2024/11/18
厚生労働省労働基準局労働条件政策課 澁谷秀行課長
(会報221号=24年10月5日号から転載)
5月20日、労ペン会員32名が参加して、厚生労働省の澁谷秀行労働条件政策課長から、「2024年問題から考える労働時間と働き方改革関連法5年後の見直し」についてブリーフィングを受けた。
2024年問題から考える労働時間
2024年問題とは、時間外労働の上限規制の適用が令和6年3月31日まで猶予されてきた建設業、自動車運転の業務、医師についても4月1日から、上限規制適用猶予が撤廃されることによる諸課題をどのように解決していくかという問題のことである。建設業、自動車運転の業務、医師に関しては、5年間の適用猶予の間に取引慣行や勤務環境の改善を行い、その後は、実態に即した形で、上限規制を適用するとされたため、各関係業界団体等は長時間労働の削減のための方策や健康確保、さらに人手不足対策のあり方などの取り組みを積極的に行ってきた。
その結果、本年4月1日以降建設業、自動車運転業務、医師に関して、時間外労働に関する上限規制の適用猶予は撤廃されるが、当面、次の特例措置が認められた。
- 建設業においては、災害時における復旧及び復興の事業については、時間外・休日労働を単月100時間未満、複数月平均80時間以内とする規定は適用されない。
- 自動車運転の業務においては、時間外労働は年960時間以下。拘束時間やインターバルについては、改善基準告示で別途定める。
- 医師に関しては、時間外・休日労働は、月100時間未満(但し面接指導の実施があれば月100時間の上限は適用されない)、年960時間以下(一般)又は年1860時間以下(救急医療、臨床・専門研修等)
働き方改革関連法5年後の見直し
新型コロナの影響やデジタル技術等の進展により、企業を取り巻く環境や働く人の意識が変化し、働く人の働き方に対する意識等が個別・多様化してきている。
働き方改革関連法附則によると、同法による改正後の労働基準法について、その施行の状況等を勘案しつつ検討を加え、その必要があると認める時は、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとされた。そこで、今般、労働基準関係法制について包括的かつ中長期的な検討を行うとともに、働き方改革関連法附則に基づく具体的な検討を行う「労働基準関係法制研究会(座長:荒木尚志東京大学大学院法学政治学研究科教授)」が開催されることとなった。
同研究会は、本年1月26日に第1回会合が開催され、今後、①「新しい時代の働き方に関する研究会(座長:今野浩一郎学習院大学名誉教授)」報告書も踏まえて、労働基準関係法制の法的論点の整理、➁働き方改革関連法の施行状況を踏まえた労働基準法等の検討を行う。検討に当たっては、①労働時間法制、➁労働基準法の「事業」、➂労働基準法の「労働者」、④労使コミュニケーションを議論の4本柱とする。
なお、2024年問題に関連した最長労働時間規制については、①時間外・休日労働時間の上限規制、➁労働時間の意義等、➂裁量労働制・高度プロフェッショナル制度・管理監督者等、④テレワーク等の柔軟な働き方、⑤法定労働時間週44時間の特例措置等について議論を進める。
いずれにしても、2024年問題で提起された時間外労働の在り方を含め、労働基準法等の法改正にも繋がる可能性のある議論が始まる訳で、今後の労働基準関係法制研究会の議論の推移には、特に留意する必要があろう。
(前田充康)
2024年問題についてレクする厚労省の渋谷課長