2025/09/29
講師・仁田道夫氏(元東大名誉教授・会員)
(会報225号=25年9月25日付から転載)
25年6月12日、「春闘システム‐何が問題になっているか」をテーマに、1月に入会された仁田道夫氏(東大名誉教授)を講師として会員セミナーを開催、36人の会員が参加した。仁田氏の講演内容は以下のとおりである。
- かつて、ゆとり・豊かさがキャッチフレーズだったが、誰も覚えていない。復権できないかと思うが、組合も関心がない。日経連は1999年、雇用か賃金かということで総額人件費管理を打ち出したが、その結果どうなったのかを確認すべきだ。
- 政府の賃上げ促進は、経済学者には説明できない。労使自治で決まるのが妥当な賃金水準で、政府の加担はおせっかいだと思っていたが、春闘は公共財であり、うまく供給されないのなら、政府が供給してもおかしくないという松井健氏(UAゼンセン)の論考を読み、納得した。
- 賃上げ交渉は産業別統一闘争が基本で、そうでないと賃金は上がらない。ドイツはIGM(ドイツ金属労組)が中心だ。日本が企業別組合であっても「春闘システム」と言えるのは、共通化の仕組みがあったからだ。最初は同じ賃金水準をめざしていたが、組合にその力はなく、賃上げ幅の統一を図ってきた。
- かつては鉄鋼と自動車が中心となり、相場が決まっていた。観察してきたところでは、鉄鋼と自動車が相互に見合っていて、春闘後、賃上げ水準は同額ですよねと確認した上で、鋼材価格の交渉を行っていたのではないか。また下請取引では、下請企業が高額の賃上げをしたら、親企業から納入単価の引き下げを求められるということもあった。
- 公共分野では、民間準拠で労使が納得していたが、政府が上げたくない時には、民間に働きかけることもあったのではないか。
- 春闘システムの機能障害、とくに大企業から下請への波及がうまくいかなくなっているのをどう解決するか、経済学者は解明できていない。
- 経済の落ち込みが総額人件費管理の影響だと思っている経営者は結構いるので、政府や経団連の賃上げ方針に従う大企業は多い。ただ政府が言わなくても賃金が上がるよう、春闘システムを政策・制度で変えるべきだ。
- 企業別組合が組合でないとは言わないが、産業別交渉について労組法などで規定すべきだ。企業別に勝手に交渉してはいけないという仕組みにしたとしても、海外と比べれば異常ではない。
- 問題解決に重要な役割を果たしているコミュニティ・ユニオンについても、会社と交渉する枠組みを労組法に明記すればよい。
- 賃上げ結果を公開させることも必要だ。そうしないと揃って交渉できず、春闘相場が成り立たない。産別交渉の義務づけができれば、交渉アイテムや公開すべきデータについて議論できる。
なおこのあと、ユニオン・ショップ協定の重要性などに関し、活発な質疑が行われた。(浅井茂利)
参加者であふれた仁田東大名誉教授による春闘システムの会員セミナー
会員セミナーで講演する仁田先生(右端)

