私の主張

雇用類似の働き方も保護は必要

2019年11月18日

 
グローバル産業雇用総合研究所所長 小林 良暢(労ペン会員)

厚生労働省の「雇用類似の働き方に関する検討会」は10月30日、雇用類似の働き方をする者を保護するための検討課題を提起した。

「雇用類似の働き方の者」といっても、聞き慣れない言葉だと思う人が多いだろう。この検討会では、「発注者から仕事の委託を受け、主として個人で役務を提供し、その対償として報酬を得る」かたちで働いている人たちことを、こう呼んでいる。具体的には、経営者、個人事業主、自由業、フリーランス、クラウドワーカー、テレワーク、副業などで働いている人たちである。同検討会が調査した結果によると、我が国に約 228万人いるとしている。

だが、クラウドソーシングのプラットフォームの大手であるランサーズの「フリーランス実態調査」(2018)によると、フリーランサーだけでも1,119万人にはいるとしている。調査の目的や手法も異なるので、どちらが実情に近いかはなんともいえないが、フリーランス、クラウドワーカー、テレワーク、副業などについて、筆者が各種の統計を集計したのが、添付の図表「働き方類型別労働者数」である。

この図表は、左から正社員の数、真ん中がパートタイマー・契約社員・派遣労働者などのいわゆる非正規労働者、一番右は検討会が「雇用類似の働き方」と呼ぶ者 (私は「雇用フリー労働者」と呼ぶ)、この3類型で働く人の数を比較したものである。

現在、正社員で働いている人は3400万人、非正規労働者が2100万人いるのに対して、「働き方フリー」も1800万人と、正社員や非正規にも迫る勢いで、労働市場に確固たる位置を占める存在になっている。

クラウドワーカーは倍増する

この図表の右の「働き方フリー労働者」の中に出てくるクラウドワーカーで働いている人は、現在400万人ということになっている。だが、NTT東日本系のクラウドワークスが、クラウドサービスのブラットフォームを運営する大5社の登録者数を基に推計したところによると、2020年代にはクラウドワーカーだけでも1000万人に倍増するとされている。

アメリカでは、クラウドワーカーは既に4000万人に達しており、経済規模からすると、我が国も2000万人にいくのは自然の流れだろう。  
仮に、近い将来、「働き方フリー労働者」が2000万人になるとすると、その増加分の約1500万人が正社員と非正規からそれぞれ700万人とか800万人ずつ「働き方フリー労働者」にシフトすることになる。

ないない尽くしの業委委託慣行が横行

ところが、フリーランスにしろ、クラウドワーカーにしろ、これにの労働者は業務の発注者サイドの一方的な都合で、業務委託を突然切られても文句が言えず、またライターは取材をして原稿を週刊誌などの編集部に持込んでも、ボツにされれば取材費も原稿料も出ないというのが、半ば業界の慣習になっている。事ほど左様に、契約書もなければ、最低報酬の保障もなく、紛争処理の制度もなしと、ないない尽くしの業委委託慣行が横行している。こうした状況の下で働いている人々をどのように保護の網を被せるが、現在の最大の問題である。だが、この点についての考え方が、検討会と私とでは、まったく違うようだ。こうした観点から、今度の検討会の提起を読むと、3つの問題点がある。

  1. 「雇用類似の働き方の者」と「雇用フリー労働者」
    検討会は、フリーランスやクラウドワーカー、テレワーク、副業などについて、「雇用類似の働き方の者」と記し、検討会は労働者という言葉を使うことを避けている。私は働くものは労働者だとし、その働き方は会社フリー・時間フリー・雇用フリーで働いているから、「雇用フリー労働者」と呼ぶことにしている。これは呼び方の問題でなく、以下の点でも考えた方が異なる。
  2. 労働者性
    まず、フリーランスやクラウドワーカー、自営業者などを、どこまで労働者とみなすか否かである。これを労働法学では「労働者性」の有無という。検討会の席上においては、労働者性の判断基準を拡張して、雇用類似の働き手を保護すべきだという意見がでたが、これは見送られた。
  3. 「雇用類似の働き方の者」の保護
    検討会は、「雇用類似の働き方の者」の法的な保護は、「雇用類似の働き方の者」が個々に置かれている状況が異なるので、画一的に定義することは困難だとして、「雇用従属性」を有ししている者と「その類似の者」に限定して検討を進めるとして、その結果、もっとも保護の網が必要な人たちを追いやってしまったのである。

