会員セミナー

『トヨタの話し合い』著者裏話

2019/07/01

 
加藤裕治弁護士

「最近のトヨタ、心配なこと」も語る

トヨタ労組出身で連合副会長も歴任した異色の司法試験合格者として新聞の人欄にも紹介された加藤裕治弁護士(労ペン会員)。近著『トヨタの話し合い』の執筆裏話を聞く労ペン・アフター5を4月25日に開き、31人が参加した。  著書は、「カイゼン」などトヨタ式生産方式を支える独特の労使関係実践書だ。加藤氏はトヨタの役員時代に年功序列賃金を職能資格制度に変えた実績も持っている

報告では「トヨタの労使関係はどこが他と違うのか」について、「職場」+「労組」の職制・組合員間で「時間がかかっても、全員納得の結論を求める話し合いの仕組み」を強調。理念は62年の大量人員削減の大争議後に締結した「労使宣言」で、労使協調ではなく「労使相互信頼」と解説した。

また「最近のトヨタで心配なこと」として「経営に関することは経営陣、職場の生産性向上関連は労組」とする労使関係について、会社首脳陣の距離感が違ってきた感じがするとの印象を語った。

質疑では、「春闘のベア非公開で組合員の全員合意はどうなっているか」「世情、乾いたタオルを絞るといわれる下請け単価切り下げの対応と付加価値循環の職場議論は」「成果型賃金が強まっているが、対応は」「今後、労使関係の見直しは」などが出された。

加藤氏は職場にはベアは知らされていると発言。下請け単価問題では「首脳陣のコストダウンを忖度し、単価低減で過ぎたる面もあるとの声も聞く」と述べた。さらに今後の労使関係や賃金処遇制度の検討の可能性にも言及した。

雑誌『「選択』4月号には、トヨタの定昇、ベア非公開は「副社長主導の人件費抑制、固定費圧縮が狙い」とし、今後も賃金削減の内幕を明かしている。組合の対応が焦点だ。AI化など変革期のトヨタの労使関係の一端を知るタイムリーな談論となった。

(鹿田勝一)

  • 記事画像1
  
 

過去記事一覧

PAGE
TOP