2023/11/20
(会報217号=23年9月25日号から転載)
9月1日(金)午後3時15分から約1時間半、ちよだプラットフォームスクエア504会議室において、会員セミナーを開催した。
今回のテーマは「キャリアと移動をめぐる考察」。講師は新会員である塚﨑裕子氏(大正大学社会共生学部公共政策学科教授)で、講義は21名の出席者を得て行われた。
講義の内容は、①キャリアによる国内人口移動の違い、②外国人のキャリアと国内人口移動、③地方移住と地方からの人口流出の抑制からなっており、①、②は国立社会保障・人口問題研究所「第8回人口移動調査(2016年)」のデータの分析を基に行われた。
①については、男女によるキャリアパターンの違い、キャリアパターンと国内人口移動との関係、国内人口移動と最終学校卒業年の前年の失業率との関係を分析し、ワークライフバランスが実現しやすい職場環境の整備の重要性を指摘した。その上で、男性はキャリアパターンによって、初職時の移動、転勤、転居を伴う転職に大きく異なる傾向があること、女性はキャリアパターンによって初職時の移動、家族の移動に伴う移動、転居を伴う転職に大きな違いは見られないこと、男女ともキャリアパターンによって、既婚か未婚かという傾向に大きな違いがあること、最終学校卒業時の労働市場の需給状況が、その後のライフキャリアの節目の移動に対して影響(世代効果)が見られることを指摘した。
②については、ⅰ生まれてから日本・中学から日本、ⅱ最終学校から日本、ⅲ就労から日本と、来日時期によりグループ分けをし、年齢、性別、国籍、最終学校、現在の仕事についての分析結果を説明した。
③については、コロナ禍の影響による地方移住の関心の変化を把握するために、大正大学地域構想研究所で2020年に実施されたインターネット調査の結果を基に分析を行っている。これによると、コロナ禍により、地方移住への関心が高まる傾向が見られ、若年者ほどその傾向が見られること、コロナ禍前より地方移住への関心が高まった理由としては、テレワーク等働き方を変えたいと考えるようになったこと、暮らし方を変えたいと考えるようになったことが多く挙げられ、地方移住に関心がある理由としては、特にコロナ禍以降では、通勤の苦労からの脱却、地方における生活費の安さ等が増大している。
また、同研究所でのリモートワークに関する調査(2022年及び2018年)では、リモートワーク正社員を希望する者が20ポイント近く増大しており、今後の働き方改革を進める上で重要な示唆が示されたことが窺われる。
会場からは、今回の分析の基となったインターネットの信頼性等調査の基本に係る質問がなされたほか、他の調査結果との比較、コロナ禍を契機としたリモートワーク、それに伴う地方創生等につき、活発な質疑が行われた。
(君嶋護男代表代理)

