ヒヤリング

AI等に関する労政審報告書を解説

2019/11/05

 
厚労省・田中佐智子参事官

9月11日に労働政策審議会労働政策基本部会から「働く人がAI等の新技術を主体的に活かし、豊かな将来を実現するために」と題する報告書が示され、9月13日に厚生労働省田中佐智子政策統括官付参事官から、その内容について説明が行われた(参加者30人)。

報告書のテーマは、AI等によって労働環境がどのように変化するかという、今後の働き方に重要なインパクトを与えるものである。報告書は、今後、少子化に伴い、労働力人口が減少する中で、AI等の積極的活用により、労働生産性の向上が図られ、同時に、労働者が自らの能力を発揮することにより幸福度を向上させることが可能となるといった、基本的にはAI等の推進に積極的な立場に立ったものといえるが。一方、AI等によって代替される仕事に従事していた労働者が、その変化に対応したスキルアップやキャリアチェンジにどう対応するかという新たな課題も提示している。

また、会員の荻野登氏からは、労働政策研究・研修機構が実施したAI等の技術革新が雇用・労働に与える影響に関するヒアリング調査結果について報告があり、地方の伝統的な食堂で、来客予測AIツールで売上げを飛躍的に向上させた事例、窓口の手続をタブレットで対応することにより、業務を効率化した地方銀行の事例等が紹介された。

過去にも、ME化による労働環境の変化が問題となったこともあったが、この時は、労使間での協議等を踏まえて配置転換等で対応してきたが、今回のAI等については、労働組合の組織率の低下もあり、労使間のコミュニケーションをどうするかという問題が突き付けられている。出席者の中からは、ME化の時とは全く異なり、企業内訓練よりも公的職業訓練に力点を置くべきであるとの意見も出された。

今回の報告では、AI等の導入に当たって、特に労使間のコミュニケーションの重要性が強調されており、労働組合の役割も含めてその在り方について検討を進める必要があると思われる。田中参事官も、これについて今後更に検討を進めるべきとの基本認識を示して説明を終了した。

(君嶋 護男)

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