私の主張

<1>やるぜ!これならどうだ。人権DD金属労協主査 浅井 茂利

2021/10/04

 

若輩者にも関わらず、「労ペン・リレーエッセイ」第1回の執筆を担当させていただくことになり、大変光栄です。五十音順で得をするのは、通知表やテストを早く返してもらえていたとき以来です。
第1回にふさわしいテーマということで、「人権DD(デュー・ディリジェンス)」という、いま企業が緊急に対応を求められている課題について取り上げたいと思います。


「人権デュー・ディリジェンス」は、2011年に発表された国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」で打ち出された考え方、仕組みですが、正直、この名称ではなんだかわからない、と大変不評です。まあ「ディーセント・ワーク」も「インクルージョン」もそうでしたが、「デュー・ディリジェンス」には、結局日本語訳がつけられていません。私は「労災防止と同じように、人権侵害を防止することですよ」と説明しています。すなわち、防止に向けた企業の姿勢・方針を明確にし、社内体制を確立し、発生する危険性を徹底的に洗い出して防止措置を講じ、それでも発生した場合には迅速に対応して是正し、損害を補償し、報告書をとりまとめて開示する、というプロセスです。


「ビジネスと人権に関する指導原則」については、国別行動計画を作ることになっていましたが、日本政府は長期にわたり放置していました。ようやく昨2020年にまとめられたのですが、「人権デュー・ディリジェンス」に関しては、企業に啓発を行い、「期待表明」するに止まっており、本気で進めようという意気込みが感じられません。ところがフランス、ドイツ、EUなどで、相次いで企業に対し義務化が行われるところとなっています。まさに尻に火が付いた状態(下品で失礼)となっているわけです。


「人権デュー・ディリジェンス」と労災防止は、労働組合が参画しなければ実効性が確保できない、という点でも同じです。金属労協ではいま、「企業における人権デュー・ディリジェンスの取り組みに際しての労働組合の参画に関する対応指針」(仮称)を策定するための準備を進めています。「人権デュー・ディリジェンス」は自社内だけでなく、国内外を問わずバリューチェーン企業全体で取り組んでいく必要があります。海外に広く生産拠点を展開する金属産業の労働組合としては、今後、必須の取り組み課題ということになります。私個人としても、来年9月には定年後継続雇用期間が終了することになりますので、最後のご奉公として、力を注いでいきたいと思います。


■あさい・しげとし

1973年 八王子第五中学校吹奏楽部卒 1976年 明星高等学校吹奏楽部卒 1980年 明治学院大学吹奏楽部卒 現在、 谷口圭一記念アンサンブル、自由学園ウインドオーケストラOBOG会在団中 2022年 金属労協卒業予定

※デュー・ディリジェンス=Due diligence  口頭ではデューデリ、デューディリ、文章ではDDとも。

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