私の主張

「裁判例からみる女性労働 昨日・今日・明日」(労働法令社)―会報216号から転載

2023/06/19

 
会員の新著紹介・君嶋護男会員(代表代理)

この度、裁判例から女性労働の問題点を明らかにする趣旨で、(株)労働法令から「裁判例からみる 女性労働 昨日・今日・明日」を出版しました。これまで、ハラスメントを中心に裁判例集を出版し、日本労働ペンクラブ賞までいただいたところですが、今回は、受賞後3冊目として、初めて女性労働に取り組んだもので、かつて男女雇用機会均等法を担当した者として、「ようやく出版にこぎ着けた」という思いを強くしているところです。

私は、学生時代から、何故か女性労働問題に関心を持っており、たまたま労働省に入省して、男女雇用機会均等法制定時の中央機会均等指導官となったことから、少しでも男女差別を解消しようという思いで、現職時代から女性労働に関する裁判例を、断片的ではありますが収集し、細々と整理を続けてきたところです。また、厚生労働省退職後は、今はなき「女性と仕事の未来館」の副館長として、本格的に女性労働を中心に裁判例を収集・整理し、同館のホームページに掲載してきました。

安倍内閣は、その目玉政策の一つとして「女性の活躍推進」を掲げ、その流れの中で「女性活躍推進法」が制定されるなど、特に職業分野においては女性労働対策がかなり進んできたといえます。ただ、こうした施策を真に地に足の着いたものとするためには、様々な理由から女性の活躍が阻害されていた時代のことを学ぶことが不可欠と考えられ、そうした観点に立って、裁判という切り口で女性労働に係る問題点を掘り下げたところです。

本書をご覧いただければ分かるように、女性の活躍を阻害してきたものとしては、結婚退職、男女別定年、コース別人事管理を始めとする昇格・賃金差別、妊娠・出産・育児休業等に係る嫌がらせ(マタニティ・ハラスメント)、仕事と家庭の両立の困難性等が挙げられます。これらについては、可能な限り裁判例を収集し、本書に掲載したところですが、活躍阻害行為の代表ともいうべきセクシャル・ハラスメントについては、裁判事例が余りにも多いことから、本書からは外し、できれば別途出版の機会を探ろうと考えています。

本書が、女性労働に関心を持つ方にとって役立つことを願っています。

(君嶋 護男)

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