ヒヤリング

2025年版労働経済白書

2026/01/26

 
厚生労働省政策統括官付政策統括室長補佐 木村直哉氏
(会報226号=25年12月25日号より転載)

25年11月27日(木)、厚生労働省政策統括官付政策統括室長補佐の木村直哉氏を講師に招き、「労働力供給制約の下での持続的な経済成長に向けて」を主題とする2025年度「労働経済の分析」(労働経済白書)のヒアリングを行った(会場参加27名、オンライン6名)。

同報告は2部構成からなり前段で一般経済、雇用、労働条件など労働行政を巡る環境を扱う。2024年の雇用情勢は完全失業率、有効求人倍率はほぼ横ばいで推移し、労働力人口、就業者数及び雇用者数は過去最高となるなど引き続き改善の動きがみられた。現金給与総額は4年連続で増加し、実質賃金は一般、パートともマイナスを脱したもののパート比率の上昇から就業者計ではマイナス圏に留まった。

主題を扱う後段では、過去約40年間の実質GDP成長率は独仏などと遜色がないとしているが、この間の平均成長率を年率換算すれば1%台半ばの低成長であり、とりわけ日本の失われた30年はゼロ成長近傍の定常状態にあることには留意すべきであろう。国際比較においては欧米だけではなく、成長著しい中国など新興国をも視野に入れなければ客観的な現状認識とはならない。

その上で持続的経済成長に向けて克服すべき課題として、実質労働生産性の成長寄与度の低下、ソフトウェアなど無形資産投資の名目成長寄与度の低さ、医療・福祉業及びサービス業等の低労働生産性などがあげられる。医療・福祉業をはじめとした、人々の生活に密接に関係している職種を社会インフラ関連職と定義し、高齢化社会でこの分野の人材を確保するには、非社会インフラ関連職と比較して月額で約5万円低い賃金などの処遇を改善することが必要である。社会インフラ関連職はスキルや経験の蓄積に応じて賃金が上昇する仕組みが相対的に弱い可能性があり、長期的に安心して働くために、社会インフラ関連職でも、スキルや経験の蓄積に応じて賃金が段階的に上昇する「キャリアラダー」と呼ばれる仕組みの構築を進めることが重要とされる。

また、多様な労働者の労働参加を促し、企業が直面する人手不足を緩和していくことが必要とされ、転職の増加や「生え抜き社員」の減少といった雇用実態の変化、あるいは余暇優先、賃金重視、自己成長への高い関心といった若年層の就業意識の変化に対応し、賃金以外の労働条件の改善や働きやすい職場環境整備など、労働者それぞれの意識やライフイベントに合わせた働き方を可能とする柔軟な雇用管理を行うことが重要とされる。

質疑では高市首相による労働基準の規制緩和指示が労働行政にどのように影響するのかについても議論された。労政審では労働側や公益委員の一部から、デロゲーションの安易な拡大や最低基準の法規制から労使自治への転換といった原則と例外の逆転に対する懸念も示されており、多様な労働者ニーズに応えるとともに健全な労使関係を促すような労働行政のあり方が問われている。(早川行雄)

労働経済白書の説明の説明をする木村室長補佐労働経済白書の説明の説明をする木村室長補佐

労働経済白書の説明会で参加者の質問を聞く木村室長補佐(右側)労働経済白書の説明会で参加者の質問を聞く木村室長補佐(右側)

  
 

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