ヒヤリング

今こそ、政労使対話、協議の枠組みが必要

2019/08/05

 
荻野 登・前JILPT研究所副所長

JILPT研究所で3月まで副所長をされていた労ペン幹事の荻野登さんが、今年1月に「平成春闘史」(経営書院)を出版されたことから、7月22日にヒアリングを行い、25名が出席した。テーマは、「平成時代の春闘を振り返って―今後の労使関係の課題を考える」で、春闘をめぐる平成の30年間を振り返りながら、次のように提起された。

大きく変わったのが賃金と雇用。

1995年以降、賃上げは停滞した。組合要求も「賃金カーブ+&」となり、ベア要求の文字が消えた。2000年代は、会計方式の変更、株主重視、成果主義が強まり、定昇程度とか定昇以下という状況であったが、ようやく2014年からベア要求の文字が復活した。2%台が6年連続となった。雇用をみると、非正規労働者は激増し雇用労働者の4割近くに達した。組合員の組織率は低下しているが、バートなど非正規の組織率は上がっている。

長期停滞の中で、課題が先送りされた平成の30年間。

平成の30年間に、労働時間は減らなかったし、フルタイムの年間総実労働時間は2000時間超で横ばい状態。過労死問題も30年間変わっていない。平成元年の入管法改正は、不法入国に対するものであったが、昨年に成立した改正入管法は外国人材の就労拡大で、外国人労働者は30年前の5倍の146万人に達した。

労使関係の環境変化とこれからの課題。

バブル崩壊の後遺症で、雇用優先で賃金が置きざりにされた。労働組合も雇用の安定・維持を優先させた。残業が増える方が職場で歓迎され、長時間労働の是正とはならなかった。 また集団的労使紛争は減少したが、個別紛争は増えている。労使関係をめぐる環境が大きく変わる中で、賃金・労働時間・職場の環境整備・外国人雇用・技術革新への対応などの、課題解決に向けたリセット対応策、協議の枠組みのリセットが求められる。荻野さんは「こういう時こそ、政労使対話、協議の枠組みが必要とされる」と締めくくった。

(鳥居徹夫)

  • 記事画像1
  • 記事画像2
  
 

過去記事一覧

PAGE
TOP