AI革命-ドイツに4年遅れの日本

厚生労働省はこの秋に、「雇用類似の働き方に関する検討会」報告と併行して、労政審政策基本部会報告書を公表した。
ところが、AI政策で先行するドイツは、2013年にプラットフォーム・インダストリー4.0を設置し、また2015年には政労使の合意の上で、グリーン・ペーパー(政府の提案書)を発表している。
日本はやっと今、その途に就いただけで、ドイツのように政労使で審議する場のプラットフォームも出来ておらず、4・5年遅れている。
直ちに、AIの政労使協議のプラットフォームを立ち上げ、AI化と雇用の関する政労使の協議に、早急に取り組むことである。
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連合結成30周年に向けて
労働組合は、最大の納税者組織である 医療行政を変えた「連合の領収書をもらおう運動」③

2019年10月15日

 

4月から働き方改革関連法と改正入管法が施行

昨年の国会で、働き方改革関連法と外国人労働力の受け入れ拡大のための改正入管法が成立し、この4月から順次施行されます。
この働き方改革関連法は、①罰則付き長時間労働の規制、➁同一賃金・同一労働、③高度プロフェッショナル制度の創設、④年休の計画的付与と取得、⑤労働者の健康確保措置および安全配慮義務、などです。 そして何よりも「同一賃金・同一価値労働」と「時間外労働の上限を原則として月4 5 時間かつ年360時間と明示」され(臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満、複数月平均80時間を限度)、この上限規制に抵触した場合の罰則規定が法律に明記されました。
また改正入管法による、外国人材の就労受け入れの拡大も、労働の現場ばかりでなく日本社会を大きな変貌を余儀なくされる転換期の到来を予感させます

政府は昨年2018(平成30)年12月25日に、外国人労働者の就労を大幅に拡大する新制度を巡り、運用全般にわたる基本方針と、受け入れ見込みの人数など業種ごとの分野別運用方針を閣議決定しました。 政府の基本方針では、新たな在留資格の「特定技能」により来日する外国人が大都市に集中しないように必要な措置を講じるよう努めるとしています。また基本方針に基づく運用方針では制度開始から5年で最大で34万5千人を受け入れるとしました。

特定技能は一定の技能を必要とする業務に就く「特定技能1号」と、熟練した技能を要する業務に携わる「特定技能2号」があり、2019(平成31)年4月の新制度導入の当初は、介護や農業など14業種への受け入れは「特定技能1号」が中心となります。
また従来の技能実習生については、技能実習2号の取得者(期間にして3年程度)が、そのまま「特定技能1号」の資格を得ることから、新制度導入当初の「特定技能1号」の大半を占めるとみられます。 基本方針によると、日常会話と業務に必要な日本語能力を条件としています。在留期間は最長5年で、同一業種や業務内容が似ていれば転職を認めるとしています。ただ家族を伴うことはできません。
さらに同日、関係閣僚会議で決定した「外国人との共生に向けた総合的対応策」は126項目あり、生活や雇用、社会保障、日本語教育などの支援策など多岐にわたりますが、人員や予算の手当てはこれから、というものが多くあります。

日本人の労働者が足りないから外国人を受け入れるハズであったのが、その外国人労働者が永住し高齢者となれば「外国人高齢者の医療と介護に日本人が従事する」といった笑えないことが起こります。 妻や子供、家族の帯同も同様です。外国人労働者の子供に日本語を教えるために、小中学校にも外国語を教えられる教員を雇う必要が出てきます。 外国人を雇うことで企業が利益を得る一方で、その子弟が通う小中学校の多額の経費を、税金で負担するとすれば、日本全体としては外国人を受け入れることが損になります。
問題は、外国人労働者を受け入れてメリットを受ける企業がコストを負担するのではなく、一般の納税者がそうした費用を負担する、ということです。

