特集

戦争回避のための世界的ガバナンスの確立・強化を
―「地球と人類をこよなく愛する国家」の共同体であるために

2024/09/09

 
平野文彦

はじめに

自国の存続・拡大を目的とした、他国への武力による侵攻と焦土化、インフラ破壊、領土の併合・奪還、人質の獲得・解放などのための国家間の争いが後を絶たない。双方が多数の兵員と多額の国家予算を注ぎ込んで、後に残されるのは荒廃した国土と、"国民が一丸となって"といった政治スローガンの下で多大な犠牲を強いられた多数の一般国民。国外への移住 を迫られた民間人の悲惨さも極まりない。

双方が、勝敗の決着するまで死力を尽すことになる国家間の戦争は、一部の特需産業に一時的繁栄をもたらすことはあったとしても、そこに働く人々が豊かさを手にしたとは思えない。人類世界全体にもたらした経済的・非経済的損失は計り知れない。われわれは人類は消耗戦の愚かさをすでに知ってきたはずである。

AI(人工知能)が様々なソリューションの手段として駆使される時代が急速に進行しているなかで、国家と人類が受ける緊張と脅威、そして損傷と犠牲などを、できるだけ早期に発見し、原因を探索し、被害を最少化するための社会システムを構築することは、相当に容易になってきているものと推測Bできる。

筆者の専門は、「ビジネス社会における組織と人間のマネジメントの問題」。ビジネスの先端分野では、人類に一層の豊かさをもたらすためのガバナンスの下でのマネジメントがすでに定着している。それにも関わらず、現代において、二国間の勢力争いの戦争が長期におよび、兵士に多数の犠牲者数が積み上っているという現実がある。"領土獲り"の戦争に注ぎ込まれる有限の地球資源とかけがえのない人的資源は、そのほとんどが"破壊的で非生産的に"消耗されていく。

事業経営の分野では、人が持つ「時間」さえもが、すでに"生産資源"としてのマネジメントの課題となっている。しかし、地球上では戦争抑止のための有効なガバナンスは未だ不十分。真に無念に思うものである。

人間が住む地球上には、地球資源と人的資源のエネルギーを振り向けるべき先はまだまだ多い。人類に容赦なく襲いかかる地殻変動や火山の噴火による大地震・大津波、ほぼ定期的にやってくる台風・ハリケーンに加えて、地球温暖化、疾病・感染症の拡大などと全知をあげて戦わなければならない。核の脅威、高齢化の進展に伴う様々な社会課題にも直面している。

このように見てくると、戦争は人類の活動のあらゆる面において最大の取組テーマであることを忘れることはできない。戦争という大問題に真剣には向き合ってこなかった自身を、今になって恥じ入るものである。しかし、明快な結論を急がねばという焦りもある。「戦争抑止」の一助になることがあればという思いで、若干の考察を綴ってみた。


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