私の主張

日本の「経済民主主義」革命に向けて

2021年6月21日

 
労ペン会員・高木雄郷(労働ジャーナリスト)
経営民主ネットワーク『経営民主主義』第76号 (2021年4月30日付)から

労働者代表制の導入と新しい労使経営協議会法

新型コロナウイルス(Covid-19)のパンデミックは、日本社会のひずみ=格差・差別問題を露呈した。このコロナウイルスの影響を受け、構造的不平等がもたらす現実は、非正規労働者の職種・階層による分断と格差を顕在化した。
今回のコロナ危機で失業や雇止めにあったのは、多くが在宅勤務出来ないパート・サービス業従事者やフリーランス(請負労働者)、派遣労働者に象徴される人々である。これらの非正規労働者に対する差別的扱いを禁じる「同一労働同一賃金」が今年4月から、中小企業にも施行されたが、賃金格差どころか、正規(フルタイム)労働者より高い感染リスクという民主的人権の格差に直面しているわけだ。
その意味で、今こそ、グローバル・多様な労働者の意見を反映できる集団的民主的労使関係を構築する「労働者代表制」の導入。即ち、労使(経営)協議制度の法制化が、労使が取り組むべき社会的責任である企業ガバナンスや経済・経営民主化、コンプライアンス(法律順守)確立のためのマニフェストなのだ。

労働者代表委員会の活用と企業ガバナンス

経営民主ネットワークは、2019年8月開催の第4回労使経営協議会法第二次改訂案検討委員会(主査・高木雄郷事務局長)で、「労使経営協議会法」(第二次改訂案)をまとめた。
この法案の骨子は、事業(産業・企業)の社会的責任と持続可能な開発目標(SDGs)、職場におけるディーセントワーク(安心・働きがいのある人間らしい労働)の実現、労働者のコーポレートガバナンス(企業統治)への参加の確立。即ち、企業経営における労働者の情報権・協議権・決定参加権を法制化することによって、労働者の福祉増進や企業の健全性の確保・発展と民主化を図ることを目的としている。
日本の「労働者参加」の現状は、EU諸国に比較して、労使(経営)協議機関の事業所設置率が約2割と非常に低い。これに伴い、労使協議会への労働者参加割合も3割台で、北欧諸国に比べて3倍以上の格差がある。とりわけ、日本の場合、中小企業での労組の組織率が従業員100人未満企業で1%以下でも分かるように、経営協議会の設置率(労働者の経営参加率)がEU諸国に比べて、極めて低いことが大きな課題である。
このため、日本における労働者代表制の導入は、「労使経営協議会法」を制定することにより、労使協議制(機関)を拡大強化、社会化する必要がある。そこで、日本における労働者代表制の法制化を考えた場合、EWC(欧州労使協議会)指令に倣って、次のマニフェストが重要になろう。
第一点は、ワークルール確立のための「労働者代表制(委員会)」の導入である。連合は、2001年に労働者代表法案の要綱骨子(案)を発表し、2006年には補強案を確認して、現在本法案作成準備中とされる。そこでの議論展開のために、これまでの連合の「労働者代表法案要綱骨子(案)」(2006年)の修正・見直し点を提起しよう。
連合は、日本の労働者代表制の骨格について、①社員の過半数で組織する労働組合の無い企業(従業員10人以上)に「労働者代表委員会」を作る、②労働者代表委員会が法定の範囲内で使用者側と(たとえば36協定の)労使協定などを結ぶ、を法制化するよう求めている。
まず、①に関しては、従業員10人以下の(官民)企業であっても、労組を有する企業では、労働者代表委員会を設置できるものとする。また、労働者代表委員の選出・構成に当たっては、当該企業(事業体)におけるすべての従業員(派遣社員や非正規労働者、プラットフォーム労働者などを含む)の意見を反映できるよう留意する仕組みを整備する。
   さらに、経済のグローバル化に伴って、「企業グループ(連結決算事業体)別労使協議会」を、EWC(欧州労使協議会)指令方式(労働者側の申し出制)で設置しなければならない。つまり、日立グループ連合やJPグループ労組が実施しているグループ親会社との「経営懇談(協議)会」を格上げし、EWC方式に倣って、「グループ別労使経営協議会」法制化することが必要だ。これによって、企業グループ間の適切な情報提供と協議プロセスを確立する。
このため、②の労働者代表委員会(含企業グループ別)の権限については、単に現行の従業員過半数代表者の役割である上記の法定基準(112規定)の施行だけでなく、雇用問題(リストラ)・労働環境に関わる経営戦略(雇用管理計画)策定、いわゆるM&A等による企業の組織変更・再編や、新工場(事務所)の閉鎖・移転・設立及び新技術・機械(AI・ IoT) の導入、生産・販売・サービス制度の変更、職業訓練教育などの(グループ)ガバナンス重大事項について、労働者代表制(委員会)導入後、次年度以降から、情報提供と事前協議権を有する機能を加える必要性がある。(労使経営協議会改訂案第25条)
この場合、労働代表委員会の構成員が過半数労働組合(複数組合可)で占められているときは、その事前協議事項においての「共同決定(交渉)権」を有する。換言すれば、当該企業において、過半数組合が成立した場合は、労働者代表委員会は解散せず、法定の従業員過半数代表者の権限のみを過半数労働組合に移転すれば良いのである。
無論、労働者代表委員会の機能に、賃金・労働条件の改定、変更などの労働組合の団体交渉(労働協約)事項を追加することは出来なく、逆に労働組合は、この労働者代表制組織を通じて、企業グループ内の未組織労働者との連携を図り、組合加入・組織化の契機にすべきであろう。

