関西支部発

2023年度総会・労働遺産認定証交付式・研修会など開催

2023/07/10

 
支部通信・2023年6月号より転載

「巻頭言」

四天王寺(荒陵山敬田院)は593年に聖徳太子(生前は厩戸王)が造立し始めたとされる日本最初の官寺で、救世観音が本尊です。ここは敬田院の他、施薬院、療病院、悲田院などの福祉事業施設も備えた寺でした。578年、厩戸王に百済から招かれ、造立を担った宮大工の金剛により創業された金剛組は今も寺社建築を担っています。

皇位継承の争いの政情不安なさなか、同年に我が国最初の女帝として推古天皇が即位。甥の厩戸王が皇太子として摂政となり、蘇我馬子と共に憲法一七条制定などの政治を行いました。

時代は変わり1914年、第一次世界大戦に日本が参戦。同18年にはシベリア出兵、米騒動など世情が厳しいなか倉敷紡績等を営む大原孫三郎が、四天王寺近くの石井記念愛染園で保育所や夜学校を開設して親の就業を支援しました。同所に19年に大原社会問題研究所を設立、翌年に天王寺区伶人町に移転。36年の東京移転時に大阪府に譲渡された土地に、認定労働遺産の大原社研跡地プレートや碑が残っています。(森田定和支部代表)

四天王寺の金堂・五重塔(大阪市)

Ⅰ.関西支部総会

2月18日(土)午後1時半から午後2時半まで、エル・おおさか(大阪府立労働センター)本館5階会議室501号室において、日本労働ペンクラブ関西支部2023年度総会を開催しました。新型コロナウイルス感染症の発生から4年目に入り、特段の事情がない限り5月8日には第5類に引き下げるとの政府決定が行われるなか、昨年に続き、会場とZoomの併用開催としました。参加者は13名(Zoom参加1名、入会検討中のオブザーバー1名を含む)。本部からは、西澤代表代理に会場までお越し頂きました。今年も阪本誠一会員(新幹事)がZoom操作を担当しました。

谷口勉幹事の進行により開会、森田定和支部代表の挨拶に続き、西澤本部代表代理から、事前に配布した植木隆司本部代表の「ご挨拶状」に触れながら、「①組織の活性化、②加入していて良かったと思える魅力ある組織作り、③専門家としての発信力を活かす」の三点に重点を置いた組織として活動することを強調され、ご挨拶頂きました。

その後、慣例により、森田支部代表が議長に就任し、議事が進められました。第1号議案「2022年度活動報告・会計報告・会計監査報告」について森田支部代表、今村会計幹事が説明、山下会計監事から監査報告があり、満場一致で承認されました。続いて第2号議案「関西支部運営要綱の一部改正に関する件」、第3号議案「関西支部の役員改選(案)に関する件」、第4号議案「2023年度活動計画(案)・会計予算(案)」について、森田支部代表、今村会計幹事から説明があり、満場一致で承認されました。関西支部運営要綱に沿って、支部代表代理及び事務局長を配置し、幹事の担当制の確立を通じた組織強化のため、新たに幹事3名を増員し、新役員体制は次の表のとおりとなりました。

2023-2024年関西支部役員体制
役職名 名 前 担 当
代 表 森田 定和 統 括
代表代理 藤木美能里 支部通信編集
事務局長 谷口 勉 事務局
幹 事 今村 武司 会員交流
小野 順子 支部通信発送
狩谷 道生 研 修
小野山真由美 会 計
阪本 誠一 通信技術
梅谷 幸弘 支部通信編集
会計監事 山下 嘉昭 労働遺産
顧 問 埋橋 孝文 第2代支部代表
畑中 清博 第3代支部代表
玉泉 孝次 第4代支部代表

(藤木美能里)

20230710a.jpg森田支部代表

20230710b.jpg西澤本部代表代理

Ⅱ.労働遺産認定証交付式

2023年度関西支部総会終了後、引き続き、午後2時40分から労働遺産認定証交付式を開催しました。1月13日に開催された本部の労働遺産認定証交付式に参加出来なかった関西の団体に対し、西澤代表代理から認定証等が交付されました。
認定証交付式は、労働遺産認定委員・労働遺産認定PT委員を務められた谷合佳代子支部会員が進行役を担当、次の労働遺産について解説されました。

  1. 「わが国における「8時間労働制」の実施発祥の地」
  2. 「戦前実業家の労働理想主義による労働環境改善と社会貢献(大原孫三郎等)」

その後、労働遺産認定委員会委員長の西澤代表代理から、①に関する認定遺産「怠業中松方社長對職工側委員會見録並営業時間及賃銀改正ニ關スル顛末」川崎造船所[編][1919]を所蔵する神戸大学社会科学系図書館、大阪公立大学杉本図書館の2大学図書館に、②に関する「労研」と「大原社研」創設期の資料と遺稿等については、石井記念愛染園発祥の地「石碑」について社会福祉法人石井記念愛染園(大阪市)に、労働遺産認定証と認定文を刻んだトロフィーが贈られました。

②の石碑は、大原孫三郎氏が1917(大6)年(財)石井記念愛染園を設立したことから石井記念愛染園創立100周年に発祥の地に顕彰碑を建てたものです。

交付式記念撮影
(左より(社福)石井記念愛染園の堀則仁法人本部事務局長補佐、神戸大学の櫻井徹・附属図書館長、西澤代表代理、大阪公立大学の西田正宏・図書館機構長、神戸大学の矢野真弓・附属図書館情報管理課長)

