2024/12/16
論創社 2200円+税 評者 保高睦美会員
(会報221号=24年10月5日号から転載)
パチンコファンには申し訳ないのだが、正直言って、パチンコにあまり良い印象は持っていない。大音量の軍艦マーチにパチンコ依存症で借金地獄、親がパチンコに興じている間に自家用車に置き去りにされた子供が熱中症死にパチンコ離婚、そして見え隠れする暴力団の影――。そんなパチンコの戦後史に切り込んだのが本書で、1999年に出版された同名書の復刊である。
現代パチンコの生みの親、正村竹一氏をはじめとするパチンコ業界で生きる人々、規制に動く警察行政、利権に群がる暴力団の動きを描いた。丹念な資料の読み込みと当事者への取材が光る。
景品買取りをめぐる暴力団の影、規制を強める警察とパチンコ業界の攻防の歴史は熾烈で、昔ながらに景品はたばこやチョコレート、日用品にとどめておけば、こんな苦労はなかったものをとつい思ってしまう。
パチンコ店は、在日韓国・朝鮮人の経営が多いと聞くが、その理由も本書でわかった。また、生き残りをかけた新機種開発の"業界努力"も丹念に追っていて、正村ゲージにオール10、オール15、機関銃式にジミットとパチンコ台の改良が、盤面図付きで書かれている。チューリップやフィーバーという言葉くらいしか知らない私は、ネット検索をしながら読み進めることになった。こんなに詳しく書くのだから、著者の溝上さんは、相当パチンコ好きなのか?
聞いてみると、「僕はパチンコをやらないのですが、当時、取材のために(怪しまれないように時には子ども連れて)パチンコ店に通いました」と、取材に手を抜かない溝上さんらしい答えが返ってきた。「ただ、店の人から領収書を出せないと言われ、出版社からパチンコ代をいただきました」とのことで、パチンコ業界と警察、税務当局との攻防は続きそうな気配である。