政府は、大都市圏などに外国人材が集中しないような措置を講じるとともに、日本語の習得支援も強化し、関係省庁が連携して適切な在留管理を進めるとしていますが、大都市集中を防ぐ仕組みは示されていません。
外国人技能実習生の失踪に関しては、「失踪の多くは地方の実習生であり、賃金の高い都市部での仕事を探すため」とも指摘されています。
外国人技能実習制度で2012(平成24)~2018(平成30)年上半期に失踪した実習生は計3万2647人。長時間労働や低賃金などの問題もあると言われます。
最低賃金は、都道府県で異なることから、働く外国人は賃金の高い都市部に流れることが予想されます。 地方と大都市圏で最低賃金額の差が大きければ、外国人労働者が都市部に集中し、より良い条件を求めて転職することになります。
転居や転職が難しく最低賃金の低い地方に生活の基盤がある日本人の場合と違って、外国人労働者は賃金の高い都市部で働き、出身国に仕送りをするわけです。 全国の最低賃金を東京の水準に引き上げ最低賃金を一律にすれば、外国人労働者の都市部集中を防ぐ対策になります。
これは日本人の労働者においても同様です。それには地方経済の仕組みを、東京と同額以上の賃金が支払える体質に改善していく取組みが重要となります。そしてその取り組みは、地方からの人口流出に歯止めをかけることにもつながります。

人口減少・高齢社会の到来と、労働の将来

いま日本は「人口減少・超少子高齢化社会」に進んでいます。人余りの時代は終わり、人手不足は構造的で慢性的なものです。
これを低廉な労働力を求めることで切り抜けようとすると、企業は自ら改善の努力をせず、外国人労働者依存体質になってしまいます。
いま現在進行形でAI( 人工知能) 、ビッグデーター、IoT(モノのインターネット)の活用が進んでいます。たとえば運輸ロジスティックに代表されるように、会社間取引、消費者同士の取引、会社と消費者との取引にも、情報とモノのやり取りがセットになっているものが多くみられます。

少子高齢化で働き手世代は大きく減っていく中で、経済を伸ばしていくには、人々の能力を高め、成長を図っていかなければなりません。
とくに地域のサービス産業は、人手不足が深刻です。これを解消し地方創生をすすめるには、労働生産性を高め賃金を引き上げていくことが重要となってきます。
地方で人手不足であえぐ産業で働く方が、豊かな生活ができれば、若者が地方にとどまり、安定した雇用と生活を手にすることができれば、少子化や人口減少にも歯止めをかけられます。
デフレマインドを脱却して生産性を上げる必要に晒されています。
政労使を問わず、人口減少と労働力不足への対応が課題となっている中で、生産性の向上に結びつく「働き方・休み方改革」と健康経営(2月号参照) に取り組まなくてはなりません。

「月刊連合」(2017年11月号) に、「人口減少化における地方創生」について、㈱経営共創基盤CIOの冨山和彦代表の話が掲載されていました。 本連載を締めくくるにあたり、その内容は多くの示唆に富んでいることから、そのポイントを紹介します。
(1)日本は「人口減少・超少子高齢化社会」に進んでいる。
(2) わずか10年で経営悪化の要因が変わってきた。たとえば地方交通の経営悪化させていたのは、運転手が不足し路線が維持できないという「人手不足」 がある。 運転手を供給する生産年齢世代の人口比率は下がり、需要に供給が追い付かない状況が起きてきた。
(3) 最近の長時間労働の背景にも人手不足がある。生産性の向上がないまま人手不足が続くと、一人当たりの労働時間を延ばすしかない。 問題となっていたブラック企業は、長時間・低賃金労働で人件費を圧縮し安売りで競争した。 (4)人余りの時代は終わり、人手不足それも構造的で慢性的なもので、とくに深刻なのが地域のサービス産業である。この人手不足を解消し地方創生をすすめるには、労働生産性を高め賃金を引き上げていくことが重要となってくる。 (5)人手不足の時代に労働生産性が低いということは致命的である。 かつて人手不足の時代、労使が協力して生産性を高め賃金を上げていくという「生産性三原則」(2月号参照 に合意した。
(6)生産性の向上が所得増をもたらし、消費の拡大をもたらし投資を呼ぶ。その循環が経済成長である。この重要性を再確認し、労使で生産性向上に取り組み、積極的に賃上げを進めるべきである。 生産性が低い要因は、経営力の低さである。
(7) 生産性が低く低賃金・不安定雇用で成長をけん引する力が弱い産業とは、飲食、宿泊、対面小売り、卸売、交通、社会福祉サービス、地域金融、不動産、建設、農業など第一次産業などである。
(8)地方で人手不足であえぐ産業で働く方が、豊かな生活ができる。

