2025/02/10
第27代高校生平和大使神奈川県選出
フェリス女学院高等学校2年 萩有彩
私は、今年度、神奈川県の第27代高校生平和大使として活動している。ここでは、高校生平和大使の活動報告及び私の、若者としての平和を願う想いを共有させていただきたいと思う。
高校生平和大使とは、核兵器廃絶と戦争のない平和な世界の実現を目指して国内外で活動している高校生の団体である。第27代高校生平和大使として全国17都道府県から選出された23人の高校生が、今年主に活動しており、今までに広島研修、長崎研修、そしてスイス派遣を経てきている。今後は、韓国の高校生と交流して日韓のこれからについて考える対馬派遣、都内にある各国大使館を訪れ、意見交換を行う東京行動等が予定されている。そして高校生平和大使の活動は「高校生1万人署名活動」という署名活動と並行して行われている。高校生平和大使として、署名を集め、そしてそれをスイス派遣で国連に提出することが最大の使命である。
八月に行われた高校生平和大使のスイス派遣では、ジュネーブにあるUNODA(国連軍縮部)をはじめとした複数の国際機関に訪問し、スピーチ、意見交換等を行った。日本政府軍縮代表部訪問や、軍縮会議の傍聴で、自分たちが相手としている現在の核兵器をめぐる問題の大きさやその深刻さを痛感し、高校生平和大使の活動の意義を問い直すような場面も少なくはなかった。しかし、各機関での私たちの熱意のこもったスピーチを涙を流しながら耳を傾けてくださる方にもたくさん出会い、私たち高校生だからこそ持てる情熱や言葉の力、そして高校生平和大使の活動の意義を新たに発見することができた。私たちには、世界を一夜にして変えられるような劇的な力はないが、今しか持ち得ない情熱と、言葉の力を持っている。だからこそ、どんな逆境にあっても決して歩みを止めてはならない。それは、核兵器廃絶は理想ではなく、実現させなければいけない、私たち若者の未来であるからだ。
私が高校生平和大使を志すようになったきっかけは、高校一年生の時に学校行事で訪れた広島研修で得た二つの危機感にある。
一つ目は、核兵器の恐ろしさを実際の体験をもって語ることのできる被爆者の方々がいなくなってしまう、いわゆる「被爆者なき時代」が刻一刻と迫っているという危機感だ。その広島研修では、被爆講話を聞くプログラムがあったものの、お話をしてくださる予定だった被爆者の方の体調不良により、被爆証言を聞くことは残念ながら叶わなかった。今の若者世代が、被爆証言を聞くことのできる最後の世代と言われている中での出来事であったので、大変ショックに思うとともに、被爆者なき時代が迫っていることを強く意識するようになった。
実際、来年に戦後80年を迎えようとしている2024年度時点での広島・長崎の被爆者の方々の平均年齢は85歳を超えており、私たちが大人になる頃には、彼らなしで核兵器に関する議論を進めていかなくてはならない時代になっているだろう。そんな危機的状況、そしてその現状に無関心になっている自分への危機感を強く抱き、今こそ若者が核兵器廃絶のためた、平和のために、積極的に行動することが求められているという使命感をも覚えた。
二つ目の危機感は、世界各地での争いの犠牲となっている人々に対する、自分自身の「心の麻痺」に対する危機感である。広島平和記念資料館にある、親と疎開先の子どもとでやりとりされた実際の手紙の展示を見て、当時にも今と変わらない家族愛や生活があったことを認識し、連日のウクライナ、ガザの様子や犠牲者数をニュースで見ても、もはや何も感じないといった当時の「麻痺」してしまった自分自身の心に気がつき、はっとした。そして、核兵器によって犠牲となるのは、各国の指導者だけでなく、私たち市民であること、大切な人の命や自分の生活を奪う核兵器の廃絶を望むことは何ら特別なことではないということを理解した。
核抑止論が依然として世に蔓延る中であるが、目には目を、歯には歯を、核兵器には核兵器をという思考回路では、真の平和は実現できない。そんな核兵器の脅威の下で生活するより、核兵器のない世界で生活する方が良い、と核兵器廃絶を望むことは決して高尚なものではなく、当然のことのように私は思う。核兵器廃絶は、言わば「最大多数の最大幸福」なのである。それ故、私は核抑止論を支持せず、核兵器廃絶を強く望んでいる。そして、核兵器廃絶が「最大多数の最大幸福」であるからこそ、各国指導者は国家の安全保障ではなく人間の安全保障に目を向けるべきであり、人間のための外交をするべきである。核共有など以ての外であると、高校生ながらも、日本人として戦争や核兵器使用の犠牲になり得る者として、未来の日本を生きる者として、強く訴えたい。
先日の日本被団協がノーベル平和賞を受賞されたことも受けて、核兵器に対する国際世論は確実に廃絶へと動きつつあるはずだ。これからも、第27代高校生平和大使として、唯一の戦争被爆国 日本で暮らす者として、そしてそれ以前に一人の人間として、核兵器をめぐる問題に目を向け続け、一人でも多くの人が核兵器のない世界での平和を望めるように、国内外で粘り強く活動を続けていきたい。