長時間労働是正、同一労働同一賃金は早期に目指していく」とした。小井土有治元代表が乾杯の音頭をとった後、懇談に移った。

 この後、全労連の小田川議長が働き方改革に触れ、反対の立場を明確化、「(この法律で)19世紀の労働者像に戻っていくのではないか」「労働者の貧困化は急速に進んでいる」と危機感を露わにした。また、全労協の金沢議長は、来年の天皇の退位、即位に関連、「(これに)合わせて、王政復古の大号令がかけられていくのではないか」という懸念を示した。

 会場からは、「来賓それぞれのスピーチから、社会観、経済観の違いが分かって、興味深い」「経営側の発言も聞きたかった」などという感想が聞かれた。(編集部)

「稲葉代表のあいさつ」

縮む日本と将来への希望

 今は、どんな時代なのか、自分たちはどこへ向かって進むのか。 年の初めにそんなことを考えた。すぐに頭に浮かんだことは、この国が縮んでいくということだった。人口が減り始め、高齢化が進む。経済活動はかつての輝きを失い、途上国に追い上げられている。社会保障制度など生活を根底から支えてきた仕組みがぐらついているのに、対応策が打ち出せない。これらが折り重なって、私たちの気持ちまでもが後ろ向きとなっている。

 最近のデータを見てみよう。経済は戦後2番目に長い好況のようだし、有効求人倍率は43年ぶりの高水準、株高は四半世紀ぶりということなのだが、国民にその実感は乏しい。国が縮んでいく今、閉塞感が世の中に蔓延しており、かつての勢いは消えてしまった。

 戦後日本の高度経済成長は長くは続かなかった。一時は、世界第2位の経済大国などともてはやされたが、バラ色の高度成長は60年代から80年代半ばまでの四半世紀を経て、あっという間に終わってしまった。その後は、低成長、少子高齢・人口減少社会に突入、 経済は低迷、国の赤字財政は慢性化し借金は膨れ上がる一方だ。団塊世代は高度成長の体験があるが、その後の世代は「好況の日本」を知らない。そこに世代間の断層が生じており、生き方や思考のギャップを生んでいる。

 ショッキングな事例を紹介したい。日本人の物づくり技能は世界一と思っている人が多いとは思うが、 そんな時代はすでに終わっている。この国の誇りであった物づくり技能の高さはもう昔話の世界となった。20歳前後の若者たちが技能を競う技能五輪国際大会の成績をみると、昨年のアブダビ大会では世界9位に落ちた。かつては世界一の金メダル獲得国だったが、韓国に抜かれ、今年は中国が世界一位に浮上した。中国が世界大会に参加したのは7年前から。まさかこんなに早く、中国に追い抜かれるとは思わなかった。ものづくり産業の衰退と技能の低下は、誰の日にも明らかだ。

時代の転換を意識し、将来を見直すチャンス

 新聞社を退職し、60代の半ばを過ぎてから、日本や世界がどう変わっていくのか、 そして働く人たちの暮らしや格差の広がりの行き着く先に何が待っているのかなどと考える時間が増えた。しかし、答えがすぐに見つかるはずもなく、思いは堂々巡りとなる。

 このところ、作家・中村真一郎のエッセー集『全ての人は過ぎて行く』を読み返すことが多くなった。「自分は何者として死ぬか」というのがテーマのエッセーだ。国が縮み始めると、人々の暮らしや気持ちに影響が及ぶ。とはいえ、エネルギーや資源、環境などの間題を考えれば、国が縮んでいくことは悪いことばかりでもない。時代の転換を意識し、将来を見直すチャンスでもあるからだ。

 人は過ぎていき、時代は移っていく。先が展望できない不安社会だが、新しい時代への希望はある。生き苦しさを乗り越え、これからどう生きるかを考える一年にしたい。

2017年総会

新春懇親会
「春闘」や「働き方改革」で意見交換


 定時総会の後、各界から関係者労働省や労働3団体の代表など多を招き新年懇親会を持った。厚生数が出席、「17年春闘」や安倍政権の進める「働き方改革」など政治経済情勢で意見交換した。

 労ペンの稲葉代表は同一労働同一賃金、長時間労働の是正など働き方改革に触れ「政策決定に労使の顔、働く人たちの顔が見えてこないのが気になる。『働かせ方改革』にならないよう希望している」とあいさつ。

 岡崎淳一厚生労働審議官は「働き方改革が安倍内閣の政策課題の第一に上がっている」とし、昨秋来の議論の進捗状況を説明したうえで、「労使の代表の意見もいただきながら、しっかりと我が国の働き方が変わっていく仕組みをつくっていくことが重要」と述べた。

 連合の神津会長は所用のため参加できず、逢見直人事務局長があいさつ。「今や雇用労働者の4割が非正規と言われている人たち。 この雇用形態の違いによる処遇の差が大きくなっている」と述べ、不合理な格差をなくすため、政府レベルの議論だけでなく、集団的労使関係の枠組みの中でルールを作っていくということが重要だとした。

