関西支部発

2024年度総会・研修会・懇親会開催

2024/07/01

 
(支部通信第42号=24年6月号から転載)

Ⅰ 関西支部総会

本部ご挨拶(溝上事務局長)

元旦に起きた能登半島地震の復旧状況が心配されるなか、2月11日(日)午後1時半から午後2時50分まで、エル・おおさか(大阪府立労働センター)本館5階研修室3において、日本労働ペンクラブ関西支部2024年度総会を開催しました。
新型コロナウイルス感染症が昨年5月8日に第5類に引き下げられた後も感染が心配され、オンライン併用も考えていましたが、全員が会場参加で開催することができました。参加者は17名(関西支部会員16名、本部1名)。本部からは、溝上憲文事務局長に会場までお越し頂きました。

谷口勉幹事の司会により開会。

森田定和支部代表は、労ペン国際交流事業で台湾を訪問した際のエピソードにも触れながら挨拶しました。 本部の溝上事務局長からは、最初に、1月11日(木)に開催された本部総会、2023年の本部事業についてご報告がありました。次に、事前に配布した植木隆司本部代表の「ご挨拶状」の中の、2024年の労ペンの活動の3本柱の第1として、これまで徐々に盛り上がってきている労働遺産認定事業の意義について、より一層盛り上げていきたいと挨拶されました。

1月25日に春闘がスタートし、政労使一体の賃上げにより若年層には手厚くなっているが、その裏で、日本型ジョブ型が進み、賃金が固定され、今後賃金が上がらない層が出てきて、格差が広がっていく問題を注視していくべきことを強調されました。
最後に、植木代表のご挨拶状の第3番目の柱、労ペンHPの「特集・戦争を考える」について読み上げられ、ご挨拶を終えられました。

その後、慣例により、森田支部代表が議長に就任し、議事が進められました。

主催者挨拶(森田関西支部代表)

第1号議案「2023年度活動報告・会計報告・会計監査報告」について森田支部代表、小野山会計幹事が説明し、山下会計監事から監査報告があり、満場一致の拍手を持って承認されました。
続いて第2号議案「2024年度活動計画(案)・収支予算(案)」について、森田支部代表、小野山会計幹事から説明があり、満場一致の拍手を持って承認されました。  10分間の休憩をはさみ、研修会を開催し、その後、会場を京阪シティモール内の文蔵天満橋店に移し、17時15分から懇親会を開催しました。溝上事務局長もご参加下さり、13名の参加となり、和やかで有意義な交流の場となりました。

(藤木記)

本部ご挨拶(溝上事務局長)
主催者挨拶(森田関西支部代表)

Ⅱ 関西支部研修会

総会終了後、午後3時から午後4時45分まで、関西支部研修会を開催しました。
「官製ワーキングプアから見た地方公務員制度について-住んでいる街の市民サービスの質低下を防ぐために-」をテーマに、弁護士の小野順子会員(幹事)にご講演頂きました。

最初に、司会の狩谷道生幹事から、今回のテーマを選んだ理由について、2001年小泉内閣の時、「規制緩和・民営化・国家財政の縮減」が掲げられ、その中の民営化の一環として、50万人を非公務員化したことが始まりとなるとの説明の後、小野順子講師の講演が始まりました。講演終了後の質疑に対しては丁寧に回答頂き、午後4時45分に終了しました。公務員制度について考える上で、大変貴重な研修会となりました。

講演要旨

講師は、1989年4月から1999年7月まで箕面市役所に勤務。1996年4月から1999年3月の間は総務部職員課に配属され、最初の1年半、アルバイト職員の賃金計算や社会保険の得喪手続き等をしていた。その業務の中で、正職員とほとんど仕事内容が変わらないのに、アルバイト職員の給与は正職員の3分の1しかないことに疑問を覚えた。弁護士に転向した後は、ライフワークとして、官製ワーキングプア問題に取り組んでいる。