東京都が日本で出生率が最も低い。東京はブラックホールのように地方の人口を食いつぶして繁栄を維持している。 若者が地方にとどまり、安定した雇用と生活を手にすることができれば、少子化や人口減少にも歯止めをかけられる。

  

連合結成30周年に向けて
労働組合は、最大の納税者組織である 医療行政を変えた「連合の領収書をもらおう運動」②

2019年10月07日

 

地域別最低賃金額の改定にも、 連合の春季生活闘争の結果が反映

最低賃金とは、全ての働く人に適用される賃金の下限額のことで、1959( 昭和34 ) 年に当時の岸信介政権が導入したものです。毎年度、中央最低賃金審議会が引き上げの目安額をまとめ、その後各都道府県の地方審議会が地域の実情に応じて改定額を示します。

最低賃金を下回る金額しか支払わなかった企業には罰則が課せられます。
安倍首相は2015( 平成2 7 ) 年に、将来的に全国平均1000円程度に引き上げることを表明しました。
地域別最低賃金額改定について、政労使からなる中央最低賃金審議会は、春の賃金改定をもとに「地域別最低賃金の引き上げ目安」について、毎年7月末に厚生労働大臣に答申します。
連合の春季生活闘争の結果は、地域別最低賃金にも影響します。
最低賃金は、正社員だけでなく非正規社員や外国人労働者にも適用され、地域別最低賃金額は都道府県ごとに賃金水準などを勘案して決定されます。
地域別最低賃金を決定するにあたっては、①地域における労働者の生計費、②地域における労働者の賃金、③事業を営むにあたる賃金支払能力、の三点を考慮しなくてはなりません。

2008(平成20)年7月より施行された改正最低賃金法では、労働者が健康で文化的な最低限度の生活が営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性を考慮することとなり、地域別最低賃金は生活保護の水準を上回ることが明確に規定されました。
2014(平成26)年は 、 全国平均の目安となる時給は 円上がって780円となり、最低賃金で働く人の手取り収入が生活保護の受給額を下回るという「逆転現象」は、それまで存在した5つの都道県すべてで解消されました。
2018平成30 ) 年の最低賃金の全国平均は、時給で前年度比 円増の874円です。 地域別では、最高が東京都の985円(前年度比 円増)に対し、最低は鹿児島県の761円(同24 円増)で224円もの差があります。

この最低賃金の地域間格差は拡大傾向にあり、東京一極集中を助長していると指摘されています。

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地域別最低賃金と特定最低賃金

例年、中央最低賃金審議会での議論経過と目安水準をもとに、地方最低賃金審議会でも、地域別最低賃金額決定の審議が行われます。
なお最低賃金には、地域別最低賃金のほかに特定(産業別)最低賃金があります。
「地域別最低賃金」は、パートやアルバイト、外国人労働者を含め、すべての「労働者」に適用されます。
地域別最低賃金は全国すべての都道府県で設定されなければなりません。 地域別最低賃金額を下回る賃金を支払った場合の罰金は、上限50 万円です。
最低賃金額は時間額で示されます。最低賃金の対象となる賃金は、通常の労働時間に対応する賃金です。