労働者代表重役制度の法制化を

二点目は、日本における労働者代表制の中・長期目標だが、企業(グループ)ガバナンス強化や経営民主化のための経営中枢(取締役会)への労働者(組合)の参画である。従業員100人以上企業で、ドイツ・北欧並みの「労働者代表重役制度」を法制化しなければならない。
具体的には、取締役選出については、(グループ)労働組合の指名、推薦する者が全労働者集会の議決によって任命され、労働者代表として、取締役会に三分の一(従業員100人以上企業)または二分の一(従業員1000人以上企業)参加する方式をとる。労働者代表取締役は、非常勤・無報酬、かつ団体交渉には参加することができない。会議参加費や職務を遂行するのに必要な経費は企業が負担する。 一方、労働組合の企業経営への決定参加権は、経済的責任を負わない。すなわち労働者(組合)が全労働者集会の議決(同意)を得て提起し、労使合意して実行された経営施策に対して、最終な経営責任は所有権が前提となる経営権をもつ株主代表の取締役(使用者)側が負うものとする。そして従業員1000人以上企業の取締役会で、労使同数の票決で決まらない場合、労使の共同選出した中立委員が最終決定権を持つ。
 参考までに、現在、欧州労連(ETUC)が欧州委員会(ウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長)に要求している労働者参加のEU枠組み指令案、欧州多国籍企業(欧州会社や欧州協同組合を含む)に導入する「労働者代表重役制」(WBLR, Workers Board Level Representative)の<新基準>を紹介しよう。

  1. 従業員50~250人(本社及びその直接または間接子会社の総従業員数)の小規模企業では、WBLR(Workers Board Level Representative)の参加割合は低く、少なくとも2~3名の労働者代表が選任される。
  2. 従業員数250~1000人(同)の中企業では、WBLRの参加割合は三分の一に高められる。
  3. 従業員数1000人以上(同)の大企業では、WBLRの参加割合は労使同数の二分の一の役員議席を持つ必要があり、ドイツのモンタン法(1951年施行)と同様の完全な共同決定制が導入される。

以上、日本のあるべき労働者代表制(=労使経営協議会)法案の目的・要旨を論じた。この法案は、ILOが提唱する社会正義の拡大とディ-セントワークの実現、ISO26000の確立の上で制定することが必須条件だ。また、いま論争となっている社会的経済格差や分配の不平等を是正するためにも、日本経済を健全かつ安定に運営するためにも、労働者の利益と民主的権利を護る労働者経営参画の新たな法制度が肝要である。

  

「国民が働いて借金を返す」、これが"労働貨幣論"だ。

2021年6月07日

 
関西支部・村岡利幸会員(労働総合コンサルタント事務所所長)

(編者注・村岡さんはこのMMT論に対しての会員の皆さんからのご意見を要請しています。賛否、感想などもお送りください。同送メールへの返信でお願いいたします)

この夏から秋にかけて、ロンドンの金地金相場引き下げの機能が消失する。意外な展開や新策略開始がない限り、これから金地金の相場は、年末にかけて上昇もしくは年末まで価格抑止が続いた後に急騰すると予測するのが自然だ。ドル・円の両方共への為替相場に安値圧力が強烈なため、この金地金の急騰へと直結している。MMT論者は、こぞって借金や通貨(通貨と貨幣は異なる物)の増量で国家はつぶれないとは言っている、確かにそれは正しい。が、潰れない(保障を持つ)国家の国民が、いっそう積み重ねて働くことでもって経済の質量低下を補うこととなる。

