2024/09/30
労ペンが、2016年9月に実施した「モンゴル訪問団」で、現地通訳をしていただいた新モンゴル小中髙一貫校学校校長(当時)のナランバヤルさんが、6月の選挙で、国会議員に当選し、このほど、教育大臣に抜擢された。労ペンとしてもお祝いする。現地で、訪問団の世話人をしていただいた穴山洋さんが現地に飛んでインタビューし、寄稿していただいたので、ご紹介します。
ナラン氏・インタビュー
Q①・6月のモンゴル総選挙で初当選され、人間党という少数党にもかかわらず人民党・民主党と大連立を組んで、いきなり教育大臣に起用され、非常に驚きました。まずこの選択の理由を語って下さい。
=A①
私が人間党(HUN)に入党したのは2019年、私の政治信条は多党制です。モンゴルは米国のように二大政党による政権交代ではなく、ドイツやEU諸国のような多党制が言論保障のうえで役立つと思います。国会は民主主義を保障するもの、モンゴルは民主主義国とは言えないロシアと中国に挟まれている中で独立を貫く、このためには国会の中で多くの政党が活動していることが望ましいと思います。人間党に入党して5年間地道にやってきました。
Q②・労働ペンクラブは2016年9月、モンゴルを視察。その際に大兄が校長を勤めていた「新モンゴル学園」を最初に訪問しました。そのためクラブの面々の関心も高いものがあります。一言、メッセージを。
=A②
皆さんのことはよく覚えています。稲葉団長、長谷川事務局長、みなさんが大変熱心に勉強されていたことが印象的です。しかもモンゴルに深い関心を持ち、心から私達に接していただきました。その姿勢に感銘を受け、皆さんの意欲を学ばなければと思いました。その時は大変お世話になりましたし、労ペンクラブの報告書も興味深く読ませていただきました。
Q③・奥さんのトルさんは今、日本語学校を経営しています。留学中に知り合い帰国後は日本語教育に取り組まれましたが、選挙出馬には反対されませんでしたか。
=A③
実は2020年の国会議員選挙が最初の挑戦でしたが僅差で敗れました。政治へ身を献ずることに対しても、いつもトゥーラは支えてくれました。「目指しているなら、最後まで貫け」と妻がサポートしてくれなかったら議員にはなれなかったでしょう。もちろん人間党の仲間の選挙支援がなかったら当選できなかったと思います。
Q④・2段、3段飛びでモンゴル政府の一角を占めることになりました。ロシアと中国に挟まれ、国としてどういう路線を歩んでいくのかも考えないといけないのでは?
=A④
まず民主主義を貫く事です。それが一番大切。モンゴルを取り囲む地政学的な環境は悪化してきました。ウクライナの戦争があり、ロシアや中国からの圧力もいろいろな形で表面化しています。その中で遊牧文化を国の根幹にし、しかもロシア・中国といい関係を保ちながら第三の隣国と言われる民主主義でかつ経済大国ともうまく付き合っていかなければなりません。露中両大国に挟まれた中で日本をはじめ米国、ドイツやEU、東アジアのASEANなどとの連携も考えなくてはならない。「出口」が欲しいわけです。米国との間に直行便を飛ばすなり、各方面と人的交流を盛んにしたいと思っています。
Q⑤・その意味では日本式教育を取り入れた新モンゴル学園の意味は非常に大きいのでは?
=A⑤
私は2020年に新モンゴル学園の校長を退きましたが、今度の選挙で日本留学経験者の国会議員が10人位に増えました。かなりの数です。私達が中心になって両国関係をもっと発展させたい。新モンゴル学園から国を背負っていく政治家や公務員がたくさん出てほしいですね。日本留学後に日本で経験を積んでからモンゴルに帰国する人が増えました。全員に戻ってきてほしい、国づくりに励んでほしい。私はその環境づくりを政治の中でやっていくつもりです。
Q⑥・新モンゴル学園と日本の交流はかなり活発だと思います。具体的には?
=A⑥
校長退任後の最近のことは詳細に把握していませんが、コロナの影響でかなり縮小したものの、2020年後半からは復活させつつあると聞いています。新モンゴル学園の卒業生の私の息子は日本の国際医療福祉大学で勉強しています。3年生です、いい医者になってほしい。新モンゴル学園で日本語を勉強していましたが、学んだ知識や経験が大変役に立ったと聞いています。モンゴル医科大学と国際医療福祉大学の提携が若者の役に立っているのを見てたいへん喜んでいます。今は20人近くのモンゴル留学生が同大で勉強していると聞いています。
Q⑦・教育だけでなく、経済の「日蒙交流」も進むのではないですか?
=A⑦
まずは人づくり。たくさんの日本留学組がいるので彼らが中心となり人的交流が盛んになってほしい。国レベルの蒙日関係は順調に発展していますが民間の直接投資が伸び悩んでいます。企業の投資、機関投資家、個人投資家が増えてモンゴルの経済が発展し、相互に利益を上げる関係の構築を願っています。露中に挟まれている地政学的特徴から見て日本の直接投資が本当に望まれるところです。
日本の民間や政府関係者の話を聞いていると「モンゴルは政権交代の際に公務員も入れ替わり継続性がない。不安定になる。信頼の醸成を損ねる。」という声が大きいのです。私はこれに対しては「政権交代は政治家にとっては良いことだが、国家公務員制は変わらない。彼らの政策能力が高く政策が持続していれば投資が増えるのではないか。」と答えています。私は教育大臣に就任しましたが、公務員を大幅に交代させようとは思っていません。国家公務員法に則り、能力のある者が仕事を続けられるようにします。これが最終的に両国間の投資にも大きく寄与し、モンゴル政府への信頼回復にもつながると期待しています。
Q⑧・最後に、8年前に訪問した際、新モンゴル学園の玄関前には大きな台座があり、大兄が「本校から大統領、ノーベル賞受賞者、五輪金メダリスト、国連事務総長が出たら、その銅像を建てると説明されたことを覚えています。今回校長が......」
=A⑧
いやいや、それはとんでもない。まだ始まりの前ですよ。
(穴山氏注)ナラン氏が新モンゴル小中高一貫学校校長を務めていた2016年9月に労ペンクラブ訪蒙団(稲葉康生団長・27人参加)がウランバートルを訪問、ナラン氏と妻のトルさん(ちゃん)が3日間にわたる訪問先の視察や会議の通訳を務めた。ちょうど新年度を迎え、政権交代が重なり中央官庁が混乱状態に陥った中で、ナラン氏は官僚経験を生かして面会交渉をやり直すなど通訳業務をはるかに超える活躍ぶりで訪蒙団の日程消化に尽力してくれた。
ナランさん夫妻と穴山さん(左)
ナランモンゴル教育大臣
執務室でPCに向かうナラン大臣
