2025/03/03
厚生労働省労働経済調査官 藤木雄太氏
「人手不足への対応」をテーマ
10月31日(木)15時15分から、ちよだプラットフォームスクェア402会議室において、厚生労働省労働経済調査官の藤木雄太氏を講師に迎えて、恒例の労働経済白書のヒアリングが開催された。参加した会員は29人。9月6日に公表された今回の白書は第Ⅰ部では例年通り前年(2023年)の雇用情勢や賃金、経済等の動きをまとめ、第Ⅱ部で今年のテーマとして「人手不足への対応」を取り上げている。第Ⅰ部では、「2023年の労働経済は、経済社会活動の活発化に伴い、緩やかな回復がみられた一方で、物価上昇に賃金の伸びが追いついていない状況にあり、引き続き、物価を上回る賃上げが望まれる状況にある。」と総括している。
2010年以降は過去50年で3回目の人手不足局面
第Ⅱ部では、我が国の過去半世紀における人手不足局面として、①「列島改造景気」と言われた1970年代前半、②バブル経済期の1980年代後半~1990年代、③2010年代以降から現在まで、の3期間における人手不足の状況や背景を考察し、「2010年代以降では、企業の付加価値が増加し欠員率が緩やかに高まる中で、充足率がこの半世紀で最も低い水準まで低下しており、人手不足が「長期かつ粘着的」に生じている可能性がある。今後も続く高齢化により人手不足も進む可能性がある中、生産性や労働参加率の向上が必要である。」と総括している。
さらに、「我が国における潜在労働力の状況についてみると、就業希望はあるが求職活動をしていない無業者と無業の求職者は計約800万人。働きたい人の希望をかなえられるよう、働き方改革や仕事と生活の両立支援を推進し、副業・兼業を進めるとともに、「年収の壁」への制度的な対応などの支援が重要である」と指摘している。
女性、高齢者、外国人が活躍できる社会の実現が必要
また、近年、就業者の増加が著しい女性、高齢者、外国人について、就労を取り巻く現状やそれぞれの課題を示し、今後の望ましい方向性等についてマクロの観点から分析した。(1)女性の雇用はキャリアの一時的な中断が女性の職業人生の選択肢を狭めないよう、正規雇用として復帰できる環境や支援の充実が必要、(2)高齢者は、60歳以降において、非正規雇用比率が高いことや、65歳以降に新たな「就業率の崖」が生じていること、(3)外国人労働者は、我が国と送出国との賃金差は縮小し、他の受入国との賃金差は拡大しており、外国人労働者に「選ばれる国」となるため、賃金はもとより休日日数などを含めた総合的な処遇の向上が重要であると提言している。講師の熱のこもった説明のあと、参加者から、外国人労働者への基本政策が変わったのか、何歳まで労働力として考えているのか、求人数・求職者数には民間業者の数は入っているか、1990年代の付加価値の増加と非正規労働者の増加は関連していると思うがどうか、など多くの質問が出され、会員の関心の高さが伝わってきた。
(奥田久美)
労働経済白書を解説する藤木調査官
労働経済白書のレクで質問をメモする藤木調査官(右)