現在日本は、コロナ対策&経済危機対策と称して、借金を湯水のように使う積み上げ予算措置を行っている。財務省が説明する返済とは、全ては先送りだとし、すなわち生まれもしてない孫子の代まで借金を積み上げようというわけだ。

また、MMTを持ち出す人物らは、同じく湯水のように使う財政出動を口にするけれど、返済の話になれば、「国は倒産しない、財政は破綻しない」と叫ぶに過ぎず、答えない。たとえ叫ぶとしても、財政出動を国の会計で行えば、その穴埋めは必要だ。戦前日本の如く、米国その他から借金をして関東軍の中国侵略資金に、満州を拠点に麻薬ビジネスから略奪まで行って、国家財政に補填する」とも言わない。いずれにしても、「国民が働いて借金を返す」ことになるのだ。

歴史的にも、"労働貨幣論"の幻想妄想を、本気に真に受けて政策導入したのが、正確に言えば各地のソビエトの中でも、ロシア領の旧ソ連だけであった。スターリンらは党内の経済学者を粛清して"労働貨幣論"を無理強いし政策破綻、その無茶苦茶をごまかすために"計画経済"なるものを、権力を背景に実行し、変質経済学まで組み立て輸出したのだ。ナチスのヒットラーは、スターリンの"計画経済"を真似したかったが諦めた。日本は、満州国での日本:商工省の連中が採用した。戦前戦後を通じて日本国内でも、その"計画経済"を真似て実施した。戦前は権力を使い、戦後はアメリカ資金を基にCIAの手先が首相となり導入した(米ソ対立の反共防衛と称して)。なお、随伴結果として、国交のない中国や朝鮮半島との密貿易で、日本は関西地方を中心に潤いを得たことも確かだ。

本来の話に戻れば、貨幣は商品や資産その他の等価交換物であるとするのは、総ての経済学説に共通している。でも、現実には通貨コントロールによって相場を産み、あたかも価値量が変動したかのように見える。けれども為替相場やインフレ・デフレによって貨幣価値は等価交換の水準に、やはり近づく。そして、「国民が働いて借金を返す」となればそれは国民の労働を意味することとなる。借金返済を国民労働に限定しなければ、終戦後に日本政府が行ったような財産税(所有資産税率での通貨納税&現物納税)となるのが通例なのだ。日本政府は財産税の実施経験がある。ちなみにソ連崩壊のとき、全銀行預金はすべて国が没収した。そしてMMT論者もソ連の"計画経済"の如く無口だ。MMT論者が、話題にせず無口だからとしても、彼らの論理構成や理念に反駁しないわけにはいかない、噛み合わなくてもだ。 さて、そこで、以下徐々に詳しく、フィードバックを繰り返しながら見ていく。

MMTへと、ワラをもつかむノメリ込み

MMTは現代貨幣理論Modern Monetary Theoryといった名称に概念付けられる場合が多い。が、その内情や理論の説明は、MMTを持ち出す人物によって異なる。それどころか、同一人物であっても途中から大変質している実態が通例だ。深くに渡って見識を持つ経済学者とか、科学的見識を持つ論者からのMMTに対する指摘や批判の度に、彼らは次々と内容変質する特徴がある。

科学とは、ひとことで簡単に試金石の如くに例えて説明すれば、「何時でも何処でも誰でも、法則性を持って説明ができ、聞いた他人も法則を活用できる」と自然・人文(精神)・社会の3分野を横断的に貫く類のモノの事である。

YouTubeなどに流されるMMTの説明は、「これなら、聞いたことあるだろう」と言わんばかりに、無知かつ愚か者をも誤魔化そうと目論むのか、複式簿記の帳簿概念あるいは会計学の一部の説明ばかりである。そして飛躍して、財政学(経済学の一分野)のつまみ食いに終始している。何千年も用いられる貨幣(江戸時代ならば:米が貨幣)の概念、貨幣と通貨の種類も役割も異なることなど、様々混同して説明している。