もう一つの「特定(産業別)最低賃金」は、2007( 平成19) 年の最低賃金法改正(2008年7月施行)により規定されたもので、特定の事業もしくは職業ごとに設定されます。
当該産業の関係労使が、地域別最低賃金より金額水準の高い最低賃金を必要と認めた場合に設定されます。 これは特定の産業または職業について、地域別最低賃金よりも金額水準の高い最低賃金を定めることが必要と認めた場合に、関係労使の申出があったときに最低賃金審議会の審議を経て決定されます。
ちなみに2007(平成19)年度以降、産業別最低賃金の上げ幅が地域別最低賃金より大きくなっています。

この地域別最低賃金、特定最低賃金とも、中央最低賃金審議会において公益委員・労働者側委員・使用者側委員による審議を経て決定されます。 連合は、この中央最低賃金審議会に労働者側代表として委員を送っており、最低賃金でも生活が可能な水準となるよう、毎年の金額引き上げに力を注いでいます。

最低賃金は、あくまでも非正規が対象の目安

「経済の好循環」を実現するには個人消費の活性化が不可欠であり、最低賃金の大幅増額はそれに必要な所得増につながるものです。
地方の中小・零細企業は、厳しい経営環境に置かれている現実もある一方で、大都市部では外食産業などを中心に人手不足が深刻化し、すでに賃金水準が最低賃金を上回っているという実態もあります。
そもそも最低賃金は、賃金の最低額を法的に保障する制度ですが、その水準は多忙期の一時的な応援とか、家計の補助的なアルバイトなど非正規の水準です。

現状における地域別最低賃金というのは、主に生計を営む熟練労働者(世帯主など)を対象としたものではありません。
家計の補助的な水準を示す現行の地域別最低賃金の水準とは別個に、実態にあった「主に生計を営む労働者の最低賃金」の水準が、現在の最低賃金制度では提示されていないのです。
そこで連合は、労働者が最低限の生活を営むのに必要な賃金水準を独自に算出しようと模索し、2013(平成25)年に「連合リビングウェイジ( 月額表示) 」 ( 上表参照) を設定し、毎年改定しています。
このように「主に生計を営む労働者を対象とした地域別最低賃金」の方が、本来の最低賃金の趣旨に即していると言えましょう。

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連合結成30周年に向けて
労働組合は、最大の納税者組織である 医療行政を変えた「連合の領収書をもらおう運動」①

2019年9月24日

 
torii.jpg労働ジャーナリスト・鳥居 徹夫会員

略 歴

1973年(昭和48年)茨城大卒。造船重機労連入職。教育広報部長等を担当、 造船重機労連と鉄鋼労連統一を機に、国会議員政策秘書となり、文科大臣秘書官 などを歴任。

労働運動の話(「労政フォーラム」2019年3月号から)

連合は「ACTION!36」を推進

連合は、「長時間労働を是正し、過労死を日本から根絶させる」ことを目指して、「ACTION!36」キャンペーンを展開し、3月6日を「サブロク (36)の日」として三六協定の浸透と締結促進に向けた運動を展開しています。

連合は、3月6日を「サブロクの日」として一般社団法人日本記念日協会に登録申請していましたが正式 に認定され、日本記念日協会から登録証が授与されています。

三六協定とは、正式名称を「時間外・休日労働に関する協定届」と言います。労働基準法第36条が根拠になっていることから、三六協定と呼ばれています。労働基準法第36条では「労働時間を延長、または休日出勤をさせるときは会社と従業員で協定を結んでそれを届けなければならない」と規定されています。

労働時間は本来1日8時間、1週40時間までと労働基準法で決められています。

それを超えて働かせると罰則規定があり、使用者が罰せられます。

その三六協定を締結せずに残業をさせた場合や休日労働をさせた場合、労働基準法違反となり、使用者に六か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。

厚生労働省 (平成25年度労働時間等総合実態調査)によると、三六協定を締結していない事業所は全体で44・8%もあり、特に中小企業の半数以上が三六協定を締結していないことがわかりました。

