会員セミナー

配置転換に関する最高裁判決

2025/03/03

 
講師 澤路毅彦氏(会員・朝日新聞記者)
(会報222号=24年12月10日号から転載)

2024年9月26日、配置転換に関する最高裁判決についての会員セミナーが、会員の澤路毅彦氏を講師に、26人の参加を得て開催されました。テーマとなった最高裁判決は、本年4月26日、最高裁第二小法廷で示されたもので、7月29日の朝日新聞の「記者解説」として、澤路氏が署名記事を執筆されたものです。

事件の内容は、滋賀県社会福祉協議会が設置・運営する長寿社会福祉センターにおいて、福祉用具の製作・改造を担当する技術職であった原告(控訴人・上告人)が、製作・改造件数の激減を理由に、打診を受けることなく、欠員となった総務課への配転命令を受けたことから、一旦は配転先の業務に就いたものの、数カ月後に適応障害を発症したとして、被告に対し損害賠償を請求したものです。原告・被告間の確執は約10年前にもあり、被告が原告にバスチェア台車の製作を依頼したものの、原告は安全面の問題を理由にこれを拒否して訓戒書を交付され、その後も同様な製作拒否があって、原告はストレス性障害により2年以上の休職をしました。こうしたトラブルにより、原告・被告間の関係は良好とはいえなかったとみられ、そうしたことも今回の事件の遠因となっていたものと考えられます。

本件の主要な争点は、①原告の職種を技術職に限定する合意があったか、②本件配転命令は違法・無効か、の2点と考えられます。このうち、①については、職種限定の明示の合意こそなかったものの、原告が約18年間技術職一筋に勤務してきた経緯から、地裁、高裁とも実質的に職種限定の合意があったと認めましたが、②については、福祉用具を改造する需要が激減する中で、原告を総務課に配転することに業務上の必要性があり、原告に対し甘受すべき程度を超える不利益をもたらすものではないとして、主たる請求である慰謝料請求を棄却しました。

これに対し、最高裁は、職種限定合意がある場合には、使用者は、労働者に対し、その個別的合意なしに当該合意に反する配置転換を命ずる権限を有しないと明言して、原審の判断を否定し、不法行為を構成すると認めるに足りる事情の有無等について更に審理を尽くさせるため、高裁に差し戻しました。

配置転換を巡る裁判は、遠隔地への配転により単身赴任を余儀なくされる等家庭生活との両立の観点から提起されるものが多く(「東亜ペイント事件」最高裁1986年7月14日判決等)、これまでは、同判決によって、配転について使用者にかなり広汎な裁量が認められていましたが、今回の判決によって、その裁量の範囲がどうなるのか、ジョブ型雇用が進んでいく中で、そのジョブが不要になった場合、整理解雇の4要件(特に二番目の「解雇回避努力」の一環としての配転)をどこまで認めるのか、今回の判決は大きな問題提起をしたものと考えられます。

(代表代理 君嶋 護男)

会員からの質問が活発に出た澤路講師の会員セミナー会員からの質問が活発に出た澤路講師の会員セミナー

最高裁の転職判決のセミナーで質問に答える澤路講師(右)最高裁の転職判決のセミナーで質問に答える澤路講師(右)

  
 

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