経済活動とは、貨幣を道具として"自由"の拡大を人々は求め、それは「モノやサービス(服務)」とを交換する方法である。貨幣蓄積増進の重要手段として「通貨」は用いられ、「通貨」とはそれ自身は"経済価値のない紙幣・硬貨や電子マネーなどの器材"を用いることであったし、これも何千年と人類が用いてきた社会運営技術の方法や手段である。MMTを持ち出す人物にとっては、こういった歴史的経緯も含めた科学的視点それ自体を知らないようである。(仮に知っておれば、経済学とは異分野の会計や帳簿を話題にするより、無知な人の中途半端な誤理解こそが生じたかもしれない)。

だから結果的に、深くに渡って見識を持つ経済学者とか、科学的見識を持つ論者からは、MMTが相手にされないのである。ただし、日本の権威主義的アカデミックな人からすれば、「無知かつ愚か者」の相手をしないことは、決して道徳的ないしは善(人類進化に資する行為)だとは、わたくし筆者は思わない。

ところで、日本の巷で有名になった、MMTを押し出したであろう人物は彼だ。
https://youtu.be/Tqo1yOR0AiM
そして、経済史を専門とする某女性経済学者の著作によると、"百花繚乱"となった世界主要のMMTの数々を調べたそうだ。

彼女は、次のように指摘している。「国家がどれだけ債務、つまり借金を増やしても大丈夫。(とは言うものの)実際は各国の事情を踏まえるべきなど、様々な条件をつけている。」。さらに、新自由主義について言及し、「(そもそもは)非営利がゆえに見過されてきた無駄を省き、自由な企業家精神を発揮させる」とし、あくまでも、倫理観を前提としたフリードリヒ・ハイエクなどに示されるネオリベラリズムの範囲内で語られていると。

ところが、日本における新自由主義者の特徴というものは、何のかんのと言おうが、経済学の父アダム・スミスが「神の見えざる手」と言ったとの嘘(あのトヨタの社長)を思い出すが、結局は世界共通して、"政府公共部門事業を拡充し、その上で片っ端からオトモダチ業者に事業を分配する"ものでしかなかったということだ。日本の新自由主義者は、経済とか経営には全く関わりもセンスもない輩であり、やってきたことは比較的他人より有利な地位で以って、"露骨な性癖を持つ新自由主義者の権力構造を維持するためだけの行為"であった。
新自由主義者の話に乗って事業閉鎖その他に流れたオーナーたちは、金銭はもちろんのこと様々予想はずれ、人生に落ちぶれてしまったケースは多い。筆者は凡そ45年も携わっているから如実に視てよく知っている。

そして、先程の某女性経済学者の指摘の通り、MMT入門と言いながらも現代貨幣理論は、続いて機能的財政論とか、今は責任ある積極財政論といった、戦前から使われている中味の政策に変化しているのだ。
https://youtu.be/0QdKdlyrC1w

MMTを持ち出す人物らは、経済学の父アダム・スミスが着想し、商品の価値尺度である労働時間を価値尺度としての貨幣概念(=労働貨幣論)を、無知無教養の人には分かりやすいと思ったのか、貨幣発生の根拠の無理解の上に生じた、社会にケチをつけたい批判者や、経済学者を粛清したソ連(スターリン計画経済前夜)と同じ乃至は同義語を語っているに過ぎないのだ。

"労働貨幣論"は、ユートピアの象徴でありカール・マルクスによっても批判されたけれど、現在MMTを持ち出す人物らは、経済学の中に"労働貨幣論"が存在したことすら無知のようだ。MMT現代的貨幣理論は、そこで、ことさら「難しいけれど銀行融資や帳簿や簿記はまだ馴染みがある」とでも錯覚したのだろうか、「銀行通帳の数字記載」をマネー貨幣だと強弁、そう錯覚させて、要するに国の借金、個人借金、"借金そのものは数字だ!後で国民が働いて返せば良い(納税の原資は労働)"といった、乱暴な見解に過ぎないのだ。

この、「働いて返せば良い(納税の原資は労働)」が"労働貨幣論"そのものなのである。そして彼らは、返済の話になると、話題を変えて他のことを力説することに徹している。はっきり言って彼らが、どのように"労働貨幣論"ではないと否定しその証明を試みても、そんな主張をすれば単なる無法者でしかないという訳だ。"馴染みがある"として錯覚をするには、20世紀初頭のドイツと周辺で、当時の社会主義者から持ち出された"労働貨幣論"が、もっぱら身近な生活消費用商品と労働時間との関連で論議が語られ、その思考パターンと同列の水準なのだ。"労働貨幣論"が成り立たないことは、その当時に社会学者と称されているゲオルク・ジンメルが、「貨幣の哲学」の中で立証している。(ジンメルは、労働貨幣論批判で社会主義者から今でも攻撃をされているが、ドイツではジンメルが、マルクスの未完であった「資本論第3巻」の理論を整理完成させた経済学だと評価されている)。