三六協定を締結していない理由として、「三六協定の存在を知らなかった」という使用者は35・2%と、三六協定の認知度の低さを示す結果が出ています。

三六協定を締結していない理由として、①時間外・休日労働について就業規則等で規定を設けるのみで十分と思っていた、②事業場ごとに締結が必要とは知らなかった、③過去締結した三六協定が現在も有効だと思っていた、④三六協定の締結・届出を失念した、⑤その他三六協定の存在を知らなかった、などとなっています。

ちなみに「三六協定」は、正社員はもとより、アルバイトもパートも外国人を問わず、全従業員に適用されます。

どのような雇用形態であったとしても、1日8時間1週40時間を超えて働かせる場合は必ず三六協定の締結と届け出が必要です。

使用者には、法律を守り、働きやすい環境をつくることが求められています。また働く側も、ワークルールの基本的な知識がなければ、自分の身を守ることができません。使用者、労働者の双方がワークルールを正しく理解し、適正に三六協定を締結することが大切です。

ここで重要となるのが、労使による三六協定の締結と運用です。

過半数の労働組合がないところでは、従業員過半数代表制度が機能しなくてはなりません。

従業員代表者の選出は、①代表者が管理監督者でないこと、②選出目的を明示すること、③民主的な手続き、の3要件を満たさなくてはなりません(労働基準法施行令第6条 が、現状は形骸化しているとの指摘も強くあります。

JIL 労働政策研究・研修機構) の調査によると、三六協定の締結における労働者側の当事者は、従業員過半数代表が6割弱で、その従業員過半数代表の2割は何と管理職であったといいます。

過半数労働組合の要件を満たしていない場合や、過半数代表者の選出が適切に行われていない場合は、三六協定を締結し労働基準監督署に届け出ても無効となります。

法律が整備されても、それが各職場で活かされなければ意味がありません。

労働組合の有無にかかわらず、すべての職場において、より良い働き方の実現をめざし、三六協定の適切な締結をはじめとする職場での取り組み を、労使で徹底していくことが重要です。

連合が「ACTION!36」運動を展開するのは、三六協定が適切ではない方法で結ばれていることも少なくないからです。

三六協定は、労働者を長時間労働から守る大切なものです。連合は、働く者の権利を守るために、今後も、三六協定の適切な締結などの取り組みを進めるとしています。

医療情報の開示で、供給者サイドの行政を転換

連合は「お医者さんにかかったら領収書をもらおう」運動を展開してきました。 この地道な運動は、医療の在り方を大きく変える、利用者による納税者運動でした。 国民医療費は、高齢者の増加もあり40兆円に達し、国・地方の財政負担も年々増え続けました。

その一方で、悪質な病院や診療所による医療費の不正請求は後を手立たず、1995(平成7) 年度の医療機関による過剰請求(不正請求)が3222億円に上ったことが明らかになりました。

医療費の不正請求とは、「自分はその月にお医者さんに行っていないのに、行ったことになっていた(架空請求)」とか、「実際は1回の検査だったのに、数回に分けて検査した(水増し請求)」かのように診療報酬を請求することです。

1997( 平成9) 年9月に患者の自己負担割合が1割から2割に上がりました。 患者の自己負担比率の引上げ、そして医療費不正請求をきっかけに連合が始めたのが、お医者さん(医療機関)にかかったら、その都度確実に領収書をもらうという運動です。

連合はまず、組合員一人一人ができることとして、お医者さんにかかったときには必ず領収書をもらう、そしてその領収書と医療費通知を照らし合わせようと、組合員に呼び掛けました。

かつては医療機関から領収書すらもらえなかったのです。運動を始めた当時は病院の窓口では、露骨に嫌な顔をされ、不愉快な思いをする人も多かったのです。 たとえば確定申告の医療費控除では、領収書の提出が必要とされるのに、「何に使うのですか」とか「500円かかります」と言われたりしたのです。診療報酬を決める中医協(中央社会保険医療協議会)の場でも、連合選出の委員は「領収書発行を義務化すべし」という発言を何度も繰り返し、徐々に領収書の無料や明細書発行が広がりました。そして2006(平成18) 年からは領収書の発行が義務化され、2010(平成22) 年の診療報酬改定で、診療明細書の無料発行が原則義務化されました。

