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働き方を自ら選択できる社会に 同一労働同一賃金 日本でも導入可能

2018/02/28

 

――加藤勝信厚生労働大臣インタビュー

今国会の最大の焦点のひとつである「働き方改革」について、加藤勝信厚生労働大臣に改革の狙いや進め方などを聞いた。改革への思いについて加藤厚労相は「大事なことは働く人が自分の状況に応じて自ら働き方を選択できる社会にしていくことだ」と述べた。(2017年12月22日、厚労省で。聞き手・稲葉康生、写真・麻生英明)

――まず働き方改革の狙いから、お聞きしたい。

厚労相 安倍政権の発足時、経済はデフレ下で停滞しており、デフレを脱却し経済を回復基調に乗せていこうとしてアベノミクスを実行し、かなり効果が出てきた。しかし、少子高齢化という壁が立ちはだかっており、その克服を図っていくためには、一人一人が力と思いを十二分に発揮できる社会、まさに一億総活躍社会を作っていく必要がある。

子育てや、親の介護をしながら働ける環境を作ることにより、働き続けることや新たに働き始めることが可能となる。それが働き手の確保や生産性の向上にもつながり、経済が成長し、将来への展望が開け、若い人たちが結婚し、子供を持ちたいと思える状況が生まれていくという流れを作ろうと考えている。 そのために最大の挑戦とも言える働き方改革を進め、多様な働き方を可能とする社会を作っていく必要がある。具体的には、2017年3月に長時間労働の是正、同一労働同一賃金などを柱とする働き方改革実行計画を策定した。

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――改革案では正規と非正規雇用労働者の格差是正が狙いだとあるが、具体的な進め方は。

厚労相 非正規雇用で働く人の割合は全雇用者の40%弱だが、そのうちいわゆる不本意非正規は16%くらい。正規として働きたい人はそれが叶うように、例えば研修の場を設けるなど、正規で働ける道筋をしっかりと作っていく必要がある。他方、様々な制約条件があることから非正規での働き方を選んでいる人も多くいる。正規と非正規の待遇の格差は欧州に比べて大きいこともあり、不合理な格差を是正し、働く人が納得した中で多様な働き方を選択できるようにしていきたい。

元々、日本は職能給で欧州のような職務給ではないので同一労働同一賃金は難しいとの声があり、実は私たちもそう認識していたのだが、独、仏の実情を調べたところ必ずしも同じ仕事をしているから同じ賃金ということではなく、労働の質、勤続年数など様々なことを勘案して合理的かどうかの判断をしていることが分かってきた。

そうであれば、日本の雇用慣行の下でも同一労働同一賃金の考え方を取り入れることができると考えた。そういう考え方に立って①パートや派遺、有期雇用労働者にかかわりなく不合理な待遇差の是正を図ること、②待遇差に関する企業の説明義務、③行政による履行確保措置及び裁判外紛争解決手続(ADR)を整備して労使紛争を解決することなどを内容とした法案要綱をまとめた。

――今回の改革については、労使間の訴訟が増える、使用者の脱法的な法規制逃れが増えるのではないかなどの指摘がある。労使双方への周知が大事だと考えるが。

厚労相 周知をしっかりと図っていくことは重要であり、必要な準備期間を確保していく必要はある。また、欧州がそうであったように日本でも判例の積み重ねによって精緻な形にしていくことになろう。最初からそうはいかないので、昨年、「同一労働同一賃金ガイドライン案」を公表し、具体的なイメージを示した。改正法が国会で通れば、今度は労働政策審議会に諮った上で、法律に基づくガイドラインを作ることになる。

――労組からは働き方は労使自治の問題であり、まずは労使合意が前提となるのではないかという声がある。

厚労相 改正法案においても、もちろん労使の話し合いが大前提だ。しかし、間題が起きて労使間で解決できないとなれば、訴訟になることもある。そうした中で判例などの積み重ねの下で新しい日本型の同一労働同一賃金の姿が作り上げられていくと思う。

――同一労働同一賃金が実現すれば、正規と非正規を区別する必要がなくなるのでは。

厚労相 全員がフル夕イムでの働き方を希望するということにはならないので、雇用形態としての正規・非正規の区別がなくなる訳ではないが、大事なことは働く人が自分の状況に応じて納得できる働き方を自ら選択できる社会にしていくことだ。

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