最後に、総務部メルマガの過去記事(労働貨幣論を批判)も再掲載する。
§その典型が、緊縮反対論の松尾教授、財政拡大論のMMT論である。(2019/06/04)
総務部メルマガ第206号:威勢のよさと悪口に走る:リーダー
§MMTは、歴史の歯車を逆転させる社会主義経済(2019/09/03)
総務部メルマガ第209号:マスコミの話のすり替えに騙されない、が"労働貨幣論"その真実は
≪ゲオルク・ジンメル:Georg Simmel、1858年-1918年≫
http://soumubu1.blogspot.com/2021/04/blog-post.html#228-13

  

  

<シリーズ>ジェンダーを考える 第1回~第3回

2021年5月17日

 
櫻井龍子 さん
(元 最高裁判所判事・日本労働ペンクラブ会員)

20210517a.jpg
自身で撮った写真をバックに(東京・千代田区の日本カメラ財団理事長室で)

世界経済フォーラムが発表した2021 年の日本のジェンダーギャップ指数は、156か国中120位。政治、行政、司法など各分野の指導的地位に女性が占める割合の低さが目立つ。女性活躍、女性の管理職登用が政策に掲げられても実現への道 筋は見えてこない。その原因は何か、その解決策はあるのか。日本労働ペンクラブ会員で、旧労働省 の 女性局長、女性3人目の最高裁判事を歴任し、働く女性の先輩でもある 櫻井龍子さん が語った。(聞き手:日本労働ペンクラブ幹事・ 保高睦美)

以下下記PDFにて

<シリーズ>ジェンダーを考える 第1回~第3回【PDF版】

  

NPO現代の理論・社会フォーラム経済分析研究会 メールマガジン第244号 (2021年4月15日号)

2021年5月10日

 
労ペン会員・柏木 勉( 経済アナリスト)

【WEB】(http://keizaiken.sakura.ne.jp/ )

日銀は債務超過になるのか

コロナ禍で「膨大な」財政支出が予定され、「財政悪化を憂う」声がまたまた大きくなってきた。本年度一般会計予算の歳出総計106.6兆円は過去最大。公債依存度40.9%、国債発行計画は実に借換債と新発債の合計で236兆円。前年度当初比で82.5兆円もの増加だ。均衡財政論者の声は「仕方がない、今はコロナ対策が第一だ」としぼんでいたが、ここへきてまたまた「将来のつけ」「財政規律の重要性」を声高に叫びはじめた。論点は諸々あるが、今回は日銀の債務超過問題をとりあげる。そこで最初に誤解なきよう云っておくが、以下は左派リベラルが政府・与党の政策に対する代替案を打ち出すにあたり、欠かせない認識の一つを述べるものである。

日銀は支払い不能には陥らない

この問題はポストコロナや量的緩和からの転換にあたって日銀が債務超過になることをどう考えるかということだ。日銀は市場からの大量の国債購入で財政支出を支えてきたが、経済が停滞から回復し物価が上昇していくと、異次元緩和から引き締めに転じて行く(出口に入る)。その場合、銀行の日銀当座預金(以下「当預」)に一定の金利をつけて(付利)政策金利をあげていく。するとそれまでは低金利だったので、日銀は保有国債から得る金利よりも、当預に付利して支払う金利のほうが高くなる。逆ザヤだ。だから日銀の財務が悪化して債務超過に陥る。均衡財政論者は、この債務超過を「大変だ、大変だ、危機になる」と大騒ぎしているのである。

また、市場の金利が低下しても上昇しても日銀の国債購入価格は額面より高いので、償還時に日銀は損失を被り財務悪化、債務超過になるので国債購入は出来なくなるとの主張もある。

しかしこれらの騒ぎや主張は全くおかしい。そもそも日銀は無からカネをつくりだせるから、逆ザヤの金利支払いだろうが損失だろうがその他経費だろうが支払い不能に陥ることはないからだ。

