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【第5回 】ジェンダーを考える  大塚久美子さんに聞く メディアとジェンダー

2022/01/11

 

社長復帰

――社長解任後、半年で社長に復帰しまた。

年明け 1月28日の取締役会で、私を社長に戻し、父と私の代表取締役二人体制に戻すことになりました。そうしたら、翌29日に父から私を取締役候補から外す株主提案が出たのです。

プロキシーファイト

――3月の株主総会に向け、会社側(久美子社長)と株主側(勝之会長)のプロキシーファイト(委任状争奪戦)となり、連日のようにメディアに取り上げられるようになりました。2015年2月25日に、勝久氏が一部の幹部社員をずらりと並べた記者会見もインパクトがありました。「社長にえらんだことが私の唯一の失敗」「何人かの悪い子どもを作った」などの言葉も飛び出し、娘である久美子社長が創業者である父勝久氏を会社から追い出そうとした父娘の大喧嘩という構図でみられるようになりました。

その構図は事実とは全く逆です。あれは、相手方のコンサルティング会社、PR会社のストーリー作りが、すごく周到に計画されていて巧妙だった。あの会見の翌日の26日は、もともと会社側の事業説明の記者会見が予定されていて、それにぶつける形でセットされたんです。
株主側は、会社側の戦略が低価格志向に転換したり、会員制をやめることでサービスをなくすものだと主張しましたが、それは事実と異なるものです。でも、それが父の発言とともに、そのまま記事になってしまった。
その後どんなに説明しても、わかってもらえませんでしたね。

つくづく思う。私が40歳男性だったとしたら

――「親子喧嘩」「お家騒動」「家具屋姫」などと、人々の興味を引くような取り上げられ方をしました。

私が、 40歳の男性だったら、きちんとした経済ニュースとして取り上げられたのではないかとつくづく思います。
テレビのインタビューでは、事前には経済ニュースとして取り上げると言いながら、実のところは親子関係などの質問で、タジタジになったり、感情的になるところをアップでとりたいという意図が透けて見えました。それで視聴率が稼げるっていうところが問題だと思います。
株主総会までの間の2か月間の露出をCM換算すると60億円って言われましたね。その後のお詫びセールでまで入れると100億円だそうです。
それだけの期間、大塚家具は低価格路線になる、サービスがなくなるとか、事実と異なる宣伝をされ続けたことはビジネス的には大きな痛手になりました。

(2019年12月、大塚家具は、ヤマダホールディングス(HD)の傘下に入り、大塚さんは2020年12月、社長を退任した)

叩かれてもチャレンジする

――何か問題が生じた時、それが増幅されて世の中に宣伝されてしまうと、女性が社長になることに対する、恐れ、不安感が出てくる可能性もあると思います。

なので、私としてはやっぱり、何があっても恐れるに足らずと、気にしちゃいけない、みんな頑張れと言いたいわけですよ。正直、トラウマになるし、意気消沈もします。でもまあ、それで人生終わるわけじゃないから。そうやって頑張る人がいないと、何十年たっても変わらない可能性があるわけですよね。
多分、世の中では、私を失敗者だと見る人が多いと思います。社長になって花道作って退社するというのがステレオタイプの人生の成功ととらえれば、そうなのかもしれない。でも人生って、そればかりでもないと思うんですね。後に続く人にどのような貢献ができたかに価値があると思ってます。
女性だということでニュートラルな評価を得られないことはあるかもしれませんが、誠実に仕事をすればその時に他人から評価されなくても後につながる貢献にはなります。そのことを他人は知らなくても自分は知っているということが大事です。他人の表面的な評価ではなく、自分が意味があると信じることにチャレンジしてほしいです。
チャレンジした人を叩く世の中だけど、叩かれるからやめようではなくて、叩かれても気にしないで頑張ろうって言いたい。だから、まず、私が元気にしなきゃって思っています。

ジェンダーを考える【PDF版】

※「ジェンダーを考える大塚久美子さん」は今回が最終回です。

大塚久美子さんインタビュー第1回から第5回まで通して読めるWEB版はこちらです。

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