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「宮崎汎会員が見た世界の旅」 3年がかり100話の連載を終えて ―励ましてくださった読者への感謝でいっぱい

2025/03/10

 
会員・宮崎汎(日本モロッコ協会副会長)

年を経るに従い社会との接点が途切れていき、今まで当たり前と慣れ親しんだ日常から何となく置いてきぼりを食っているような心地がして、そろそろ終活をせねばならないと気分は憂鬱になる。

そんな時、手元にある記録と写真を使って作文を書いてみようと思いついた。書いてみるとメル友にも読んでもらいたくなり、無礼を承知で勝手に送り付けたのである。結果は予想外の反響で、送り付けた友人からは様々な便りやコメントが寄せられた。5話、10話と書き上げ送り付けることが楽しくなり、いつの間にか駄文をしたため人様に読んでもらうことが自身の励みになることを感じ、期待するようになった。時には気が付くと2,3か月全くパソコンに向かう気力が失せ、打ち過ぎたこともあった。

すると病気ではないかとか、次は何をテーマに送られてくるのか楽しみにしているのに途絶えているのはなぜかといったメールや電話がきた。15話綴った頃であろうか。

思いがけない反響に、よし100話まで書いてみようと自分に大きな目標を課した。これはさすがに荷が重く、何度か中断したいなといつもの怠け癖が出た。

日記まがいの記録と撮りためた写真を使っての作文である。この中から主題を決め、それに合った写真を添付する作業は大変で、回を重ねるごとに胸突き八丁の思いをした。

また若かりしとき、沢山見た映画であるが年月を経て記憶が曖昧となり、断片しか思い出せないなど苦しんだことも今振り返るとあった。いずれも自身の日常を充実させるために始めたことなのにゴールは遠くかすみ自らに課した目標を恨めしく思ったものである。

人の迷惑を慮ることなく駄文を勝手に送り付けた無礼にもかかわらず、100話に一度も欠くことなく感想文やコメント、さらにはご自身の記憶と重ね合わせた思い出を寄せてくださる方が数人おられた。これは当初全く予想もできなかった驚きであり喜びであった。

高齢者の生きがいとは何だろう。自らに課したささやかな100話の作文を書き上げた今、さてこれからの張りのある生活のためには何をすればいいのか目下呻吟する毎日である。


編者注・紀行エッセイ、宮崎さんの世界の旅は、21年7月5日に、第1話・「デンマーク・マルグレーテ二世女王陛下」でメール配信がスタート、25年3月10日に、第100話・「バチカン市国」で終えるまで、3年がかりの「連載」でした。「あとがき」にあるように、確かに、大変、厳しい作業だったと思いますが、読者は宮崎さんの貴重な世界の旅を無料で追体験できました。宮崎さんお疲れ様でした。本当にありがとうございます。

「紀行エッセイ・宮崎汎会員が見た世界の旅」

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