ここで元日銀副総裁の岩田規久男の本(「なぜデフレを放置してはいけないか」)から引用して、債務超過を大騒ぎするある均衡財政論者の蒙昧ぶりを紹介したい。岩田が皮肉まじりに語るエピソードが面白い。長い引用だがご容赦を。(とは云っても、私 は黒田バズーカの理論的支柱だったリフレ派岩田を支持するものではない。異次元緩和は当初目標を達成できなかった) 「・・・私が、世間では金融政策の専門家中の専門家と考えられている、あるマクロ経済学者(その方の名誉を傷つけたくないので匿名にします)と話している時に、日銀の経常損益がマイナスになる可能性が話題になったことがあります。その時、そのマクロ経済学者は「そんなことになったら、日銀は人件費を払えなくなる!」と叫びました。・・・働く人がいなくなるから倒産する、といっているのと同じです。私はこの叫びに驚き、「あなたは本当に金融政策専門の経済学者ですか」と訊きたいところでしたが、ぐっと我慢しました。日銀は人件費にせよ、他の経費にせよ、日銀当座預金にその支払い金額を記帳するだけで、取引を完結することができるのです。・・・日銀の経費支払先が、現金(日銀券)が必要になり、預金を引き出す時には、預金を受け入れた銀行は増えた日銀当座預金を日銀券に換えて、この預金引き出しに応じます。・・・ここで重要な点は、日銀以外の人(法人も含みます)は経費を日銀券で支払う時には、働くなり物を売るなりなどして日銀券を獲得しなければなりませんが、日銀は在庫として持っている日銀券を銀行に渡すだけでよい、ということです。・・・」(P178-179)「・・・つまり日銀は普通の人や法人と違って、支払い不能にならないようにできているのです。・・・」(P.180)つまり財務が悪化しても債務超過になっても支払いを続けられるのである。

円が暴落?馬鹿な!

字数の関係でもう一点だけ。日銀の債務超過で円の信認が失われ、円が暴落するとの主張も大昔から声高に唱えられてきた。国債でいえば外国人が日本国債の12%強を保有しているが売却に走ったら大変だというわけだ。しかしこの場合、国債は自国通貨の円建て債務だ。一方、対外債権の多くはドル等の外貨建てだ。それで、円が下落していくとどうなりますか?

外貨建ての対外債権は円換算で膨らむ。他方、対外債務の国債は円建てだから、そのまま不変だが売却で減っていく。すると対外純債務は縮小し対外純資産が拡大する。となれば膨れた対外資産からの配当や利子、技術料等も拡大し、所得収支の黒字が増加する。結局、円安→対外純資産の改善→対外収支の改善という円高に向けた安定化作用が働くのである。

同時に円安になるから貿易収支も改善し、両者合計の経常黒字は拡大する。従って安定化作用が更に働く。なにしろ日本は世界一の対外純債権国ですよ!

では外国人の国債売りによる価格低下・金利上昇はどうなる?

これは以上の問題の一環だが、国債は満期まで保有すれば必ず額面が償還される。従って国債価格が下落するとその時点で購入すれば、下がった購入価格と額面額の差額が利益になる。だからある時点で買いがはいり価格下落は止まる。暴落することなどありえない。だから金利の上昇も止まる。心配なら日銀が国債を買えばいいだけ。
とどのつまりカネ・財源は問題にならない。制約はカネではなく、実物のモノ、サービスの供給能力である。同時に賢い支出が不可欠だ。

 

  

「コロナ禍」が人類につきつけた「問い」
人びとが共生できる、また「自然」と共生しうる文明への転換

2021年3月08日

 
会員・井上定彦(島根県立大名誉教授)

2021年に入って懸念されていたコロナ禍の第三波が日本と世界を襲っている。昨春の第一波を大きく上回る大波のようである。1月7日と13日にまたがって、11都道府県に再び緊急事態宣言が発令された。いったん昨年夏から秋に多少は鎮静化したようにみえ、また予防ワクチンの開発のメドがたちつつあるということで、愁眉を開きかかったすぐ後のことである。
日本と欧米を含む世界のなかで、例外的に鎮静化に成功したかにみえた中国でも、北京から遠くない石家庄市( 河北省)で、再発が確認され(これまでのCovid-19とは違う変異種のビールスだとの報道も) 、この地区はふたたび「戦時モード」に入ったとも伝えられる。2021年中の世界経済の回復も可能との楽観的見方があったが、早くも冷水をあびせられた恰好である。

以下下記PDFにて

「コロナ禍」が人類につきつけた「問い」【PDF版】

  
   
1  2  3  4  5  6  7

過去記事一覧

PAGE
TOP