Ⅲ.関西支部研修会

交付式終了後の午後3時15分から、関西支部研修会を開催し、「2023春闘・賃金引き上げの考え方、闘い方~連合及びJAMの方針を中心に~」をテーマに、JAM大阪オルガナイザー育成アドバイザーの狩谷道生支部会員(幹事)にご講演頂きました。
講演終了後の質疑に対し的確に回答頂き、午後4時55分に終了しました。大変有意義な研修会でした。

【講演主旨】

今春闘は4%という40年ぶりの物価上昇、インフレの中で闘われる春闘となった。連合は久々に5%の要求を掲げ、傘下の各産業別労働組合もその趣旨に沿った要求を組織し、現在労使交渉の真っ最中である。連合及びJAMの方針を中心に今春闘における労働組合の考え方を紹介したい。

1.賃金問題の基本事項

賃金とは労働力商品の価格であり、労働力の再生産費である。そして、賃金闘争(問題)の基本的課題は個別賃金の決定基準を適切・公正なものにし、組合員一人ひとりに合理的で納得できる賃金を確保することである。これこそが「労働力商品の一括販売の組織」としての労働組合の役割である。労働組合はこの役割を遂行するため「基準」を設定し、それによって「規制」しようとする。

2.2023春期生活闘争の賃金引き上げ方針

今春闘において連合及びJAMは以下の方針を掲げた。

(1)連合
①賃上げ分3%程度、定昇相当分(賃金カーブ維持相当分)を含む賃上げ5%程度
②目標水準:
35才:290,000円、
30才:243,750円 他、略

2)JAM
《賃金要求》
①賃金構造維持分+9,000円基準(ベースアップ)
②JAM一人前ミニマム基準
――(機械金属産業の一人前労働者の最低水準)

(賃金全数調査より、第1四分位数を目安に設定)他、略

《闘い方》
①統一闘争(統一要求2/21、統一回答3/14・15、統一交渉3/22・23・28・29、統一妥結3月内)――地区協議会を軸とした共闘体制
②スト権は有効に活用、4月にもつれ込んだ単組は4月の山場でスト権確立、闘争体制へ

3.JAMの賃金政策

JAMの賃金政策は、個別賃金要求だ。個別賃金要求とは平均賃上げ要求のような「上げ幅」の要求ではなく「水準」の要求である。すなわち、「代表銘柄(年令、勤続、職種、熟練度等)」の組合員の賃金水準を決定することを通じて、個々の全組合員の賃金水準を決定してゆく方式である。「代表銘柄」とは「標準労働者(高卒直入者)」もしくは「一人前労働者」の分布実態が形成する「モデルカーブ」の起点となる30才もしくは35才労働者を指す。「代表銘柄」の水準を基準に、是正とベースアップにより各単組の「モデルカーブ」を「JAM一人前ミニマム基準」に到達させることをめざすことが具体的要求となる。

これにより「JAM一人前ミニマム基準」以下の「一人前労働者」を無くしていく。これは同基準を「社会的公正労働基準」として確立することを意味する。すなわち、賃金水準の 企業の枠を超えた社会的な横断化――賃金決定の社会化を図ろうとしているのだ。こうして「同一労働同一賃金」の実現をめざしているのである。これは、「同一産業において同一職種、同一熟練度であれば同一の賃金」であることを意味する。「同一の労苦に対する同一の支払い」という"団結の基礎"となるこの合い言葉はイギリス労働者の叡知が生み出したもので、長きに亘って国際労働運動のスローガンであった。

4.いくつかの具体的実例

熱弁される狩谷道生講師

5.ドイツの賃金制度

JAMの賃金政策の源流はドイツの協約賃金だ。ドイツの機械金属産業においてはIGメタル(金属産業労働組合)という強大な産業別労働組合が企業横断的に組織されている。
経営者もゲザムトメタルという経営者団体に組織されており、賃金を巡る団体交渉は、両組織の代表が、ドイツを7つの地域に分けて、企業の枠を越えて行う。そこで決定された賃金水準は地域のほとんどの金属産業労働者に適用され、それ以下で働かせることはできない。
労働者は熟練度に応じて、不熟練、半熟練、熟練、有資格熟練、高度熟練等に格付けされる。
格付けは、客観的な基準が協約化されており、経営が一方的に行うことはできない。交渉は標準的な熟練度の労働者(7ランク目が多い)の賃金水準を巡って展開される。熟練ランク毎の比率(賃率)が決まっており、基準となる熟練ランクの賃金水準が決まることにより、各人の賃金水準も決まる。これがジョブ型賃金だ。この仕組みを日本の実情に具体化したのがJAMの個別賃金政策である。
(講演主旨は講師の狩谷道生関西支部幹事に作成頂きました。)

講師の狩谷さん(前列右より2人目)を交え記念撮影

Ⅳ.関西支部懇親会

午後5時15分頃から、会場を薩摩ごかもん天満橋総本店に移動し、懇親会を開催。西澤本部代表代理を含め9名が参加し、大いに盛り上がりました。(藤木)

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