 全労連の小田川義和議長は、「働き方改革では(労組が)一致して取り組める要求課題は決して少なくない。17年が、働き方改革が争点の一つだとすれば、どういう対応をするのかが問われる1年になる」と述べ、共同した取り組みを訴えた。続いて全労協の金澤壽議長は「労働者、民衆の現実の政治に対する不満が噴出し様々な形で全世界的な運動になっている。一方の責任があるのだという自覚のもと、この1年頑張っていきたい」と年頭の決意を表明した。

稲葉代表のあいさつ

新春懇親会における稲葉代表あいさつ

 21世紀に入ってすでに17年目に入りましたが、ここ何年かで社会に大きな変化が生まれており、時代の転換が始まったのではないかと思います。変化の主なものを列挙してみます。

 世界を巻き込んだ経済のグローバル化の弊害、限界が露呈したこと▽新自由主義、競争原理主義の経済の矛盾が、格差拡大や新興国と途上国の軋轢を生み出していること▽マネー資本主義がだれも制御できない「怪物」となり世界を窮地に追い込んでいること▽ITや人工知能など、技術の急速な進歩が先進国で雇用を奪っていること▽戦後、欧米や日本が目指した福祉国家という目標が少子高齢化や市場原理主義経済の帰結として困難に直面し、戦後目指してきた平等主義的な考え方が消えてしまったこと¬¬―などです。

 こうした変化は、人々の希望や前向きに生きようとする気力を打ち砕き、深刻な行き詰まり感をもたらしています。80年代から広がってきた経済のグローバル化、マネー資本主義経済はさまざまな問題を生み出し、「終焉に向かっての始まり」が起きていると考えます。

露呈する新自由主義経済の行き詰まり

 しかし、私たちはまだ、競争原理による新自由主義経済にとって変わる新しいシステムを生み出していません。当面は、格差拡大や貧困の広がり、さらには世界の各地で起きている紛争やテロなどの問題を抱えながら、混迷の時代が続くものとみられます。

 そして、昨年、「ショック」ともいえる大きな変化が起きました。英国のEU離脱の動き、そして米国ではトランプ氏が大統領選で勝ったことです。EUは英国が離脱の方向になったことで崩壊に向けて一歩を進めたのではないでしょうか。また、トランプ氏は「アメリカ ファースト(米国第一主義)」と訴え、保護主義的な経済政策への切り替えが進むことへの危惧が広がっています。

「時代の転換点」の始まり

 今後の世界を読み解くキーワードは「自国が第一」そして「自分が第一」という危ういものになるのでしょうか。EUが目指した国々の共同体による社会経済のシステムが崩れ、大国アメリカの排他的、保護主義的な振る舞いによって、共同体的な発想から「自国利害中心主義への転換が起きる可能性が高まると思われます。  将来は深い霧の中にあり、不確定なことが数多く存在しています。そうした中で、日本はどう対応すればいいのでしょうか。今のところ、政府や経済界は様子見の状態で、確固たる方向を見つけ出せないでいます。

 日本でも格差拡大が広がり、3人に1人が非正規労働者という状況が続いています。グローバル化によって製造業は生産拠点を海外に移しており、雇用が空洞化しています。

 経済のグローバル化によって先進国の生産拠点が人件費の安い途上国に移転したことや、人口知能やIT技術の進展もあって、世界的な雇用不足が生じています。人の仕事の4割はITに取って代わられると予測する人もいます。先進国を中心に製造業やサービス産業のなどの雇用が大幅にしぼむ中で、失業率が上昇し雇用なき貧困の状況に直面しており、日本もその流れの中にいます。

 政府は「働き方改革」を主要政策として掲げています。「同一労働同一賃金」の取り組み、長時間労働の是正などがテーマとなっています。どれも大事な課題ではありますが、政策決定に労使の顔、そして働く人たちの顔が見えてこないのが気になります。

 今、安倍政権主導による雇用・労働政策に国民の関心が向いていますが、一番必要なことは労使が目の前の状況にどう向き合うかだと思います。働き方を決めるのは、まずは労使協議ありきではないでしょうか。政府が決めても労使がこれに納得できなければ、政策に魂がはいらず、空理空論、絵に描いた餅になってしまいます。まずは労使がしっかり向き合うことが大事です。

 あの時が時代の転換点だった、と気づくのはもう少し先になるのでしょう。しかし、世界的に雇用減少社会が現出する可能性が高まっています。発想を転換させて新自由主義に代わる、「新しい社会・経済システム」を構想し実現させていくことが必要だと考えています。

2016年総会

春ホームページを開設
労働ペンの活動は新展開へ


▼労働法制の今後に注目

 懇親会に先だって15時半から開かれた総会には会員66名が出席した。

 中川隆生事務局長が開会宣言。昨年、逝去した孫田良平、長谷川洋三の両会員に黙祷を捧げた後、昨年同様、稲葉康生代表が開会の発挨拶。「昨年は、労働法制が新たに制定されたり規制緩和が進んだりしたので、その実態や今後の課題について当クラブとして、もっと勉強していきたい。そのためにも若い人たちの会員数を増やし、活発な活動をめざしていきたい。また、2016年は、参議院選挙がある。そのせいか連合の新年会にも多くの人たちが参加していた。

