関西支部発

障害者就労の現状と課題 第46回総合リハビリテーション研究大会報告

2025/04/28

 
支部代表・森田定和(特定社会保険労務士)
(支部通信第44号=25年1月号より転載)

公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会主催の、「障害者就労の現状と課題~近未来のために」をテーマにした第46回総合リハビリテーション研究大会が、昨年12月20日(金)、21日(土)の2日間にわたり山村雄一記念ライフホール(豊中市の千里ライフサイエンスセンター5階)で開催され、参加した。
後援は、内閣府、厚生労働省、文部科学省、国土交通省、経済産業省、(福)全国社会福祉協議会、(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構、日本障害フォーラム、(公社)日本リハビリテーション医学会など22団体に及ぶが、社労士関係の全国社会保険労務士会連合会とか大阪府社会保険労務士会の名は見当たらない。

大会趣旨は、開催要項によれば「障害者の就労について、その歴史的経緯や国内外の情勢を踏まえて現状の到達点を明らかにするとともに、総合リハビリテーションを追求する上での課題を整理」し、「今大会では特に、高次脳機能障害者への就労支援と、障害種別を超えて教育から就労への円滑な移行に関わるシンポジウムを開催し、各地での総合リハビリテーションの推進に資することを目指す」。また、「福祉的就労や精神障害者の就労支援に関するセミナーも企画」、「大会を通して、障害者就労の近未来を共に展望できるものにしていきたいと願っている」というもの。   

参加者数は、主催者側が当初予定していた200名を大きく超える260名で、大盛況のうちに終えた。

1日目の概略及び若干の感想は、以下のとおり。

基調講演「障害者の就労を巡って、今何が問われているのか」 講師の栗原久・(一財)フィールド・サポートem.代表理事(日本福祉大学実務家教員、本大会実行委員長)が話された一部を以下、紹介する。

戦後80年になろうとしている障害者福祉・労働法制の流れについて説明された。1960年の身体障害者雇用促進法は1955年のILO第99号勧告を受けて出来た法律。我が国の福祉・労働法制度は、こうした国際的な動きと密接に関連があり、次の鼎談テーマの障害者権利条約は、その最も重要な一つだ。

その後1976年には身体障害者の雇用義務化がスタートし、1987年には法律の名称が障害者雇用促進法に変わり、その後、知的障害者の雇用の義務化、精神障害者の雇用率算定と続くが、ここまでは雇用率、量的拡大の流れが主だった。

一方、国際動向では2006年に障害者権利条約が国連で採択され、日本は2007年に署名し、7年後に批准。2011年に障害者基本法が改正され、それを受け、2013年には差別解消法が出来、同時に雇用促進法も改正され、それぞれ差別の禁止と合理的配慮が義務化された。この流れは、雇用の対象の拡大、率のアップだけではなく、質の向上が問われている時代に入ってきたことを意味する。この流れと合わせて、2018年には精神障害者の雇用義務化がようやく行われ、その結果、法定雇用率が2026年には民間2.7%という大幅なアップにもなることになっている。そして、2022年の雇用促進法の改正では、「雇用の質の向上のための事業主の責務の明確化」が規定されたのが、この間の法律を中心にした流れだ。

続いて栗原氏のほか、尾上浩二氏、酒井京子氏による鼎談「権利条約、就業支援ネットワークの視点から、大会テーマを深める」。鼎談を聴いた私は障害者雇用の量的拡大策としては、大阪府社会保険労務士会がこの間取り組んできた地方自治法施行令第167条の10の2に基づく入札や指定管理者の事業者選定において、枚方市などが実施しているような価格以外の項目に「障害者雇用」などを加えた総合評価方式を全国の自治体に採用させる方法も有効と考える。 また、高次脳機能障害者などへの就労支援を巡るシンポを聴いて、日頃、就業規則の休職・復職規定の作成・運用、職場復帰の受け入れ態勢の構築、職務遂行能力の評価と処遇などに携わっている社労士の参加があれば、議論はより充実したと思う。

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