私の主張

連合結成30周年に向けて
労働組合は、最大の納税者組織である 医療行政を変えた「連合の領収書をもらおう運動」③

2019/10/15

 

4月から働き方改革関連法と改正入管法が施行

昨年の国会で、働き方改革関連法と外国人労働力の受け入れ拡大のための改正入管法が成立し、この4月から順次施行されます。
この働き方改革関連法は、①罰則付き長時間労働の規制、➁同一賃金・同一労働、③高度プロフェッショナル制度の創設、④年休の計画的付与と取得、⑤労働者の健康確保措置および安全配慮義務、などです。 そして何よりも「同一賃金・同一価値労働」と「時間外労働の上限を原則として月4 5 時間かつ年360時間と明示」され(臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満、複数月平均80時間を限度)、この上限規制に抵触した場合の罰則規定が法律に明記されました。
また改正入管法による、外国人材の就労受け入れの拡大も、労働の現場ばかりでなく日本社会を大きな変貌を余儀なくされる転換期の到来を予感させます

政府は昨年2018(平成30)年12月25日に、外国人労働者の就労を大幅に拡大する新制度を巡り、運用全般にわたる基本方針と、受け入れ見込みの人数など業種ごとの分野別運用方針を閣議決定しました。 政府の基本方針では、新たな在留資格の「特定技能」により来日する外国人が大都市に集中しないように必要な措置を講じるよう努めるとしています。また基本方針に基づく運用方針では制度開始から5年で最大で34万5千人を受け入れるとしました。

特定技能は一定の技能を必要とする業務に就く「特定技能1号」と、熟練した技能を要する業務に携わる「特定技能2号」があり、2019(平成31)年4月の新制度導入の当初は、介護や農業など14業種への受け入れは「特定技能1号」が中心となります。
また従来の技能実習生については、技能実習2号の取得者(期間にして3年程度)が、そのまま「特定技能1号」の資格を得ることから、新制度導入当初の「特定技能1号」の大半を占めるとみられます。 基本方針によると、日常会話と業務に必要な日本語能力を条件としています。在留期間は最長5年で、同一業種や業務内容が似ていれば転職を認めるとしています。ただ家族を伴うことはできません。
さらに同日、関係閣僚会議で決定した「外国人との共生に向けた総合的対応策」は126項目あり、生活や雇用、社会保障、日本語教育などの支援策など多岐にわたりますが、人員や予算の手当てはこれから、というものが多くあります。

日本人の労働者が足りないから外国人を受け入れるハズであったのが、その外国人労働者が永住し高齢者となれば「外国人高齢者の医療と介護に日本人が従事する」といった笑えないことが起こります。 妻や子供、家族の帯同も同様です。外国人労働者の子供に日本語を教えるために、小中学校にも外国語を教えられる教員を雇う必要が出てきます。 外国人を雇うことで企業が利益を得る一方で、その子弟が通う小中学校の多額の経費を、税金で負担するとすれば、日本全体としては外国人を受け入れることが損になります。
問題は、外国人労働者を受け入れてメリットを受ける企業がコストを負担するのではなく、一般の納税者がそうした費用を負担する、ということです。

政府は、大都市圏などに外国人材が集中しないような措置を講じるとともに、日本語の習得支援も強化し、関係省庁が連携して適切な在留管理を進めるとしていますが、大都市集中を防ぐ仕組みは示されていません。
外国人技能実習生の失踪に関しては、「失踪の多くは地方の実習生であり、賃金の高い都市部での仕事を探すため」とも指摘されています。
外国人技能実習制度で2012(平成24)~2018(平成30)年上半期に失踪した実習生は計3万2647人。長時間労働や低賃金などの問題もあると言われます。
最低賃金は、都道府県で異なることから、働く外国人は賃金の高い都市部に流れることが予想されます。 地方と大都市圏で最低賃金額の差が大きければ、外国人労働者が都市部に集中し、より良い条件を求めて転職することになります。
転居や転職が難しく最低賃金の低い地方に生活の基盤がある日本人の場合と違って、外国人労働者は賃金の高い都市部で働き、出身国に仕送りをするわけです。 全国の最低賃金を東京の水準に引き上げ最低賃金を一律にすれば、外国人労働者の都市部集中を防ぐ対策になります。
これは日本人の労働者においても同様です。それには地方経済の仕組みを、東京と同額以上の賃金が支払える体質に改善していく取組みが重要となります。そしてその取り組みは、地方からの人口流出に歯止めをかけることにもつながります。

