ヒヤリング

自治体職員の非正規化に潜む危機

2025/03/17

 
自治労総合労働局長 林鉄兵氏
(会報223号=25年2月25日号から転載)

昨年7回目となる会員セミナーは、年も迫る2024年12月12日に、「自治体職員の非正規化に潜む危機」について、自治労総合労働局長の林鉄兵氏からヒアリングを行った。

非正規公務員問題については、2018年の白石孝さん、2019年の森田定勝さんに続く第3弾。自治体の現場を蝕む実態を伺った。

いま地方自治体で働く非正規公務員は、会計制度任用職員と呼ばれている。2020年施行された改正地方自治法や改正地方公務員法により、非正規の呼び方を無くした。

地方公務員法等の改正は、会計年度任用職員の採用や待遇を適正化が本来の目的。ボーナスを支払うことや、フルタイムの任用職員には退職手当の支給となった。国会の付帯決議では処遇改善もセットと明示されていたが、給与などの労働条件や、待遇面でも実態が伴っていない。いま地方公務員として働く280万人の正規職員のほかに、74.3万人が非正規で、そのうち2割が1年間。 地方公務員は1994年に328万人いたが、2024年に280万人と50万人減った。逆に非正規は45.6万人から2024年には74.3万人と29万人増加した。転機になったのが「夕張ショック」。自治体倒産と言われた夕張市は、退職金が半分、職員が3割減だった。

増加する会計年度任用職員と劣悪な処遇

地方公務員を部門別でみると、警察・消防が45万人、教育部門が107万人、一般行政部門が94万人、残りがその他。地方公務員数は2010年から280万人と横ばいだが、大震災があったこともあって警察・消防だけが1割も増えている。

一方、増え続けているのが非正規、つまり会計年度任用職員。その中身は、一般事務職員、技能労働職員、保育所保育士など。うち女性が4分の3でメインは事務の補助。保育所、給食関係などは、半分以上が非正規で、出先の勤務が多いのが実情。会計年度任用職員は、任用(契約ではない)が原則1年間(会計年度)だが、任用の更新もできる。多くが最長3年。また賃金も、正規雇用の公務員と比べて安い。

たしかに法改正により、会計年度任用職員は、2023年人事院勧告からは本給引き上げ、一時金支給月数増、2024年からは勤勉手当が支給可能となった。ところが現場で起きたことは、「年収ベースで増えたのだから、常勤職員並みに働いてもらう」とか、時給は同じだから「事務補助から事務職員への職種転換を提案された」という事態もあった。さらには総務省が定めた「事務処理マニュアル」を下回る現場実態である。 たとえば①フルタイムなのに退職手当をワザと出さない、②人事院勧告が出ているのに給与改定を4月に遡及しない、③一時金を値切られる、など。

このほかにも、フルタイムの会計年度任用職員には退職金が出るが、自治体側は出したくないので、フルタイムから短時間勤務へ移行されるというケースも。

常勤職員への道筋をつけるべき

いま地方公務員の行政ニーズは増えている。近年では、物価高騰対策や生活支援金など、住民への給付金の支給などがあり、基準日に自治体の住民であるかどうかのチェックも必要となる。単に住民基本台帳から取り出せばよいというものではない。

災害等の発生時には、非正規も、正規職員並みの仕事を任される。自然災害の備えは、活動の蓄積が大事で、災害対応にあたられる方は正規職員にすべきである。

いま自治体職員は、退職者や休職者の増加、新規採用の希望者の減少、パワハラ・カスハラ問題、政治リスク(首長の無理難題)など多くの難題を抱えている。

たしかに地方自治には、地方交付税制度や、財源の確保と処遇改善の実態の差など、本質的課題は多い。そもそも会計年度任用職員を前提とした自治体経営と、その持続性が問われている。まずは会計年度任用職員の明確な位置づけ、そして常勤職員への道筋をつけることだ。

(鳥居徹夫)

自治労ヒアリングで説明をする講師の林さん自治労ヒアリングで説明をする講師の林さん

  
 

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