  1. 常勤職員の減少と、増え続ける非正規公務員
    公務員数が減少を続ける一方で、非正規化が進んでいる。令和2年の統計による会計年度任用職員数は622,306人となっている。その3割が一般事務職員、次いで、技能労務職員、保育所保育士が多い。男女比では女性が4分の3を占める。2021年1月の自治労パンフレットでは、学童指導員、消費生活相談員が9割以上、婦人相談員8割以上となっており、会計年度任用職員は行政サービスにおいてなくてはならない存在となっていると記載されている。
    一方、「地方公務員の臨時・非常勤職員及び任期付職員の任用等の在り方に関する研究会」報告書によると、公務を担うのは正規公務員(いわゆる「常勤職員」)が原則と謳われている。この原則と、実態との乖離が問題の根幹ではないか?
  2. 定員管理という名の人員(常勤職員)削減政策
    1. (1)国による定員管理指導
      1960年代に地方公務員が急増した。1968年「行政機関の職員の定員に関する法律(総定員法)」が制定され、国家公務員における計画的な定員管理の実施が始まる。地方自治体に対しても、1975年「地方財政の運営について(S50.5.16自治事務次官通知)」により、国の定員削減計画(第3次)に準じた取組が要請された。これ以降、自治省(現・総務省)が定員管理調査を開始する。
    2. (2)行政改革による人員削減と「集中改革プラン」
      2004年12月24日「今後の行政改革の方針」が閣議決定された。2005年3月29日「地方公共団体における行政改革の推進のための新たな指針の策定について」を発出し、定員管理の適正化について、1999年から2004年まで、各団体の努力により4.6%純減しているが、過去の実績を上回る総定員の純減を図る必要があるとし、各自治体に「集中改革プラン」の公表を義務付けた。特に、定員適正化計画については数値目標を掲げ、進捗状況を毎年チェックすることが求められた。
    3. (3)財政面からの人員削減
      2006年7月7日「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」が閣議決定される。地方公務員人件費については(略)さらなる削減努力を行い、5年間で行政機関の国家公務員の定員純減(5.7%減)と同程度の定員純減を行うことを含め、大幅な人件費の削減を実現するとされた。そして、各自治体の人事課・市町村課職員に対するヒアリング等を行うことで人員削減を推進していった。
    4. (4)定員管理の目標
      自治省(現・総務省)は、定員管理の目標として、①類似団体別職員数(1979年~)、②定員モデル(1983年~)、③定員回帰指標(2008年~)を策定し、地方自治体に提供した。「あるべき水準」ではなく、これに近づけるように削減せよというものではないというが、トップランナー方式により、削減できた自治体へは、地方交付税を増やすという政策がなされた。
  3. 非正規公務員の種類
    1. (1)2020年地公法改正前
      非正規公務員は、地公法の3条文により分類されていた。
      ①特別職非常勤 (地公法第3条第3項第3号)
      「臨時又は非常勤の顧問、参与、調査員、嘱託員及びこれらの者に準ずる者の職」
      ②臨時職員 (地公法旧第22条第2項及び第5項)
      ③一般職非常勤 (地公法第17条)
      地公法第17条は、任用についての条文ではあるが非常勤にも使われた。
      臨時職員については、最大一年の任期とされているが、自治体ごとにマイルールを決め、例えば1日、1か月、3か月等の空白期間を設けることにより、リセットされ、一からの任用とするような運用がなされた。
      地方公務員法が想定していない状況の広がりを国は問題視し、任用根拠の明確化、処遇改善のため、改正に至った。
    2. (2)2020年地公法改正後
      (1)の①②③の臨時、非常勤職員は、地公法改正により、2020年4月から会計年度任用職員制度が導課職員に対するヒアリング等を行うことで人員削減を推進していった。
    3. (3)定員管理の目標
       自治省(現・総務省)は、定員管理の目標として、①類似団体別職員数(1979年~)、②定員モデル(1983年~)、③定員回帰指標(2008年~)を策定し、地方自治体に提供した。「あるべき水準」ではなく、これに近づけるように削減せよというものではないというが、トップランナー方式により、削減できた自治体へは、地方交付税を増やすという政策がなされた。
  4. 非正規公務員の種類
    1. (1)2020年地公法改正前
       非正規公務員は、地公法の3条文により分類されていた。
      ①特別職非常勤 (地公法第3条第3項第3号)
      「臨時又は非常勤の顧問、参与、調査員、嘱託員及びこれらの者に準ずる者の職」
      ②臨時職員 (地公法旧第22条第2項及び第5項)
      ③一般職非常勤 (地公法第17条)
      地公法第17条は、任用についての条文ではあるが非常勤にも使われた。
      臨時職員については、最大一年の任期とされているが、自治体ごとにマイルールを決め、例えば1日、1か月、3か月等の空白期間を設けることにより、リセットされ、一からの任用とするような運用がなされた。
      地方公務員法が想定していない状況の広がりを国は問題視し、任用根拠の明確化、処遇改善のため、改正に至った。
    2. (2)2020年地公法改正後
       (1)の①②③の臨時、非常勤職員は、地公法改正により、2020年4月から会計年度任用職員制度が導入され、大部分がそちらに移行した。
  5. 会計年度任用職員への移行
    地公法第22条の2により、会計年度任用職員制度が規定された。更新はあくまでも年度内で、3月末を超えて、4月からも継続する場合は再度の任用となる。任用であって雇用ではない。
