私の主張

特別インタビュー 連合・芳野友子新会長に聞く

2022/03/22

 
(会報211号=2022年2月25日発行から転載)

Q・会長として初の2022春闘で一番重視していることは何か。

A・格差是正の観点から男女間賃金格差、それから正規・非正規の雇用形態間格差、規模間格差の3つの是正に向けて今年はしっかりと取り組んでいきたい。とりわけ男女間賃金格差については毎年の方針で掲げているが、なかなか成果が見えてこない。もう少し踏み込んで取り組んでいく必要がある。国は女性の管理職が少ないことや女性の勤続年数が短いことを格差の理由に挙げているが、やはり自分が担当する仕事の経験の積み重ねと毎年の評価によってポジジョンが上がっていく。そのためにはどんな職務をやっているのか、例えば前面に出ているのは男性で女性がサポートに回っているとか、職域での働き方を具体的に見ていかないと、評価やポジションが上がるという結果になかなか結びついていかない。

取引の適正化で規模間格差是正

正規と非正規の格差是正については企業内最低賃金協定を締結し、その締結額を1150円以上とすることをめざしているが、組合の中で非正規雇用を正規に転換させていくといった取り組みを進めたい。また規模間格差については取引の適正化が重要だ。今は原油価格も上がり、材料費が高騰しても価格に転嫁できないという問題もあるが、製品価格に転嫁しないと中小が賃上げをすることは難しい。物価が上がることに国民全体の抵抗感があったが、これも限界にきている。適正な取引をめざす中で人件費も上がるが、その代わり価格も上がることもお互いに認め合い、買う側も作る側も適正な価値のもとで取引していくことを進めていく必要がある。

連合三役に女性を登用したい

Q・女性組合員のリーダーを増やすための取り組みの成果と今後の課題は。

A・今期は連合の副会長が2人に増えている。今期は私が会長になったが、意思決定の場に女性が増えていることは一つの成果だと思う。今後は、例えば会長代行は今2人いるが、2人とも男性だ。複数のところは必ず1人を女性にする。委員会の中にも必ず女性を入れるとか、常に女性が参加できる場面をつくっていかないといけないし、この2年間でしっかりとやっていきたい。

Q・女性を常時、上三役に登用していくにはどうするか。

A・連合の役員は「役員推せん委員会」で推薦が行われるが、まず2年後に向けて、役員推せん委員会の皆さんに女性の数などをしっかりと認識いただき、役員体制のあり方を検討してもらえればと思う。

Q・連合本部の三役候補者を構成産別の会長、委員長に限らず副会長、副委員長も候補者に入れてはどうか。

A・その点も役員推せん委員会の検討に期待したい。私も連合の副会長のときは産別の副会長だったが、連合会長になった。

Q・ということはすでに慣例化したと捉えてもいいか。

A・そう。すでにガラスの天井を打ち破ったので(笑)。

Q・連合は「労働者代表制」の推進を掲げている。非正規や未組織労働者を含む処遇改善などに必要な制度だと思うが。

A・進めたほうがよいと思う。労働組合は憲法で保障されているし、労働者代表制との違いはあるが、非組合員が圧倒的多数を占めるなかで、多くの皆さんを保護するためには労働者代表制は必要だと思う。そうした活動を通じてやはり憲法で保障された活動をしっかりとやりたいということであれば正式に労働組合をつくって一緒にやればいいわけだ。働く人にとってはよい制度だと思う。

「労働者代表制」の法制化を任期中に実現したい

Q・従業員公正代表義務を本来なら労働組合が果たすべきだが、今回の連合方針は各産別で公正代表義務を果たしているのか点検活動をすることになった。それを契機に労働者代表制の必要性を共有することにもつながるのでは。

A・まさしくそうだと思う。

Q・未組織労働者や非正規労働者にも恩恵がある。会長の任期中に法制化を実現できそうか。

A・がんばっていきたいし、ぜひ実現したいと思う。一方、組織化は一生懸命に取り組み、少し増えてきてはいるものの、まだ連合結成当時までは戻っていない。今のコロナ禍の状況がどこまで続くのかにもよるが、雇用情勢の悪化に伴い組織率が低下する可能性もあるだろう。そうした意味では危機感を持っているし、労働者代表制の実現に向けてしっかりとやっていかないといけないと思っている。

(聞き手、まとめ=溝上憲文幹事)

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