ヒヤリング

労働経済白書

2020/03/09

 

初めて「働きがい」を分析

厚労省・三村国雄労働経済調査官

労働ペンクラブは19年11月18日、厚労省の三村国雄労働経済調査官から2019年(令和元年)版労働経済白書の説明を聞いた。今年のテーマは「人手不足の下での『働き方』をめぐる課題について」。焦点は第Ⅱ部第3章の「『働きがい』をもって働くことのできる環境の実現に向けて」だ。

白書で「働きがい」を取り上げるのは初めてのこと。極めて主観的なテーマを客観的に捉えることが果たしてできるのだろうか。そこで採用されたのがワーク・エンゲイジメント(WE)という手法だ。実際に働いている人から①仕事をしていると活力がみなぎるように感じるか(活力)②自分の仕事に誇りを感じるか(熱意)③仕事をしていると夢中になってしまうか(没頭)の3点を聞いてスコア化し、働き方や待遇の違いで「働きがい」がどう変わるのか分析ししている。

例えば、約1万6000人のサンプル調査で読み取れる正社員の「働きがい」は、▼男性より女性の方が高い、▼若い人より高齢者の方が高い、▼役職が上がるほど高い、▼正社員より限定正社員の方か高い、となる。また、非正規雇用者は、雇用形態に関わらず不本意選択者は低い、▼男性より女性の方が高い、▼55歳以上の高齢者が高い、などが読み取れた。

白書はこんな手法で、「働きがい」と定着率・離職率、労働生産性、自発性・積極性・顧客満足度、ストレス・疲労などの関連を次々と分析。経営者向けの「労働者を気持ちよく働かせる方法」としても読める。

当然のことながら会員から違和感も含め様々な質問が出された。ロールモデルとなる先輩がいた方が、働きがいが高まるとの分析では、「企業では今や先輩の後を辿っても何ら良いことはないと言われている」(小林良暢氏)との疑問が出され、三村調査官も「将来をめぐる労使間のコミュニケーションも大事だと考えた」などと説明に汗だくだった。

日本的終身雇用が経済停滞の主因などと指摘され、今や働き方改革は内閣を挙げての課題といってよい。長期雇用や低迷する賃金水準といった大テーマに一省庁が迂闊に踏み込めないのだろう。そんな苦衷も感じさせる働きがい白書ではあった。

(梶本 章)

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