労ペンとは

代表挨拶

日本労働ペンクラブ代表 植木隆司

「ぜひインフレ率を超える賃上げをお願いしたい」「構造的な賃金引き上げを目指した企業行動へと転換する上での正念場、かつ絶好の好機」「賃金引き上げを基本とした経済の再構築が重要」―。2023年春闘をめぐる政労使トップの発言を、順番に紹介したものです。抜き出した、この3人の発言はだれがどの発言なのか分からないくらいです。岸田総理、十倉経団連会長、芳野連合会長は異口同音、賃上げ!賃上げ!―の大合唱をしているように聞こえます。かって安倍政権下では、「管理春闘」とも呼ばれ、2%ほどの賃金引き上げが続きましたが、今年はこの2倍の5%を超えるという期待を感じさせます。30年以上も続く、賃金の事実上の据え置きで、働く者の労働の対価は先進各国に比べても大きく見劣りしています。「5%」程度の賃上げを声高に述べるトップ3人の今更ながらの発言は、一般感覚に比べて、ずれまくっているのではないでしょうか。

私たち、日本労働ペンクラブは、1981年1月に発足した、「労働」に関わるあらゆる事象に関心をもつ者の交流・親睦団体です。「ペン」の名を掲げ、マスコミ、研究者、労使関係者、行政、社会保険労務士ら多種多様な者たちが集合した、他に例を見ないユニークな組織です。毎年、部外の講師を招いてのヒアリング、会員が自分の専門分野を紹介する会員セミナー、訪問団を結成して世界各国を回り、労働経済事情(もちろん、観光も)を調査する国際交流、労働関係のあらゆる現場を視察する見学会、労働関係の諸組織と行う意見交換会などを行い、ホームページや会報で会内外に発信しています。創設40年を迎えた2021年からは、記念事業として、日本初の「労働遺産認定事業」に取り組み、2022年、2023年の総会で、計4件の遺構や資料等を、後世に継承し発展させていく「労働遺産」として認定し、認定証と記念のトロフィーをお渡しさせていただきました。一方で、コロナ禍により事業のスタートは足踏みしましたが、「講師紹介制度」も講師の登録が済み、具体的な紹介の呼びかけに取り組むところです。これも、創設40周年の記念事業で、専門家集団としての労働ペンクラブの会員を、ボランティアとして労働問題のセミナーや学習会等に紹介するものです。創設40周年を経て、労ペンは関係者の親睦・交流団体の性格を止揚し、広く社会に目を向けた社会貢献団体の色合いを強める決意をしているところです。

さて、冒頭の23年春闘ですが、3トップの発言のように、5%程度の賃上げが仮に全労働者で実現したとしても、労働者が笑顔満開、ソメイヨシノ爛漫の春を迎える結果になるのでしょうか。現状で見ても、4月からはさらに諸物価が値上げ、再値上げされることが予想され、その引き上げが賃上げ額を、さらに上回ることになるでしょう。冒頭の3トップが語るほど、個々の労使関係を反映する賃金交渉は甘くありません。まして、労働組合のない企業の大多数に上ります。どこに真実があるのか、よく見極める必要があります。私たち、労働ペンクラブの会員はより冷静な目で、これらの状況を見詰め、分析します。非正規労働者、ギグワーカー、育メン、ハラスメント、生産性、リスキニング、生成AIなどなど、今や、労働に関する事象は生活全般と関わり合い、そのテーマはあらゆるところに拡大して存在しています。今も労働問題に関わる方たち、労働問題に関心をお持ちの方たちの参加を歓迎いたします。

日本労働ペンクラブ代表
植木隆司
    

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