ヒヤリング

22春闘ヒアリングはオンラインで実施―前年比3割増の192人が参加

2022/06/06

 

ナショナルセンターや主要産別のトップから要求状況や交渉見通しなどを聞く、今年の春闘ヒアリングはオミクロン株の感染拡大と重なったこともあり、オンライン形式で実施した。前年は一部オンライン併用で行ったが、今年は担当幹事などが本部に出向いて、進行などを務めたものの、会員はオンラインでの参加となった。

実施した件数は前年と同じ10件(表参照)で、参加者数の合計は前年(140人)を3割上回る192人。ポスト・コロナを展望した今季交渉に対する関心の高さをうかがわせた。

各団体ともトップと担当者に対応いただき、活発な質疑が展開された。k字回復といわれるように、企業業績にバラつきが見られるものの、労働組合は押しなべて、昨年より強気の姿勢で交渉に臨んでいる印象が強かった。3月16日の集中回答日には自動車、電機などで満額回答が相次ぎ、後続の中小・非正規の賃上げも堅調に推移している動向をみると、「人への投資」に向けた労使の認識のすり合わせが進んだ結果なのかもしれない。

その一方、産業内・企業内における賃上げ回答の分散傾向が拡大したことは、春闘のあり方の再検討を要請しているとみることができる。

今年のヒアリングは完全オンラインで実施したことで、参加者数は前年実績を大きく上回った。しかし、オンライン実施は、参加者の集約やURLの連絡のほか、当日の参加者の確認など、準備・実施にあたって、ヒアリング担当の負担はリアル開催の時よりも数段重いことから、実施形態についての検討が必要ではないだろうか。

(荻野)

22春闘オンラインヒアリング参加状況

前半 2月14日 2月16日 2月16日 2月28日 3月1日
UAゼンセン 全国ユニオン 全労連 情報労連 連 合
参加者数 29 18 10 17 29
後半 3月2日 3月2日 3月3日 3月8日 3月10日
自動車総連 JAM 電機連合 電力総連 基幹労連
参加者数 19 15 22 13 20

重要な三つの視点(22春闘ヒアリングに参加して)

会員・薗田 早織(公社)国際経済労働研究所勤務 

私は昨年本クラブに入会し、今年初めて春闘ヒアリングに参加させていただいた。全ての回に参加することができたが、どの組織の回も、レクが参考になるのはもちろん、質疑応答・意見交換が大変面白い。各組織からはオフレコも交えた真摯な回答があり、これまでの労ペンの歴史と、各組織との間で積み重ねてこられた信頼関係を感じることができた。

「春闘」というテーマには、個人的な思い入れも強い。2011年に研究所に入所して以降、労組や春闘の存在感が希薄化する中、その意義を伝えていきたいという思いで毎年機関誌の定例企画として春闘を取り上げてきた。今回のヒアリングは、改めて初心に立ち返ることができた貴重な機会となった。

2022春闘では、賃金の引き上げについて、全体的にはここ2年のコロナ禍の春闘からは脱却の兆しがみられた。連合・芳野会長からは「今年の勝負所は、賃上げがどこまで波及するか」というポイントが示され、格差是正も各組織がこれまで以上に力を入れる方針であり、最終結果が期待される。

また、賃上げ以外の観点で、複数組織のヒアリングで議論になるなど今後の春闘を考える上でも重要と思われた点について、3点触れておきたい。

1点目は、ビジネスモデルの転換・技術革新等が進む中、働き方や処遇等に与える影響である。ヒアリングでは、ジョブ型人材マネジメントや専門性を高めるための処遇制度などの議論が報告された。2点目は、春闘の在り方である。トヨタ労使のような動きの広がりは見られないものの、大手製造業が牽引するモデルからの転換は各組織で試みられてきており、今後の展開が注目される。3点目は、労働運動の社会化である。外国人労働者、非正規労働者、未組織の労働者などを包摂する運動としてどう進化していくのかは興味深い。全国ユニオンからは、非正規労働者が主体となる運動を目指し、オルガナイザーの育成準備を進めていることなども紹介された。

  
 

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