ヒヤリング

「23年版労働経済白書」について、厚労省の古屋調査官がレク

2024/02/19

 
2023年版労働経済白書
厚生労働省政策統括官室 労働経済調査官 古屋 勝史氏
(会報218号=23年12月10日号から転載)

(23年)10月26日、午後3時15分から4時45分まで、ちよだプラットフォームにおいて、「令和5年版労働経済の分析―持続的な賃上げに向けてー」(2023年版労働経済白書)のヒアリングが厚生労働省労働経済調査官の古屋勝史氏を講師に迎え、会員20人余が参加して行われた。

本年の労働経済白書は、74回目の白書であり、2022年の雇用、賃金等の労働経済について分析した第Ⅰ部と、10年ぶりに賃金についての分析を行った「持続的な賃上げに向けて」と題する第Ⅱ部で構成されている。

第Ⅰ部は、コロナ以降低下していた経済活動が活発化する中で雇用者が増加し、「よりよい条件の仕事を探すため」の転職者が3年ぶりに増加したこと、賃金が上昇する基調となっているが、実質賃金は物価上昇により減少していること等を記述している。

第Ⅱ部は、賃金の現状と課題、賃上げによる経済等への効果、企業と賃上げの状況、持続的な賃上げに向けての分析、政策による賃金への影響を記述している。

賃金の現状と課題の中で、この四半世紀、我が国の賃金が伸び悩んでいる原因について、企業の利益処分(内部留保の増大)、労使間の交渉力、雇用者の構成等の変化、長期雇用・年功賃金等の日本型雇用慣行の変容、増加した高齢者や女性が賃金の低い仕事に集まる傾向にある労働者のニーズの多様化が寄与した可能性について分析している。

賃上げの効果については、ミクロとマクロの視点で分析し、全労働者の賃金が1%増加した場合、生産額で2.2兆円、雇用者報酬で0.5兆円増加すると試算した。

企業と賃上げの状況については、労働政策研究・研修機構において行ったアンケート調査を利用して分析している。

持続的な賃上げに向けてとして、スタートアップ企業等の新規開業と賃金の関係について、開業率と賃金上昇に正の相関関係があること、転職によるキャリアアップや正規雇用転換と賃金の関係について、転職2年後に転職前に比べ年収が増加する確率が高まること等の分析を行っている。政策による賃金への影響では、最低賃金と同一労働同一賃金の影響について分析している。

講演後、参加者から活発な質問が行われ、その中でも、「持続的な賃上げに向けて」という副題は、労使自治による決定を尊重するという伝統的な労働政策の基本的な姿勢を変更したのかと質問があり、これに対しては、白書の基本的な性格は分析であり、あまり踏み込んだことは書けない。厚生労働省は、業務改善助成金等賃上げに向けた様々な取組を行っており、政府全体としても、構造的賃上げと言っていることから、方向性として、賃上げが望ましいという意識は持っている。一方で、労使で決めることが重要であること白書においても随所で取り上げ、事例でも労使の協議で制度変更を行ったものを多数載せているとの回答があった。

ヒアリング後、講師と多くの参加者は懇親会において、活発な意見交換を行った。

なお、労働経済白書は、https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/roudou/23/23-1.htmlで入手できるので、関心のある方は、参照されたい。(幹事・勝田智明)

ヒアリングで立ったまま説明する古屋調査官
厚労省の労働政策基本部会報告書の解説をきくヒアリングでは質問も活発(左は古屋調査官)
  
 

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