労ペン賞

第29回(2018年度)

2018年11月30日

 
本田 一成氏(会員名・渋谷 龍一)

「オルグ!オルグ!オルグ!―労働組合はいかにつくられたか」

(選考経過と講評)選考委員長 小林 良暢

2018年度の労働ペンクラブ賞には、会員から二作品が推薦された、しかし、うち一作品は今年度の選考対象期間(2017.9~18. 8)の以降に発行されたものであったため、次年度扱いになり、本田一成「『オルグ! オルグ! オルグ! 』―労働組合はいかにつくられたか」(新評論社)を、本年度の選考対象とした。

本書は、UAゼンセンが繊維産業の衰退による組織的危機の中から、いまや組織人員178万人を擁する我が国最大の産別組織に至る過程を、UAゼンセン流通部会において,組織拡大にむけて日々健闘してきた「オルグ」の人たちへのインタビューで得た足跡を基に構成した労作で、且つ労働運動史の上でも貴重な遺産である。

本書の内容は、前半と後半の二つに分かれる。第1章から第5章までの前半は、後にゼンセンとの統一につながっていく、商業労連やチェーン労協組合の組織化を取り上げる。流通革命に揺れる業界とそれぞれの産別組合が組織化の戦線に、衰退局面に差しかかった全繊同盟のオルグ達が殴り込みをかけたことで勃発する「抗争」を描き出す。このあたり、当時電機労連本部に在籍して、成長途上の家電量販店の組織化を巡って全繊と覇を競い、「電機労連は家電メーカーの手先だ」と汚い手で痛めつけられた私としては、読んでいくにつれて商業やチェーン労協に力が入ってしまう。こういう読み方をする人は、労働界には多いのではないか。

後半は、繊維業界に見切りをつけたオルグたちが、業種を問わない複合産別を目指して、中小企業の組織化を進めていった姿が描かれ、当時から「全繊は、パチンコ屋まで組織化した」という話が労働界に鳴り響く。そして流通革命の雄、総合スーパー・コンビニ・外食など業界に「進撃」していく過程は、著者が最も力を入れているところである。

本書が、連合結成30年を迎える直前に上梓された意義は大である。1989年、連合は組織人員800万連合を以て発足し、将来は1000万連合を豪語した。だが、今は700万人まで落ちてしまっている。今こそ連合は組織化の再進撃にむけて、この書が実践的なロールモデルにならんことを称え、その期待を込めて労ペン賞に推挙した次第である。

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