2020/10/12
早川行雄会員
資本主義社会に現に生きている者にとって、そのシステム自体が人を幸福にしないとは...。ショッキングなタイトルである。
40年にわたり、産業別労働組合の本部等で経済情勢を分析してきた早川会員が、20年7月30日、資本主義がいかに人を幸福にしないシステムに変貌したかについて語った。
ここでいう「資本主義」とは、企業利益の極大化を追い求める、フリードマンが主張した市場原理主義を指し、他者への共感や倫理観が前提にあるアダム・スミスの資本主義とは異なるものである。
こうした倫理観なき市場原理主義は、株式会社形式の巨大営利企業への経済力と政治権力への集中をもたらした(早川さんはこの状況を「再封建化」と表現する)。その結果、大企業は優遇税制で守られる一方、効率化の名のもとに、医療、教育にいたるまで民営化が進み、社会福祉が切り捨てられるという現象が生じた。富める者はますます富み、貧しい者はますます貧しくなるというように、市場原理主義は、貧困と格差を必然的に伴うのだと説明した。
さらに、市場原理主義により、民主主義と資本主義は共存できないものになってしまったという。
また、市場原理主義に基づく医療費削減が新型コロナウイルスのパンデミックにつながったと述べた。
株主の利益を最優先する株式会社のあり方が格差の拡大や気候変動問題への対応遅れを生じさせたという問題意識は、今年1月のダボス会議でも取り上げられたホットなテーマ。
会員セミナーの出席者からは、「人間を幸福にする資本主義」への転換や中国の国家資本主義などについての質問が出された(参加者24人)。
日本の政治状況、労働問題については、昨年10月に出版された「人間を幸福にしない資本主義――ポスト『働き方改革』」(旬報社)で詳しく論じられている。
(保高睦美)
4月開催予定だったが、延期。当日はドア、窓を開放、参加者は全員マスク着用した。(編集部)
会員セミナーで講演する早川幹事(左側)
会員セミナーで講演する早川幹事