私の主張

労使経営協議会法第二次改訂案の制定を連合に要請

2020/02/03

 
高木雄郷会員(経営民主ネット事務局長)

―労働者の利益と民主的権利を護る労働者経営参画の法制度が必要

近年、企業の不正や不祥事、労働社会問題が相次ぐなか、こうした事態を払拭するための企業統治の改革論議が盛り上がっている。2015年に導入された東京証券取引所と金融庁のコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)では、独立社外取締役の複数選任などの内部統制システムが整備された。これに伴い、2018年のコード改定においては株主重視の資本効率をより意識した経営が求められている。

日本の企業統治指針は英国アングロサクソン流を採用した経緯があり、英国の動向への関心は高い。その英国で2018年7月、上場企業の経営規範であるコーポレートガバナンス・コードが改定され、2019年1月以降にスタートの決算期から適用されている。従業員も株主と同様、企業のステークホルダー(利害関係者)として重視され経営に意見を取り入れることや、役員報酬の透明性向上を求めるのが主要ポイントだ。英国のコード見直しは、文字通り、日本での企業統治の改革論議、法制改革にも大きな影響を与えると見られる。

この観点から、今後の日本の企業統治改革の最重点政策課題としては、経済のグローバル化、資本系列化の拡大に伴う企業グループのガバナンス強化のために労働者代表(労働組合)の経営中枢への経営参画と、グループ全従業員の参加民主主義の推進、組織化が必須条件だと言える。例えば、2018年6月に改定された日本のコーポレートガバナンス・コードにおいては、従業員との関係・対話では、「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」や「適切な情報開示と透明性の確保」の原則しか示されておらず、依然として、株主重視・優先のコーポレートガバナンス・コードであることは間違いない。

このため、経営民主ネットワークは、2019年8月8日開催の第4回労使経営協議会法第二次改訂案検討委員会(主査・高木雄郷事務局長)で、「労使経営協議会法第二次改訂案」をまとめた。この法案の骨子は、事業(産業・企業)の社会的責任と持続可能な開発目標(SDGs)、職場におけるディーセントワーク(安心・働きがいのある人間らしい労働)の実現、労働者のコーポレートガバナンスへの参加の確立。即ち、企業経営における労働者の情報権・協議権・決定参加権を法制化することによって、労働者の福祉増進や企業の健全性の確保・発展と民主化を図るとともに、国民経済全般に寄与することを目的としている。

この中で、大半の雇用労働者が働いている日本の中小企業にとって、労働者経営参画のコーポレートガバナンスの推進・制度化は、まさに経営民主化と経営革新を強力に進める手段になる。特に、今回法案の特徴は、第一次改訂案と異なり、新たに労働者代表取締役制度と「グル―プ事業体別経営協議会」の法制化を導入した点にある。具体的には、「株式会社たる事業体では、労働者が選任した者を取締役会に加えねばならない。取締役選出については、労働組合の指名、推薦する者が全労働者集会の議決によって任命され、 労働者代表として、取締役会に三分の一(従業員100人以上企業)または二分の一(従業員1000人以上企業)参加する」条項を織り込んでいる。

ともあれ、本法改訂案はILOが提唱する社会正義の拡大とディ-セントワークの実現、ISO26000の確立の上で制定することが必須条件だ。また、社会的経済格差や分配の不平等を是正するためにも、日本経済を健全かつ安定に運営するためにも、労働者の利益と民主的権利を護る労働者経営参画の新たな法制度が必要である。

経営民主ネットワークでは、その視点から、2019年10月4日、連合(相原康伸事務局長)に対して、「労使経営協議会法」(第二次改訂案)の制定推進を正式要請した。そして、現在、法政大学大学院に開校されている連合大学院の教科コースに、経営民主ネットワークが2017年春に創設した「コーポレートガバナンス労働教育講座」を導入するよう求めた。日本の労働運動の活性化にとって、労使経営協議会と労働者代表取締役制度の法制化は、デジタル新時代に対応する人間主体の働き方や企業統治改革、組織拡大強化の魅力=有効手段になることは間違いないだろう。

労使経営協議会法第二次改訂案検討委員会名簿(PDF版)

労使経営協議会法第二次改訂案全文(PDF版)

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