人口減少・高齢社会の到来と、労働の将来

いま日本は「人口減少・超少子高齢化社会」に進んでいます。人余りの時代は終わり、人手不足は構造的で慢性的なものです。
これを低廉な労働力を求めることで切り抜けようとすると、企業は自ら改善の努力をせず、外国人労働者依存体質になってしまいます。
いま現在進行形でAI( 人工知能) 、ビッグデーター、IoT(モノのインターネット)の活用が進んでいます。たとえば運輸ロジスティックに代表されるように、会社間取引、消費者同士の取引、会社と消費者との取引にも、情報とモノのやり取りがセットになっているものが多くみられます。

少子高齢化で働き手世代は大きく減っていく中で、経済を伸ばしていくには、人々の能力を高め、成長を図っていかなければなりません。
とくに地域のサービス産業は、人手不足が深刻です。これを解消し地方創生をすすめるには、労働生産性を高め賃金を引き上げていくことが重要となってきます。
地方で人手不足であえぐ産業で働く方が、豊かな生活ができれば、若者が地方にとどまり、安定した雇用と生活を手にすることができれば、少子化や人口減少にも歯止めをかけられます。
デフレマインドを脱却して生産性を上げる必要に晒されています。
政労使を問わず、人口減少と労働力不足への対応が課題となっている中で、生産性の向上に結びつく「働き方・休み方改革」と健康経営(2月号参照) に取り組まなくてはなりません。

「月刊連合」(2017年11月号) に、「人口減少化における地方創生」について、㈱経営共創基盤CIOの冨山和彦代表の話が掲載されていました。 本連載を締めくくるにあたり、その内容は多くの示唆に富んでいることから、そのポイントを紹介します。
(1)日本は「人口減少・超少子高齢化社会」に進んでいる。
(2) わずか10年で経営悪化の要因が変わってきた。たとえば地方交通の経営悪化させていたのは、運転手が不足し路線が維持できないという「人手不足」 がある。 運転手を供給する生産年齢世代の人口比率は下がり、需要に供給が追い付かない状況が起きてきた。
(3) 最近の長時間労働の背景にも人手不足がある。生産性の向上がないまま人手不足が続くと、一人当たりの労働時間を延ばすしかない。 問題となっていたブラック企業は、長時間・低賃金労働で人件費を圧縮し安売りで競争した。 (4)人余りの時代は終わり、人手不足それも構造的で慢性的なもので、とくに深刻なのが地域のサービス産業である。この人手不足を解消し地方創生をすすめるには、労働生産性を高め賃金を引き上げていくことが重要となってくる。 (5)人手不足の時代に労働生産性が低いということは致命的である。 かつて人手不足の時代、労使が協力して生産性を高め賃金を上げていくという「生産性三原則」(2月号参照 に合意した。
(6)生産性の向上が所得増をもたらし、消費の拡大をもたらし投資を呼ぶ。その循環が経済成長である。この重要性を再確認し、労使で生産性向上に取り組み、積極的に賃上げを進めるべきである。 生産性が低い要因は、経営力の低さである。
(7) 生産性が低く低賃金・不安定雇用で成長をけん引する力が弱い産業とは、飲食、宿泊、対面小売り、卸売、交通、社会福祉サービス、地域金融、不動産、建設、農業など第一次産業などである。
(8)地方で人手不足であえぐ産業で働く方が、豊かな生活ができる。

東京都が日本で出生率が最も低い。東京はブラックホールのように地方の人口を食いつぶして繁栄を維持している。 若者が地方にとどまり、安定した雇用と生活を手にすることができれば、少子化や人口減少にも歯止めをかけられる。

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