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働き方改革考

2018/12/26

 

裁量労働者に「休み方改革」を

小林 良暢

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厚生労働省の有識者会議が、裁量労働制の議論を再開した。まず、働き方改革関連法で撤回を余儀なくされた企画型裁量制の仕切り直しの調査を実施するという。

裁量労働制の法制化は1987年に遡るが、画期は1998年の労基法の大改正で、「専門型裁量労働」と「企画型裁量労働」に区分され、常設の「労使委員会」の設置が義務づけられた。また健康確保措置や対象者本人の同意など労働者の意向を重視する枠組みが導入されて今日に至っている。

この制度は、出発当初から長時間労働の巣窟であった開発技術者とシステムエンジニアの「自律的で創造的な働き方」を通じて時間外労働を削減することを目的にしていた。

この2業務が専門型裁量対象19業務に占める比重は圧倒的に高く、それを担う電機業界とりわけ電機労連の組合員構成は、組合員が技能職を中核とするブルーカラーから技術職等のホワイトカラーへの構造的なシフトを終えて、当時の傘下組合員の7割はホワイトカラーという状況に達していた。

裁量制に制度的欠陥

しかし、裁量労働の現場での労働時間の短縮はうまくいっていない。裁量労働制は1日単位のみなし労働で、しかも法定休日における労働はみなし労働時間に含まれないという制度的欠陥があり、残業の抜け道を許したこと、また上司が仕事を振る時には「できる」人を指名する傾向があり、もともと有能で残業が多い者を推薦し、残業が多いのが当たり前の「残業集団」を作ってしまったためである。

三菱電機の過労自死認定について、厚労省からの野党合同ヒアリングで、「対象拡大の議論はやめるべき」との意見が続出したが、この考え方は裁量労働の現場感覚とはずれている。

連合総研の推計によると、裁量労働者は104万人に達している(2013年)。日立製作所の裁量資格者は1万人を超え、一般社員の50%が裁量適用者だ。またトヨタ自動車も入社10年目前後の係長級の事務・技術職7800人を裁量労働の対象に広げるという。

日立労働組合は、2008年から裁量労働の調査を継続している。08年には、裁量労働制で仕事と生活の調和が取れているかの問いに、「そう思う」と「ある程度そう思う」を足すと31%だったが、直近の調査では「そう思う」13.3%、「ある程度そう思う」41.3%と前向きな評価が54.6%に増えた。制度の運用が改善し、定着しているとみていい。

また、関西大学の森田雅也教授の調査によると、「裁量労働制の適用者として働き続けたい」との設問に、「その通り」とする支持が高く(5段階評価で3.49)、「適用者からはずれたい」(2.58) を上回っている。

政労使への注文

最後に、これからの裁量労働制について政労使に注文したい。

①有識者会議の調査は、裁量適用の前と後の残業時間を調査し、裁量労働者の仕事・生活時間を深掘りして調べることである。

②経営側は「だらだら残業」というが、「だらだらさせないのが管理職の仕事だろう」と言いたい。これからは「働き方改革」から「休み方改革」へ、政労使は協力して有給休暇の計画取得運動に取組んで欲しい。

③裁量労働の由々しき状態を許したのは、労働組合の問題だ。労働組合の支部の委員長や書記長の話を聞くと、工場の組合員の500人位までなら顔と名前が一致し、1000人までは顔が解るという。この現場力を使って、裁量労働者の残業の日常的チェツクと産業医への検診運動を強力に取組んでもらいたい。

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