会員セミナー

世界の児童労働の現状とその撤廃に向けて

2026/04/06

 
元ILO駐日代表 田口晶子氏(幹事)
(会報227号=26年2月25日号より転載)

2026年度の第1回会員セミナーは、昨12月11日に「世界の児童労働の現状とその撤廃に向けて」と題して、労ペンクラブ幹事(元ILO駐日代表、元立命館大教授)の田口晶子氏から講話を受けた。

児童労働は、子供たちから子供時代、潜在能力や尊厳を奪い、肉体的・精神的発達に有害な仕事として定義される。家事の手伝いではなく、子供にとって精神的、身体的、道徳的、そして社会的に危険で有害な仕事を指す。児童労働は学校教育を受ける機会を奪い、通常より早く学校教育を終えるよう強いる、または学校教育と過度に長時間で加重な労働との両立を強いるものである。

世界の児童労働数は、2000年の2億4500万人から順調に漸減してきたが、2024年にはなお1億3760万人を記録。アジア太平洋地域では減少する一方で、アフリカ、特にサハラ以南においては人口増加が児童労働減少を上回っている。2020年推計では20年ぶりに増加。背景には、新型コロナの蔓延、気候変動、長引く紛争や、児童労働が多くみられる国での経済停滞のほか、失業者や不完全就業者の増加、格差拡大などの人口動態や構造問題、農業中心経済の脆弱性などの要因がある。

5~17歳の年齢別・性別では、年齢が上がるにつれて男子の比率が高まるが、家事労働を含めると女子が僅かに上回る。教育機会を失うケースの増加は深刻である。

憂慮すべき最悪の形態の児童労働

ILOの中核的労働基準に含まれる138号条約は177か国が批准。しかし憂慮すべきは、人身売買や強制労働・債務労働どの奴隷労働、売春、薬物の生産・取引等に係る「最悪の形態の児童労働」の増加である。2024年時点でその数は5400万人にのぼる。なお最悪の形態の児童労働条約182号は、全加盟国が批准している。

児童労働撤廃に向け、1997年のオスロ世界会議以降、世界デー(6月12日)の設置や行動枠組みの策定が進められてきた。2022年の第5回ダーバン世界会議では「ダーバンからの行動要請」が採択され、質の高い無償義務教育、社会的保護、資金調達、国際協力の強化を柱とする複数のステークホルダーによる包括的枠組みが提唱された。

ILOもまた、児童労働撤廃国際計画(IPEC)を1992年に開始し2015年からIPRC+(児童労働・強制労働撤廃国際計画)によりSDGsターゲット8.7(強制労働、現代の奴隷、人身取引の撤廃)に沿い、ILOが中心となりSDGs8.7アライアンスを結成、2025年までに児童労働、2030年までの強制労働根絶を目標に取り組んでいる。

児童労働の減少に向けて

質疑の中で田口氏は、重要なことだとして、「児童労働は経済の成長によって自然に解消されるのではなく、子どもの教育を受ける権利を確保し、また社会保障、社会的保護へのアクセスを確保するという能動的な政策が必須であり、さらに親の生計を確立することによって児童労働は減少する」と総括した。なお田口氏は講話のなかで、ILOの構造と活動、さらに国連各機関との連携推進に関連し、ILOの三者構成の独自性とそのための統合的連携の難しさにも触れられた。(鈴木則之)

会員セミナーで講演する田口幹事会員セミナーで講演する田口幹事

参加者からの質問を受ける田口幹事参加者からの質問を受ける田口幹事

  
 

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