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雇用フレキシブル化の動態

2018/03/22

 
齊藤 幹雄氏

3月22日のアフター5は、齊藤幹雄会員(東北福祉大学教授)による「雇用フレキシブル化の動態」について。

日本的雇用システムの変化の内実、そのゆくえ等については、これまでも様々な議論がある。齊藤氏は「日本的雇用慣行は労働市場の分断を巻き込んで動揺し再編されつつあり、『ストック型雇用』から『フロー型雇用』へと、雇用構造のフレキシブル化が広範囲に加速する事態となっている」と捉え、「揺らぐ日本的雇用慣行の実相とそのゆくえを探る手がかりを得たい」と、昭和63年と平成9年の2回、それぞれ従業員30人以上の3000社、2000社にアンケート調査を実施した。

アフター5では、「調査当時と違って雇用フレキシブル化は既知の事実だが、こういう捉え方もあるのだと参考に受け止めていただけたら幸いだ」と、その分析手法と結果を解説した。以下、不十分な理解だが、要点のみ、かいつまんで紹介してみたい。

齊藤氏はまず、「規範的な長期雇用」の「定義」(理念モデル)をもとに、演繹的手法で今日の動向を検証しながら、(a)雇用形態の多様化、(b)人材流動化、(c)勤務形態の弾力化、(d)固定的人件費の削減といったフレキシブル化の4側面を導き出す。それをアンケート調査のデータを用いて、4つの係数各々が互いに影響し合うような計算式を考案。4つの係数をベクトルと考え、その面積を求めることにより、典型モデル(規範的雇用)との対比や差異の度合いを0~100の範囲でフレキシブル指数として算出した。その指数は0に近いほど規範的雇用が現存し、100に近いほどフレキシブル化が進展しているとみる。

集計結果は、全産業のフレキシブル化指数を昭和63年と平成9年で比較している。産業によりバラツキがあるが、全体平均でみると前者が30.6、後者が28.0であった。僅かながらフレキシブル化が後退しているが、平成9年辺りでは、「三つの過剰を背景に新規学卒者の採用抑制や雇用確保に比重がおかれたことが、フレキシビリティの停滞につながったのではないか」。 また「アウトソーシングの影響も看過できず、雇用関係が成立しない事態も進行しているのではないか」と齊藤氏。「データが古いので恐縮だ。新しいデータで改めて調査したい」と次のチャレンジに意欲を示している。

質疑では、ICT、AIなど社会構造が変化する中での人材育成・能力開発の重要性に話題が集まった。良質な人材育成は日本の大事な財産だ、企業内の訓練が後退する一方、外部労働市場の発達にどう対応すれば望ましいのか。フレキシビリティへの施策を交えて、共通の課題として真剣に検討すべきだ、などの意見が出された。

(山田潤三)

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