ヒヤリング

労働政策審議会労働政策基本部会報告書

2023/11/13

 
講師 厚生労働省政策統括室 労働経済調査官 古屋勝史氏
(会報217号=23年9月25日付、から転載)

コロナ禍で控えていた外部講師によるヒヤリングが再開された。再開第一弾は、4月26日に厚生労働省から公表された、標記報告書に関する対面での説明会である。 6月22日(木)13時15分から、ちよだプラットフォームスクエアの会議室で、会員30人が参加して実施された。講師は、報告書の作成に携わった厚生労働省の労働経済調査官、古屋勝史氏。 なお、労働政策基本部会は、労働政策審議会の下に、労働政策の中長期的な課題を議論する目的で設置された。委員は研究者、企業家、労働組合など多方面から選出されている。今回の報告書は3回目にあたり、サブタイトルは「変化する時代の多様な働き方に向けて」である。 講演では、まず「社会・経済の現状と課題」に関する現状認識が説明された。それによると、①産業構造がこれまでにない大きさとスピードで、不連続に変化する時代に突入しており、新たな「知」で勝負する時代にシフトする中、②一人ひとりの労働者が貴重な存在となるが、③内部労働市場の機能低下が目立つ、といったことが指摘された。 次に、メインともいえる「働き方の現状と課題」に関しては、①人材育成・リスキリングの重要性、②ジョブ型人事の動き、③円滑な労働移動、の3項目を中心に説明が展開された。 報告書本文に30回近く出てくる「リスキリング」は、単に現職のスキルをアップすることではない。新しい職業に就くため、あるいは現職に必要なスキルの大幅な変化に適応するため、新しいスキルを獲得することである。 最後に「今後の労働政策の方向性」では、今は労働政策の転換期にあり、安全・安心に加え、労働市場のセーフティネットを整備しつつ、労働者個人のスキルアップ と向上を重視すべきだとする。

講演後、フロアからは多数かつ多様な質問が相次いだ。その一つに、「新しい資本主義実現会議」が提示し、いわゆる「骨太の方針2023」にそのまま盛り込まれた「三位一体の労働市場改革」との関連や違いについての質疑がある。 「三位一体」の柱は、①リ・スキリングによる能力向上支援、②個々の企業の実態に応じた職務給の導入、③成長分野への労働移動の円滑化である。報告書と比べると、ジョブ型人事は「職務給」の導入に絞られ、「成長分野」への労働移動が強調される。 講師の説明では、報告書は中長期的な労働政策課題を議論し、対して「三位一体の労働市場改革」では、具体的な労働政策を提示している点で異なるという。今後とも、報告書の内容がどういった形で労働政策に反映されるのか、注視していきたいところである。

コロナ禍で研究会やセミナーはオンライン開催が多くなったが、リアルはやはり良い。担当の君嶋代表代理によると、今回のヒヤリングを皮切りに、これからも会員セミナー、ヒヤリングを順次開催していくという。期待したい。

(谷田部光一)

厚労省の労働政策基本部会のヒアリングで説明する古屋講師厚労省の労働政策基本部会のヒアリングで説明する古屋講師
古屋講師に質問する参加者古屋講師に質問する参加者
  
 

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