    「会計年度任用職員制度の導入に向けた事務処理マニュアル」が定められ、最新版はR4年12月23日に公表された。そのQ&Aから、問6-2「再度の任用が想定される場合であっても、必ず公募を実施する必要があるか」で、「例えば国の期間業務職員については、再度の任用を行うことができるのは原則2回までとしている」と記載があることで、施行後3年が経過した2023年3月時点で雇い止めが心配された。人手不足もあり、大々的な雇止めは発生しなかったが、不安定雇用という問題は残っている。
  6. 会計年度任用職員と労働基準法等の関係
    • 労働基準法 一部適用除外(地公法第58条第3項)
    • 労働組合法 全部適用除外(地公法第58条第1項)
    • 労働契約法 全部適用除外(労契法第21条第1項)
    • パート・有期法 全部適用除外(パー有法第29条)
    地公法第4条により、特別職非常勤職員は民間労働者と同じ扱いとなっていたが、会計年度任用職員制度ができたため、逆に制限を受ける結果となっている。また、労基法第2条の適用を受けないため、給与条例主義が適用となる。
  7. 会計年度任用職員の賃金
    地公法第203条の2により、非常勤職員、パートタイムの会計年度任用職員は、条例により期末手当が支給される。R6年4月からは勤勉手当も支給となる。
    地公法第204条により、フルタイムの会計年度任用職員は、条例により、30の手当のうちの13の手当を支給されることになったが、勤務時間を15分間減らす等の措置を取り該当しないようにすること等が行われている。また、2021年1月の自治労パンフレットから、会計年度任用職員の平均給与を見ると、最低賃金に近いことが見られる。
    会計年度任用職員制度が施行されたことで、任用根拠は明確になったが、処遇改善できたかというと必ずしもそうなっていないのではないか。
  8. 非正規公務員の任用問題(過去の判例)
    ①大阪大学図書館事件(H6年7月14日最高裁判決)。
    国家公務員の日々雇用職員の雇い止め。任用継続を期待することも無理からぬという特別の事情がある場合は、そのような謝った期待を抱いたことに対する損害賠償を認める余地はあるが、本件では特別の事情なし。
    ②国情研事件(18年12月13日東京高裁判決、上告棄却で確定)。附属機関の非常勤職員。一審では、権利濫用・信義則違反により地位確認を認めたが、高裁で敗訴。
    ③中野区非常勤保育士事件(H19年11月28日東京高裁判決)。特別職非常勤職員。期待権侵害に対する慰謝料を認めた。地位確認は否定。
  9. 会計年度任用職員の労働基本権
    ①一般職地方公務員(会計年度任用職員)には、労組法の適用がなく、地方公務員法によって一部の団結条件が保障されている。
    ②労組法の適用がないため、使用者に不当労働行為(団交拒否、不利益取扱等)があっても労働委員会に救済申立をすることはできないとされている。
    ③特別職は地公法の適用がないため、労組法が全面適用される。
    地公法第3条第3項第3号に該当する人が、会計年度任用職員になった場合、改正前に民間労働者と同様の法律が適用されていたのに、改正後は適用されなくなったことは、権利の剥奪との側面もある。
  10. 紛争解決機関としての人事委員会・公平委員会
    人事委員会、公平委員会の紛争解決に関する権限は、①勤務条件に関する措置要求の審査、②不利益処分の不服申立ての審査(審査請求)、③職員の苦情処理となっている。
    会計年度任用職員も使えるが、「職員」が使える制度のため、雇止めにあった後は職員でなくなり申し立てできない。また、在任中に申し立てても退職した途端に却下となる。加えて、申し立てることで、逆に目立ってしまって雇止めに遭わないか不安があり、利用を躊躇する実態がある。
  11. 非正規公務員の未来
    2019年12月から2020年7月に開催された「地方公共団体の定員管理の在り方に関する研究会」における西村実香委員(成蹊大学法学部教授)が次の意見を述べていることが的を射て参考になる。
    1. (1)平成以降の定員管理は削減努力の歴史であり、①財政からの財源圧力、②能率信仰による圧力、③小さな政府論からの圧力、④ポピュリズムによる削減圧力という4つの削減圧力があった。
    2. (2)理想は職に人を当てはめていくべきだが現実にはそうなっていない。
    3. (3)職を軽視すると、類似団体の定員数の相場や人口比で職員数が妥当かどうかを考えるため、今後人口減が進むと、そのまま定員削減圧力になってしまい、人口減に合わせて削減することになってしまう。このやり方では、今後限界を迎えることになる。
    4. (4)限界を克服するために定員管理がどうあるべきかについて、集権的な体制、分権的な体制という視点から考えてみたい。
  12. 非正規公務員の未来(まとめ)
    今後ますます公務員の非正規化は加速し、その先は民営化されていくと考えられる。「任用」を理由に民間労働者と別異の扱いを是認してきた司法判断はもはや根拠がない。
    非正規公務員が、自治体業務の最前線を担うことの意味について考えるべき時に来ている。休みを取って、自費で研修に参加し業務に必要な資格を取得し、日々研鑽に励んでいる非正規公務員がいる。一方で、正規公務員は現場に出ることがなくなり、現場を知らない正規公務員が増えていることが、市民サービスの低下につながっている。正規公務員削減の結果、常勤職員自身も疲弊している。
    島根県隠岐郡海士町の半官半X推進活動、箕面市の任期の定めのない短時間勤務職員制度案等、自治体でも、問題解決に向けて、様々な取組が始まっている。
    現在の地方公務員は、メンバーシップ型の最たるものといえる。今後、ジョブ型の推進や、行政の地域化、地域に残って働ける人が増えていくように雇用の場を創出する取組で、地方創生につなげていくことが重要になるだろう。

(藤木記)

わかりやすく話される小野順子講師

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