どのような結果が出るか、私たちも大いに注日していきたい」と語った。

▼懸案のホームページを開設

 最初は、中川事務局長による「2015年度活動報告」。ここでは、ヒアリング、アフター5、見学会、ミャンマー訪間などの活動経過や成果が報告された。事務局運営については、プロジェクターを購入したことで、ヒアリングの際、頻繁に使用されるパワーポイントの使用に対応できるようになった。会員管理については、2年ぶりに会員名簿を改定、全会員に配布した、などの報告がされた。

 また大きなニュースとしては、2014年来の課題であったホームページが、本日、開設したとの嬉しい発表があった。これによって労働ペンクラブの活動が幅広く社会に発信できるとともに会員相互の意見交換、連絡が活発化することになった。さらに総会は、林元夫会計幹事から決算報告、馬場義雄監事からは、会計監査の報告があり、それぞれ承認された。

 続いて16年度の活動計画について中川事務局長が、ヒアリング、アフター5を月1回、見学会、海外訪間、他団体との懇談会も積極的に取り組むと提案した。なお本年度からホームページが開設したので、今後の活用方法、会報のありかたなどについて、会員からも幹事会に意見や要望を寄せてほしいとも要望した。

 続いて関西支部の活動報告と活動計画が、支部長である玉泉孝次幹事によって行われた。 会員数は、30名。その活動は、労働経済トップセミナーの開催、支部通信の発行(年4回)などだが、会報の充実した内容が注日された。16年度には、定例会の開催、共催事業の実施、会員拡大に取り組んでいく方針だという。

 16年度の予算については、林会計幹事が説明、会員数の日標を205名(現在197名)として予算規模は、約290万円でクラブを運営していくと報告した。これらの活動計画、予算案は、それぞれ原案どおり承認された。

▼労働ペンクラブ賞に3作品

 総会では、最後に労働ペンクラブ賞の発表があった。本年度は、相原正雄さん『読んで楽しむ働くこと』、熊谷謙一さん『アジアの労使関係と労働法』の2作品が労働ペンクラブ賞、岡山茂さん『格差時代の労働法制改革への提言』が奨励賞を受賞した。14年は該当作がなく、奨励賞1だけだっただけに15年は大収穫だった。(夏目孝吉)

2015年総会

春闘、規制緩和、働き方の3課題に取り組むことを確認

 日本労働ペンクラブの15年総会は、2015年1月8日(木曜日)、日本記者クラブで開催された。当日は、11時から12時までが会員総会、12時半から来賓、 招待者を迎えての懇親会だった。

 総会出席者は、81人(会員)、新年懇親会には145人(会員十 外部招待者)で懇親会参加者数は昨年の121人を大きく上回った。

▼3つの課題

 総会は、冒頭、稲葉康生代表が開会のあいさつ。「今年は、3つの労働間題の課題があります。まず、春闘です。昨年は、官製春闘といわれ、労働組合の役割、存在が間われましたが賃上げは進んだ。 だが、それは一部の業界や大手の企業だけでした。中小、零細には及ばなかった。今年は、どこまで広げられるのか注目したい。

 二番目は、労働の規制緩和です。派遺法や労働時間の法改正がどうなるか、関心を持って見ていきたい。三つ目は、働き方の間題です。とくに2000万人を超えた非正規労働者の増加についてどのように歯止めをかけるのか、これらが今年の課題だ」。と語った。

▼秋に会員名簿発行

 総会は、規約により稲葉代表が議長となって議事に入った。まず、関西支部代表の玉泉孝次氏から関西地区の14年度の活動報告があり研究会活動、会報発行が活発なことが報告された。この後、中川隆生事務局長から14年度の労働ペン活動報告、林元夫会計幹事からは決算報告、山田行雄監事からは、会計監査の報告があり、それぞれ承認された。続いて15年度の活動計画及び予算案について提案があり、原案どおり承認された。予算提案の中では、昨年末の会員数は、199人、今年は200人超をめざすことが、また会報への広告掲載の強化、事務所利用の活発化による収入増加が強調された。また労働ペン会報の永久保存のための製本作業の着手と15年秋には、新たに会員名簿を発行するとの方針も示された。

▼新幹事15人を選任

 役員については、25人の幹事のうち新たに以下の15人が選任された。

①代表代理小島正剛、長谷川真一、藤井紀代子
②副事務局長加瀬谷まゆみ

 最後に労ペン賞の報告があり、大澤賢会員の『甦る被災鉄道-東日本大震災を乗り越えて』(束京新聞刊)が奨励賞として発表され、表彰式が行われ、14時半に総会は、閉会した。(夏目孝吉)