この時点では、患者の申し出があった場合でした。 2018(平成30) 年には全病院・診療所で、診療明細書の発行が完全義務化となりました。 受診した診察の中身を知ることと、医療内容とその単価がみあうのか、などを利用者が直接知ることになります。価格を通じてサービスの質を知り、病院が間違って請求していたとしてもチェックできるようになったのです。

これまでの医療行政は、医師会などの利権圧力団体と族議員、そして所管の厚生省(現・厚生労働省)という「鉄の三角形」によって進められてきました。 医療行政は、供給サイドによるものであり、利用者無視でしたが、最大の納税者団体としての労働組合のパワーが、閉鎖的で不透明で硬直的な医療行政を変革させるパワーとなったのです。

  

創刊号から200号まで数字で見る40年

2019年7月01日

 
元労働省労働経済課長
奥田 久美

分配構造は極端な株主主権経済に変貌、97年レベルを超えない賃金 ―令和では労働者復権なるか、株主主権のままか。

創刊号の1981年3月から、200号の2019年5月までの38年余で、労働に関わる変化を数字で見てらどうなるか。元労働省労働経済課長を務めた奥田久美会員に分析してもらった結果、この間、労働者の窮乏は深刻化し、富裕層はさらに富裕になる社会構造が浮き彫りになった。

有効求人倍率が高水準の意味

2018年度の有効求人倍率は1.62倍。40年前の1979年頃は、列島改造景気で1973年度平均で1.73倍を記録したのち、1973年秋の第一次石油ショックの影響で急落し、75年初に0.5倍近くで下げ止った後、長らく0.6~0.7倍台で推移していた時期である。その後何度か上げ下げがあり、リーマンショック後の2009年3月の0.42倍からその後は9年連続して上昇を続け、2013年後半に1倍を超えて今日に至っている。  しかし、この数字は日本経済が好調なことの表れだろうか。最近の人手不足の背後には、生産年齢人口が、1995年の8726万人をピークに直近の7546万人まで(ピーク比で実に1180万人減)、23年連続して毎年50万人のペースで減少しているという現実がある。有効求人倍率が1倍を超えてすでに4年を超えたが、0度を超えると氷が水になるように、そろそろ労働の世界にも大きな変化が起こっていいころだと思うのだが

1997年をピークに下がり始めた賃金

日本の名目GDPは、2016年に537兆円を記録するまで1997年の534兆円が20年間にわたって最大だった。一方、賃金も1997年をピークに減少し、20年以上経過した現在も、その水準を超えていない。名目雇用者報酬は、1997年の278兆円が2016年でも268兆円にとどまり、一人当たり賃金(国税庁の民間給与実態調査)は1997年の467万円をピークに2009年には406万円まで下がり、その後若干増加して2017年は432万円になっているが、ピークに比べて35万円、7.5%も減少している。

際立つ営業利益と配当の増加

金属労協の2019年の春闘資料で興味深い統計表を見つけた。「付加価値の変化」(全産業、除く金融保険業)の表である。1997年度と2017年度を比較すると、1997年度の付加価値総額は275.7兆円、人件費が203.9兆円、営業利益が16.1兆円、配当が4.2兆円、これに対して2017年度をみると、付加価値は311.7兆円へと36兆円、13.1%増加しているが、人件費はわずかに2.6兆円1.3%増の206.5兆円に対して、営業利益は3.8倍の61.2兆円に、配当は5.5倍の23.3兆円に激増している。

平成の時代に起こった日本経済上の最大の出来事は、昭和の時代のスタンダードだったステイクホルダー間のバランスの取れた分配構造が、この30年間に極端な株主主権経済に変貌したことである。令和の御代が、氷が水になるように状況が劇的に転換して、労働力需給バランスが不足状態に転じたことを反映して「労働」の復権する時代になるのか、それとも、自然の摂理に反して、あり余った金がこのまま社会を支配し続けるのか、注目したい。

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